ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 気になる!くまもと > 特集 > 令和4年2月17日配信分 > 「気になる!くまもと」Vol.1007

本文

「気になる!くまもと」Vol.1007

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0125992 更新日:2022年2月17日更新

楽しく出会いを生み出す
新しい動物愛護のかたち

ジョートフルの集合写真

譲渡猫の写真

愛くるしい動物たちの仕草や表情は、私たちに癒やしをもたらしてくれる一方で、熊本県内の動物愛護センターや保健所、民間の動物保護団体には、現在も多数の犬や猫が保護されている。熊本市は、全国に先駆け2003年から殺処分ゼロを目指し、飼い主との話し合いや「譲渡マニュアル」の作成などの活動を積極的に行ってきた。熊本県も2016年に、「熊本復旧・復興4カ年戦略」の中で、“犬猫殺処分ゼロを目指す”ことを掲げている。
このように動物愛護活動を推進するなかでも、熊本地震以降、迷い犬猫が増え、どの施設もキャパシティー以上の動物たちで溢れかえっているのが実情だ。そんな現実を少しでも幸せな方向に導いていきたい、と立ち上がったのが有志の団体「ジョートフル熊本」。代表の旭爪利砂(ひのつめりさ)さんに動物保護の“今”を一緒に考えてもらった。

保護施設で保護できない!
施設にあふれる保護動物

「当時会社員をしていた私が動物愛護活動を始めたのは、近所の野良猫を見た友人が、ふと“冬はこの子たちどうなっちゃうんだろうね”と言った何気ないひと言からでした」と自らの動物愛護活動に目を向けたきっかけを語ってくれたのは、「ジョートフル熊本」の発起人の一人であり、代表者の旭爪利砂さん。関東を拠点に2010年頃から動物福祉の普及啓発や動物保護団体への支援活動、定期的な譲渡会の主催・運営などを行っている。

インタビューの様子の写真
「動物を保護したらどうすればいいのか。動物愛護センターってどこにあるのか。あの時初めて動物を“保護”することについて考え始めたんです」と旭爪さん(取材はオンラインで実施)。

 譲渡会の様子の写真

実際に行動してみると、動物保護団体の多くがボランティアや寄付で賄われていること、狂犬病予防法という法律により犬については行政は保護の義務があるけれども、猫はそうではないため、行政が保護しても収容施設のキャパシティを超えてしまったら殺処分の可能性があるのでなかなか保護依頼を受け付けられないこと、不妊去勢手術は有志の方が自ら保護して自費で病院に連れて行き、一代限りの命をまっとうさせるよう努力していることなどがわかった。「私自身はずっと猫がいる環境で育ってきたにも関わらず、何も知らなかった。その事実に愕然としました」。

できることを、今始める。
覚悟を決めた東日本大震災

旭爪さんが動物愛護活動を始めたのはこの頃から。自らの手元に保護した猫の頭数は7匹になった。徐々に譲渡活動をスタートしようとしていた矢先、東日本大震災が発生。旭爪さんの住む関東の日常も大いに揺らいだ。そこで人や動物の死を身近に感じる経験をしたことで「自分にできることを、やりたい方法で、今やるしかない」と決心したのが2011年のこと。会社員をしながら2足の草鞋(わらじ)で動物愛護活動を続けながら、2014年に独立。「実際の保護団体さんの活動は、保護に始まり、動物病院への受診や食餌の提供、必要に応じた躾(しつけ)やトレーニング、譲渡や譲渡後の家族へのフォローなど、目の回るような忙しさ。そのすべては寄付だけでは賄えず、有志が自費で行っています。そんな現状を少しでも緩和したい、といろいろな活動に関わってきました」。

譲渡会での猫たちの写真
譲渡会での猫たち。譲渡すれば関係性は終わり、ではない。動物のお世話をしてきた保護団体は、その動物の一番の理解者であり、譲渡後も相談相手になってくれる頼もしい存在。だから「動物初心者こそ、保護動物を選択肢の一つにしてほしい」と旭爪さん。


熊本で活動を始めたのは、2016年から。きっかけは、熊本地震だ。「発災当時は関東でも過熱していた報道も次第に薄くなっていたため、てっきり復旧が進んでいるのだろうな、と解釈していました。しかし、被災地のペットたちの状況を把握するために、熊本視察に訪れたとき、飛行機の上から見た熊本の街は、一面の青。ブルーシートだらけで復旧は進んでいませんでした。愛護センターも保護動物であふれかえっていて、その実態を知らずに過ごしていたこと自体がショックでした。そこで保護団体でもない上に遠い関東に住んでいる自分たちに何かできることはないかと考えた結果、“譲渡促進”のお手伝いをしようと思い立ちました。数ヶ月間の準備を経て2017年から月に1回、車にケージやドッグフェンスなど必要な道具を積み、関東から熊本へ通うようになりました」。今では、旭爪さんたちの活動に賛同する熊本県在住のボランティアメンバーが増え、その活動の輪は広がりを見せている。
サクラマチクマモトでの譲渡会の写真
コロナ禍で思うように開催ができないことが多いものの、2021年にはクラウドファンディングを経て九州最大級の譲渡会を「サクラマチクマモト」で実現。多くの集客と成果があったという。

「ジョートフル熊本」の譲渡会はまるでフェス会場!
楽しみながら考える場を作る

性別も職業も性格もさまざまなメンバーが在籍する「ジョートフル熊本」。活動方針は、“楽しむこと”と“誰でも歓迎”なこと。譲渡会ではキッチンカーやワークショップ、ステージでのトークショーやパフォーマンス、動物クイズなど、誰でも楽しみながら考えるための仕掛けが満載だ。「言葉は悪いですが、最初は“冷やかし”でも構いません。賃貸住まいなどで動物を迎えられなくても、動物が苦手でも、興味がなくてもいいんです。保護動物や保護団体さんたちの存在をちらっとでも思い出してもらえたら嬉しいです。そんな方がいつか動物を迎える時に、保護動物という選択肢が入れば大成功だから。そもそも“動物保護”や“動物愛護”というと敷居が高そうに思われがちだし、保護動物は可哀想でみすぼらしいものと誤解している人もいますが、私たちは動物について一緒に楽しみながら考える場づくりをしている、動物たちと保護団体さんたちの魅力と個性を感じてもらう、という感覚で活動を続けています。譲渡会に足を運んだり、オンライン譲渡会をみてもらって、なんとなくの偏見を取り払うことができれば嬉しいですね」。

譲渡犬の写真

ひとつの命への責任感と楽しみを両立する動物愛護活動が旭爪さんの理想とするスタイル。ともすると重く捉えられがちな世界だからこそ大切なことだという。


「2017年に活動をスタートした「ジョートフル熊本」は、おかげさまで楽しい企画が盛りだくさんの譲渡会が続けられていますし、全国でも珍しい複数団体や官民合同の譲渡会を開催してきたことで、保護団体・出店者・ボランティアなど、横のつながりや異なる業界のつながりも生まれていると感じています。互いに情報共有ができたり、やり方を学び合ったり、団体の垣根を越えた連携が取れるといういい循環ができている熊本の保護団体の皆さんは素晴らしいです。保護団体の方々にとって譲渡会に参加するのは大変で負担だと思いますが、すこしでも楽しんでくれたらいいなと思います」。
命や家族について考える時、そこに正解はない。家族にはさまざまな形があって、それぞれのライフスタイルに合った動物がいて人間がいる。そんな家族の幸せの声を原動力にする「ジョートフル熊本」の活動。その活動の輪が広がり、また新たな家族の出会いが生まれることを願っている。

サクラマチクマモト譲渡会の様子の写真


【Data】
ジョートフル熊本

HP             https://www.jyoutofull.org/<外部リンク>
Instagram  @jyoutofull_kumamoto
Facebook  https://www.facebook.com/jyoutofull/
Twitter   https://twitter.com/jyoutofull<外部リンク>
Youtube  https://www.youtube.com/channel/UC72U3Yv_wkfV1onpY3cM4Cw<外部リンク>

<外部リンク>