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エバーフィールド木材加工場
エバーフィールド木材加工場
EVER FIELD wood working plant
エバーフィールド木材加工場は、建設会社の木材加工場として計画された。
熊本県産の小国杉を使い、小中断面で材長4m以下の製材が互いにもたれかかるように支え合う「木造レシプロカル構造」により、これまでに見たことのない、新しい木造空間が実現できた。この美しい空間の実現にあたっては、建築家と構造家の提案力、プレカット施工者との間で作成した3次元の施工図を基に、施工を行った大工の高い技術力が集結された。自然災害からの住まいの再建の原動力となる木造建築産業のさらなる活性化のため、また、大工の育成や技術力の向上を図るためのスペースとしても計画されており、さらに、地域の災害時の一時的な避難所としての活用も期待されている。
建築概要
小中断面の県産流通材のみにより構成された木造大架構建築である。
施主であり、施工者である建設会社の木材加工場として計画された。
ここでは、小中断面で材長4m以下の製材が互いにもたれかかるように支えあう〈木造レシプロカル構造〉により、無柱大空間が成立している。この建築における〈木造レシプロカル構造〉とは、主に4寸角(120mm角)とその半割の部材からなる3角形のユニットを単位として、これらが互いに〈支えるー支えられる〉という関係を繰り返すことで、建物全体が構造的に安定する仕組みである。
一般に、〈木造レシプロカル構造〉は屋根架構に限定して用いられることが多いが、この建築では屋根、壁を含むすべての構造的部位が同システムで構成されている点に特徴がある。ドーム状の大屋根と壁をスムーズ接合しつつ敷地境界を越えないように平面形状を雁行させる、間口の小さい敷地に大型車がアプローチしやすいように平面を隅切りして搬入口を設けるなど、意匠と構造が連動し全体を滑らかに構成する上で、柔軟性に富むこのシステムが有効に機能している。
木は「生物材料」と呼ばれることがある。生き物のように気候に応じて水分を増減させ痩せたり太ったりする、曲げやすくしなりに強い、フィトンチッドの効果により人々をリラックスさせ、CO2を吸着して地球環境の保全に貢献する、等々。含水率や強度のバラツキ、ヒビの有無、木目や色味の偏りといった一見デメリットと思われる性質も、材料それぞれの個性として捉え、適材適所に用いて活かすことができる。こうした木の性質に根差した、あたかも呼吸するかのような建築がここに実現している。
建築データ
名称 エバーフィールド木材加工場
所在地 上益城郡甲佐町大字府領892
主要用途 工場(木材加工場)
事業主体 株式会社エバーフィールド
設計者 小川次郎+小林靖+池田聖太
施工者
建築・機械 株式会社エバーフィールド
電気 株式会社TM・エージェント
敷地面積 1,595.41平方メートル
建築面積 859.17平方メートル
延べ面積 638.98平方メートル
階数 地上1階
構造 木造
外部仕上
屋根 ガルバリウム鋼板縦はぜ葺き
外壁 ささら子下見板張りの上自然保護塗料塗布
施工期間 2021年12月~2023年10月
総工事費 300百万円
建築家プロフィール
小川 次郎(おがわ じろう)
1966年 東京都生まれ
1990年 東京工業大学工学部建築学科卒業
1996年 東京工業大学大学院理工学研究科
博士後期課程満期退学
2004年 アトリエ・シムサ一級建築士事務所設立
2009年 日本工業大学工学部建築学科教授
小林 靖(こばやし やすし)
1980年 三重県生まれ
2003年 日本工業大学工学部建築学科卒業
2005年 日本工業大学大学院修士課程修了
2007年 コンテンポラリーズ
2013年 aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所
2020年 kittan studio 設立
池田 聖太(いけだ しょうた)
1981年 栃木県生まれ
2005年 日本工業大学工学部建築学科卒業
2007年 日本工業大学大学院修士課程修了
2007年 TNA
2014年 3916設立
主な作品 (小川次郎)
モミガラ・パーク、MUDMEN、HDY
主な受賞 (小川次郎)
2003年 代官山インスタレーション最優秀賞(EPSP)
2010年 日本建築学会作品選奨( 日本工業大学百年記念館/ライブラリー&コミュニケーションセンター)
2017年 木材活用コンクール優秀賞・林野庁長官賞(熊本県総合防災航空センター)
エバーフィールド木材加工場完成見学会を開催!(令和5年10月31日)
令和5年10月31日、エバーフィールド完成見学会を開催しました。
見学会の詳細はこちら
「エバーフィールド木材加工場施工現場見学会(第2回)」(2023年2月28日)
アートポリスプロジェクトである「エバーフィールド木材加工場」は、設計者「小川次郎+小林靖+池田聖太」により、これまでに見たこともないような新しい木造空間の提案を実現するため、上益城郡甲佐町で工事が進められています。
エバーフィールド木材加工場は、大規模災害からの復旧・復興において、住まいの再建の原動力となる木造建築産業のさらなる活性化に努めるため、近年減少傾向が顕著になっている大工の育成、技術力の向上を進めていくことを目的としており、同時に地場産業の活性化による地方創生のきっかけとなる施設を目指しています。
また、県産流通木材(小中断面製材)を活用し、集成材を使用していない「レシプロカル構造(相持ち構造)」により、20m×30mの大空間を実現しています。
中大規模木造建築の現場を学ぶ人材育成の機会として、中大規模木造建築物推進事業を進めている林業振興課(委託業務先:熊本県建築士事務所協会)と共に施工現場の見学会を開催しました。
前回の見学会と同様、多くの方からお申込みがあり、先着順で選ばれた75名の方が参加されました。
見学会の開始に当たり、事業主体・施工者であるエバーフィールド・久原英司様から「アートポリス事業には、大工さんが誇りを持てる、若い人が頑張れる加工場をつくりたいと参加した。今回の計画は、プロポーザルで応募のあった案の中では一番難しそうではあるが、同時に魅力も感じた」と挨拶がありました。
施工現場を見学する前に、設計者の小川次郎様、構造設計者である山田憲明様から設計や施工についてのレクチャーがありました。
小川様からは「木材は鉄やコンクリートとは異なり、生物材料で生きている。今回の計画は、建築も生きているような<呼吸する建築>を目指した。小さな構造の単位の繰り返しではあるが、生きる意志を持って変形しているような架構。」とコンセプトについてもお話いただきました。
山田様からは「材同士が支える・支えられる関係がレシプロカル構造で、多方向に力を流すのに有効。構造解析もできる3Dモデルを意匠・構造で共有して設計を進め、施工・木材加工でも3Dモデルを使用している。」とお話があり、JAS製材の強度の確認方法も解説いただきました。
見学会では特別に、仮設足場を登り約10mの高さから屋根架構を間近で見ていただきました。
施工されているエバーフィールドの山脇康司様、田上勇様にも施工管理について説明いただいたり、見学者からの質問にお答えいただきました。
施工現場を見た見学者からは「一般に流通している県産材を活用する設計手法で建築された良い事例。」など感想をいただきました。
日時
令和5年(2023年)2月28日(火曜日)
1部 9時00分~10時00分(60分)
2部 11時00分~12時00分(60分)
※1部、2部どちらも見学会の内容は同じです。
主催/熊本県、(一社)熊本県建築士事務所協会
協力/株式会社エバーフィールド
場所
熊本県上益城郡甲佐町府領892
案内図
見学会の場所は以下もご参照ください。
内容
設計者講義、施工現場見学
意匠講師:小川 次郎 氏(有限会社アトリエ・シムサ)
構造講師:山田 憲明 氏(株式会社山田憲明構造設計事務所)
現場見学では、棟上げ後の木造建て方の状況を見学できます。
定員・申込方法
※定員に達したため、応募は締め切りました。
各30名(計60名)
参加費無料、事前申込制
2/20(月曜日)申込締切、申込者多数の場合は先着順
【FAX】
参加申込先は「(一社)熊本県建築士事務所協会」になります。
参加申込書に必要事項をご記入のうえ、FAXにて送付ください。
参加申込書 (Wordファイル:63KB)
参加申込書 (PDFファイル:760KB)
・FAX/096-371-2450
注意事項
- 参加者は各自ヘルメット及び軍手をご持参ください。
新型コロナウイルス感染症対策の取組みについて
新型コロナウイルス感染症対策の取組みは以下のとおりです。
各種イベントに参加される方は、感染症対策の徹底について御留意ください。
- 適切なマスクの正しい着用
- 手洗、手指消毒の徹底
- こまめな換気の実施
- 密集の回避
- 身体的距離の確保
- 飲食の制限
- 参加者の制限(入場時の検温を実施。発熱等の症状のある方は参加をお控えください。)
- 参加者の把握(見学会は事前予約制です。)
- 出演者等の行動管理
- イベント前後の感染防止の徹底(感染リスクのある行動の回避にご協力ください。)
- 各施設の業種別ガイドラインに従った取組みの実施
イベント開催時のチェックリスト (PDFファイル:943KB)
建築塾2022「エバーフィールド木材加工場施工現場見学会(第1回)」(2022年10月29日)
アートポリスプロジェクトである「エバーフィールド木材加工場」は、令和2年5月に設計者が「小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa」に選定され、これまでに見たこともないような新しい木造空間の提案を実現するため、上益城郡甲佐町で工事が進められています。
エバーフィールド木材加工場は、大規模災害からの復旧・復興において、住まいの再建の原動力となる木造建築産業のさらなる活性化に努めるため、近年減少傾向が顕著になっている大工の育成、技術力の向上を進めていくことを目的としており、同時に地場産業の活性化による地方創生のきっかけとなる施設を目指しています。
先進的な取組みを広く周知するとともに、大規模木造建築の現場を学ぶ人材育成の機会として、施工現場の見学会(建築塾)を開催しました。
多くの皆様に応募、参加いただき誠にありがとうございました!
見学会には100名近くの応募があり、抽選のうえ当選された80名の方にお越しいただきました。
まず始めに、設計者である小川次郎様、構造設計者である山田憲明様から設計や施工の特徴を説明いただきました。
小川様からは、プロポーザルでの提案に〈呼吸する〉建築とあるとおり、レシプロカル構造によって建物の形状が変わっていくように設計されていったこと、
山田様からは、エバーフィールドが今まで経験した中で最も構造的に難しい構造計画であり、様々な技術を組み合わせて成り立つ構造であることなどのお話がありました。
また、設計担当の方からも設計・施工において、苦労された裏話もお話いただきました。
<小林靖様>
<池田聖太様>
<竹原遼様>
工事は5工区に分かれて施工されており、現在は第2工区を施工中です。
見学会では特別に、仮設足場を登り約10mの高さから屋根架構を間近で見ていただきました。
施工されている株式会社エバーフィールドの大工・田上勇様に施工管理について説明いただいたり、見学者からの質問にお答えいただきました。
また、施工現場を見た後に見学者から「なぜ壁もレシプロカル構造なのか」「軒先までトラスが続く理由は」など質問していただき、小川様、山田様からのご回答に皆様聞き入っていらっしゃいました。
日時
令和4年(2022年)10月29日(土曜日)
1部 9時00分~10時30分(90分)
2部 11時00分~12時30分(90分)
※1部、2部どちらも見学会の内容は同じです。
主催/熊本県 協力/株式会社エバーフィールド
場所
熊本県上益城郡甲佐町府領892
案内図
見学会の場所は以下もご参照ください。
内容
設計者講義、施工現場見学
意匠講師:小川 次郎 氏(有限会社アトリエ・シムサ)
構造講師:山田 憲明 氏(株式会社山田憲明構造設計事務所)
現場見学では、木造建て方の状況を見学できます。
定員・申込方法
※応募は締め切りました。
各25名(計50名)
参加費無料、事前申込制
10/16(日曜日)申込締切、申込者多数の場合は抽選
同日開催の「モク活シンポジウム」申込者優先
【電子申請】申込URL/https://s-kantan.jp/pref-kumamoto-u/offer/offerList_detail.action?tempSeq=8602
【郵送・FAX・E-mail】
参加申込書に必要事項をご記入のうえ、以下の宛先へ送付ください。
参加申込書 (Wordファイル:75KB)
参加申込書 (PDFファイル:827KB)
・郵送/〒862-8570 熊本市中央区水前寺6-18-1 熊本県建築課宛て
・FAX/096-384-9820
・E-mail/kap@pref.kumamoto.lg.jp
(メールの件名は「見学会・申込み」でお願いします。)
※参加決定(抽選の結果)については、10月21日(金曜日)までに代表者の方へご連絡いたします。
注意事項
- 参加者は各自ヘルメット及び軍手をご持参ください。
- イベント保険に加入します。参加者の費用負担はございません。
新型コロナウイルス感染症対策の取組みについて
新型コロナウイルス感染症対策の取組みは以下のとおりです。
各種イベントに参加される方は、感染症対策の徹底について御留意ください。
- 適切なマスクの正しい着用
- 手洗、手指消毒の徹底
- こまめな換気の実施
- 密集の回避
- 身体的距離の確保
- 飲食の制限
- 参加者の制限(入場時の検温を実施。発熱等の症状のある方は参加をお控えください。)
- 参加者の把握(見学会は事前予約制です。)
- 出演者等の行動管理
- イベント前後の感染防止の徹底(感染リスクのある行動の回避にご協力ください。)
- 各施設の業種別ガイドラインに従った取組みの実施
モックアップ現場見学会の動画について(2020年12月25日)
2020年11月14日に開催した木材加工場のモックアップ現場見学会の様子を公開します。
現場見学会では『モックアップを兼ねたゲート』の木造建て方状況を見学していただきました。
モックアップ現場見学会の動画(3分)
設計者講義の動画(小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa)
意匠講師:小川 次郎 氏(20分)
構造講師:山田 憲明 氏(20分)
建築塾2020「株式会社エバーフィールド木材加工場モックアップ現場見学会」(2020年10月9日)
アートポリス参加プロジェクトである「エバーフィールド木材加工場」は、これまでに見たこともないような新しい木造空間の提案を実現するため、設計を進めています。
設計を進めていく中で、施工上の課題を確認するため、また実際に施工した大工の意見を設計に反映するため、木材加工場の『モックアップを兼ねたゲート』を先行して施工することになりました。
先進的な取組みを広く皆さまに知っていただくとともに、建築に携わる人材育成の機会として建築塾(現場見学会)を開催しました。
1.開催日時
令和2年(2020年)11月14日(土曜日)
- 午前の部 11時00分~12時30分(90分)
- 午後の部 14時00分~15時30分(90分)
※午前の部、午後の部どちらの見学会も内容は同じです。
協力:株式会社エバーフィールド
2.開催場所
上益城郡甲佐町大字府領字下原地内
案内図
見学会の場所については、以下もご参照ください。
3.内容
設計者講義/現場見学
意匠講師:小川 次郎 氏(有限会社アトリエ・シムサ)
構造講師:山田 憲明 氏(株式会社山田憲明構造設計事務所)
【現場見学では『モックアップを兼ねたゲート』の木造建て方を見学予定】
(延べ面積:45平方メートル程度、高さ:6.5メートル程度)
4.対象・定員
- 対象:熊本県内在住の方(参加費無料)
- 定員:午前の部 20名
午後の部 20名
5.申込方法
参加申込書に必要事項を記入し、メール、Fax、郵送でお申込みください。
申込締切:令和2年(2020年)11月1日(日曜日)必着
※申込者多数の場合は抽選となります。
※参加決定(抽選の結果)については、令和2年(2020年)11月6日(金曜日)までに代表者の方へご連絡いたします。
6.注意事項
- 参加者は各自ヘルメット及び軍手をご持参ください。
- イベント保険に加入します。参加者の費用負担はございません。
見学会に参加される場合は、以下のとおり新型コロナウイルス感染症対策の徹底について御留意ください。
- 発熱等の症状がある場合は参加を自粛ください。
- 見学会に参加される前に接触確認アプリ(COCOA)をインストールください。
また、感染拡大防止のために主催者から連絡先登録等の求めがある場合には積極的に応じてください。 - イベントに参加する際には、熱中症対策等の対策が必要な場合を除き、原則、マスクを着用ください。
また、こまめな消毒や手洗いなど、「新しい生活様式」に基づく行動を徹底ください。 - 見学会に参加する際には、入退場時、休憩時間等において、いわゆる3密(密集、密接、密閉)の環境を避けるほか、待合場所等における交流等を控えてください。
- 見学会に参加する前後には、移動中や移動先における感染防止のための適切な行動(例えば、打ち上げ等における感染リスクのある行動の回避)をとってください。
公募型プロポーザルについて
- 2020年 7月10日 受賞者コメントの掲載
- 2020年 5月15日 最終審査結果の公表
- 2020年 2月26日 公開審査の開催延期
- 2020年 2月10日 一次審査の審査員長講評
- 2020年 2月 6日 公開審査(二次審査)の開催案内
- 2020年 1月31日 一次審査の結果
- 2019年11月29日 質疑回答
- 2019年11月14日 質疑(一部)回答
- 2019年10月29日 現地見学会の概要
- 2019年10月29日 応募要項
受賞者コメントについて(2020年7月10日)
最優秀賞「小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa」の受賞者コメントを掲載します。
受賞者コメント
小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa 小川次郎
この度は最優秀賞に選出していただき、誠にありがとうございます。プロポーザルの発表から最終審査結果の発表まで、約半年間を要する長丁場の取り組みとなりました。コロナ危機という未曾有の事態においてなお、くまもとアートポリスプロジェクトの趣旨に鑑みて、公明・公正な審査にご尽力なされた審査員の方々、また熊本県の方々に、設計者として深く感謝の念を表したいと思います。
今回のプロポーザルでは、「美しく、新しい木造空間を求める」という、実に取り組み甲斐のあるテーマが掲げられていました。これほど簡潔に、かつ力強く建築の可能性を標榜したプロポーザルは、近年記憶にありません。設計の過程では、その一点に向けて案を収斂していくことを心掛けました。私たちの提案が、こうした高い理想に少しでも近づけたとしたら、正に望外の喜びといえます。今後は可能な限り良い状態で提案を実現できるよう、努力を重ねてゆきたいと考えております。
最終審査結果について(2020年5月15日)
1.最終審査結果
応募登録名 | 所在地(代表者) | |
---|---|---|
最優秀賞 | 小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa |
東京都 |
優秀賞 | 倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同企業体 |
福岡県 |
佳作 | 合同会社 白川在建築設計事務所 |
愛知県 |
佳作 | 水上哲也建築設計事務所 一級建築士事務所 |
千葉県 |
佳作 | 山下貴成建築設計事務所 |
東京都 |
※佳作は応募受付時の整理番号順に掲載しています。
2.審査員長講評
審査員長/くまもとアートポリスコミッショナー 伊東 豊雄
本プロポーザル一次審査では審査員が同席して審査を行うことができましたが、思いもよらぬ新型コロナウィルス感染症の全国的な感染拡大に伴い、二次審査はリモート審査形式で行うことになりました。
一次審査では44件の応募作品から5者が選ばれました。これまでのような公開審査ができなったため、選ばれた方々を交えたリモート審査形式も想定のひとつでしたが、WEB環境の公平さや不慣れによるトラブル回避をふまえ、10分以内のプレゼンテーション動画と2分以内の模型・CG動画を提出していただいた上で、メールによる質疑応答を経てリモートにて論議を行いました。
全応募作品は非常に多様な提案がありましたことは1次審査の講評でも述べましたが、二次審査に残った5案はとりわけ独自の構造と空間を提案していただき、たいへん興味深いプロポーザルとなったと感じております。
審査結果は、最優秀賞『小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa』、優秀賞『倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同体』、佳作(順不同)に『合同会社白川在建築設計事務所』、『水上哲也建築設計事務所一級建築士事務所』、『山下貴成建築設計事務所』の3者を選出することにいたしました。
最優秀賞の『小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa』の提案は、これまでに見たこともないような木構造の提案でした。審査員から小中断面材で構成されるレシプロカル構造を試みるという意味ではプロジェクトのスケールに向いているという意見がありました。5案中、最もリスキーな要素も多いが、圧倒的な独創性を持った提案であることが審査員一同で共有されました。解決しなくてはならない施工上の問題などが幾つか残っておりますが、実現した折には広く見学者がやってくる斬新な建築になると確信しているところです。
惜しくも次席になりました優秀賞の『倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同体』の提案は、小断面の一般流通材で構成されるアーチトラス構造で、大きな庇を持つ切妻屋根のフォルムが非常に美しく安定していると評価されました。一方で、その安定性がゆえに独創性に欠けるということで最終的に最優秀案に遅れをとったということになります。若いエネルギーに溢れたプレゼンテーションには感心させられました。再度のチャレンジを切に願っております。
『合同会社白川在建築設計事務所』の提案は、木造としては非常にユニークなものでした。大きなトラス梁を四方から架けて、それによって分割される空間を一体的な空間内に創るというものです。しかしながら、4つに分けることの説得力がいまひとつ欠けているような気がいたします。中央部に経年変化によるたわみを懸念する意見が聞かれました。敷地周辺の状況分析や仕口などの作業の合理性などの真摯な検討を評価する声もありました。
『水上哲也建築設計事務所一級建築士事務所』の提案は、全体的なルーバーにより外部の光を取り入れた環境の美しさが魅力です。庇が深い外観はシンプルで好印象でしたが、ポリカーボネイトの屋根の熱問題とルーバーによる陰影の動きが作業環境の障害になるのではないかという意見を覆すことはできませんでした。
『山下貴成建築設計事務所』の提案は、伝統的木造を継承するような出組形式の大屋根構成が面白く、ワークショップで作るとされている短冊板のアイデアもよいという意見が多くありました。しかし、大きな平面をフラットルーフで支えることに対するメインテナンスなどの不安、ポリカーボネイト外壁の抵抗感、夜間も含めてシルエットが周囲の景観になじまないのではないかという疑問の意見が上回り、残念ながら佳作に留まりました。
審査方法の変更にもかかわらず、5者の方々には個性的な提案をわかりやすくプレゼンテーション動画にしていただき、また、メールでの質疑に応えていただくなど重なる労力に感謝いたします。このようなかたちで審査をせざるをえなかったということをご理解いただければと思います。
審査員のひとりとして最優秀案に選ばれた『小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa』を受け入れてくださった久原代表から一番大胆な提案をアートポリスプロジェクトとして期待するという力強いコメントをいただき、今後につながる元気をいただきました。完成までに色々なハードルもあろうかと思いますが、クライアント、施工者として宜しくお願いする次第です。
最後になりましたが、5者の方々のご厚意により、審査用のプレゼンテーション動画と模型動画の公開を行います。応募者として、公開審査の参加者として講評で示した結果と合わせて思いを巡らせていただければ幸いです。
3.二次審査のプロセスについて
当初、令和2年3月3日(火曜日)に公開審査を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、以下のとおり変更して実施しました。
- 発表者が発表動画、模型動画を提出
- 審査員は動画で審査し、発表者へ質疑書を送付
- 発表者が質疑に対する回答書を提出
- 審査員は回答書をふまえオンライン会議による本審査を実施
4.二次審査資料の公開について(発表動画・模型動画)
審査員長の講評にもありましたとおり、二次審査資料を公開いたします。応募者はもとより、公開審査の参加者として思いを巡らせていただければ幸いです。
【最優秀賞/発表動画/小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa】
【最優秀賞/模型動画/小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【優秀賞/発表動画/倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同企業体】
【優秀賞/模型動画/倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同企業体】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【佳作/発表動画/合同会社 白川在建築設計事務所】
【佳作/模型動画/合同会社 白川在建築設計事務所】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【佳作/発表動画/水上哲也建築設計事務所 一級建築士事務所】
【佳作/模型動画/水上哲也建築設計事務所 一級建築士事務所】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【佳作/発表動画/山下貴成建築設計事務所】
【佳作/模型動画/山下貴成建築設計事務所】
5.二次審査資料の公開について(質疑回答書)
- 最優秀賞/質疑回答書/小川次郎アトリエ・シムサ+kaa(PDFファイル:196KB)
- 優秀賞/質疑回答書/倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同企業体(PDFファイル:188KB)
- 佳作/質疑回答書/合同会社 白川在建築設計事務所(PDFファイル:176KB)
- 佳作/質疑回答書/水上哲也建築設計事務所 一級建築士事務所(PDFファイル:255KB)
- 佳作/質疑回答書/山下貴成建築設計事務所(PDFファイル:228KB)
6.二次審査資料の公開について(技術提案書・様式8)
- 最優秀賞/技術提案書/小川次郎アトリエ・シムサ+kaa(PDFファイル:2.15MB)
- 優秀賞/技術提案書/倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同企業体(PDFファイル:28.41MB)
- 佳作/技術提案書/合同会社 白川在建築設計事務所(PDFファイル:5.49MB)
- 佳作/技術提案書/水上哲也建築設計事務所 一級建築士事務所(PDFファイル:7.95MB)
- 佳作/技術提案書/山下貴成建築設計事務所(PDFファイル:9.55MB)
以下に、パース・模型写真の一部を掲載します。
【最優秀賞/小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa】
【優秀賞/倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同企業体】
【佳作/合同会社 白川在建築設計事務所】
【佳作/水上哲也建築設計事務所 一級建築士事務所】
【佳作/山下貴成建築設計事務所】
公開審査の開催延期について(2020年2月26日)
令和2年3月3日(火曜日)に開催予定の「株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計に係る公募型プロポーザルの公開審査」については、新型コロナウイルス感染症の感染者が本県内でも確認されたことを踏まえ、感染拡大防止の観点から、開催を延期することとします。
現時点では、開催日程や開催方法については未定ですが、決定後、改めて当ホームページ等でお知らせしますので、御理解のほどよろしくお願いします。
一次審査の審査員長講評について(2020年2月10日)
株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計に係る公募型プロポーザル一次審査
審査員長講評/くまもとアートポリスコミッショナー プロポーザル審査員長 伊東豊雄
本プロジェクトは、くまもとアートポリス(KAP)では数少ない民間プロジェクトであることや、施工者でもある工務店が事業主であり、対話を重ねながら建設を目指すことなどの点で非常にユニークなものです。KAPで近年力を入れている県産流通木材を活用した新鮮な木造建築がテーマであることから全国から多くの関心が寄せられておりました。このことを証明するように44件もの応募作が集まり驚いているところです。
審査は5名の審査員の投票と討議によって絞り込む方法でおこなわれました。審査の第一フェーズで16案、第二フェーズで11案、第三フェーズで2案が先に確定したことから、7案まで絞り込まれました。最終第四フェーズでは残り3案を選出するために慎重に話合い、全員一致で2次審査に進む5案が決定されました。
設計与条件は20m×30m程度の平面をもつ木材加工場で最高高さ16m以下、20m程度のスパンを有する新鮮な空間というシンプルなものでありました。しかしながら正方形、長方形などの矩形平面だけでなく円形などを含めて多様な平面形式と、それに伴う独自の形態の提案が存在しました。メインとなる斬新な構造形式の提案から生み出される豊かな木造空間は採光や通風にも配慮されたものも少なくありませんでした。
審査の過程では、木造施工が専門の事業主が審査員のひとりでしたので木材接合部、施工方法、部材、コストなどの具体的な話題で盛り上がったことも付記させていただきます。
本プロジェクトは、災害時の住まいの再建の原動力となる木造建築産業の更なる活性化を目指し、次世代の木造建築の担い手となる大工の育成、技術力の向上のための研修等にも活用される施設であることを念頭におきながら2次公開審査の場で皆様と共に5者の方々のプレゼンテーションを面前で比較できることを心待ちしているところです。
最後に、多くの方々が本プロポーザルに関心を示していただいたこと、大変なエネルギーを費やして応募くださったことに改めて感謝の意を表します。
公開審査(二次審査)のご案内(2020年2月6日)
本プロポーザルの公開審査(二次審査)について、下記のとおり開催します。
全国から応募のあった44点の中から一次審査を通過した5者によるプレゼンテーションを実施します。伊東豊雄アートポリスコミッショナーを審査員長とし、公開の場で質疑応答を行って、最もふさわしい設計者を選定します。
どなたでも観覧できますので、ぜひ御来場いただき、熊本県産流通木材を活用した美しい木架構を有する、これまでにない木材加工場が具現化に向けて歩み出す瞬間を間近で体感ください。
開催概要
- 日時: 令和2年3月3日(火曜日)12時30分から17時30分(開場:12時00分)
- 会場: 熊本県庁行政棟本館地下大会議室(熊本市中央区水前寺6-18-1)
- 定員: 250名(事前申込優先)※観覧無料・どなたでも観覧いただけます。
- 申込方法: 観覧申込書によりアートポリス事務局宛て、郵送、Fax又はE-mailでお申し込みください。
- 内容:
- 開会、主催者挨拶
- 発表者プレゼンテーション
- 全体質疑
- 最終審査
- 審査結果の発表、審査員長講評及び表彰
チラシ
二次審査開催チラシ|エバーフィールド木材加工場公募型プロポーザル(PDFファイル:335KB)
観覧申込書
一次審査の結果について(2020年1月31日)
令和2年1月30日(木曜日)に実施した一次審査の結果は、次のとおりです。
- 応募状況
公募型プロポーザル応募件数:44件 - 一次審査通過者
整理 番号 |
応募登録名 |
所在地 (代表者) |
---|---|---|
2 |
倉掛・秋山・井上・川崎建築設計共同企業体 | 福岡県 |
3 |
合同会社 白川在建築設計事務所 | 愛知県 |
7 | 小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa | 東京都 |
13 | 水上哲也建築設計事務所 一級建築士事務所 | 千葉県 |
35 | 山下貴成建築設計事務所 | 東京都 |
※整理番号は、応募受付番号です。
- 今後の予定 二次審査(公開)
日時:令和2年3月3日(火曜日)午後0時30分から午後5時30分(予定)
会場:熊本県庁行政棟本館地下大会議室
内容:- 発表者プレゼンテーション
- 全体質疑
- 最終審査
- 審査結果の発表、審査員長公表及び表彰
公募型プロポーザルに関する質疑回答(2019年11月29日)
令和元年11月22日までに提出いただいた質問書への回答は次のとおりです。
質疑回答書
03-01 質疑回答書(R1.11.29)/エバーフィールド木材加工場公募型プロポーザル(PDFファイル:400KB)
追加資料
- 03-02(追加資料1)くまもと県産木材による木造建築物普及の手引き(PDFファイル:4.5MB)
- 03-03(追加資料2)敷地CADデータ(その他のファイル:98KB)
- 03-04(追加資料3)土地利用計画図(PDFファイル:132KB)
公募型プロポーザルに関する質疑(一部)回答(2019年11月14日)
本プロポーザルに関する質疑については、11月22日が提出締切、11月29日が回答予定日としておりますが、11月13日の時点で「応募資格」に関する質疑が4件提出されており、事前に回答を公表いたします。回答は次のとおりです。
質疑(一部)回答書
現地見学会の開催について(2019年10月29日)
- 以下のとおり現地見学会を開催しますので、参加を希望する方は、事前に事務局へ見学会申込書をご提出ください。
- 申込書の提出期限 令和元年11月11日(月曜日)午後3時まで
現地見学会の開催概要
- 開催日時
- 第1回 令和元年 11月12日(火曜日)(13時00分~16時00分)
- 第2回 令和元年 11月13日(水曜日)(13時00分~16時00分)
- 集合場所・見学場所
熊本県上益城郡甲佐町大字府領字下原892(整備予定地)
(詳細は見学会チラシ参照)
※車は整備予定地内に駐車してください。 - 見学方法
13時~16時の間の任意の時間に現地にお越しいただき、各自見学していただく方法とします。 - 注意事項
要項に記載のとおり、現地見学会では、プロポーザルに関する質疑は受け付けません。
また、指定区域以外への無断立ち入り、周辺道路への路上駐車等の問題を起こした者については、本プロポーザルに関する提案書を受付けない場合があります。
くまもとアートポリスプロジェクト 株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計 公募型プロポーザル(2019年10月29日)
1.趣旨
株式会社エバーフィールドは、平成28年に発生した熊本地震の際に、多くの仮設団地の建設に携わり、211戸の木造仮設住宅と13棟の木造集会施設「みんなの家」を建設しました。また、被災者の住宅再建を後押しするために耐震性やコスト低減に配慮した「くまもと型復興住宅」の建設や工務店による買取方式による木造災害公営住宅建設という新たな取組みに携わり、地域の工務店として熊本地震からの復旧・復興、被災された方々の住まいの再建に取り組まれています。
このような経験を踏まえて、災害時に住まいの再建の原動力となる木造建築産業のさらなる活性化を目指し、木造建築の担い手である大工の育成、技術力の向上のための研修等に活用できる施設として木材加工場の整備を計画されています。
今回の木材加工場の整備にあたっては、後世に残り得る文化的資産の創造により地域活性化を目指す「くまもとアートポリス」の理念に賛同いただき、県産流通木材を使用した、架構自体が美しい、新しい木造空間を目指して、くまもとアートポリスプロジェクトとして公募型プロポーザルを実施します。
2.プロポーザルの概要
- 名称
株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計に係る公募型プロポーザル - 方法 公募型プロポーザル
- 主催 熊本県
- 事務局 くまもとアートポリス事務局(熊本県土木部建築住宅局建築課内)
- スケジュール
令和元年 10月29日(火曜日)
要項発表・応募受付開始
令和元年 10月29日(火曜日)~令和2年1月15日(水曜日)
要項配布
令和元年 10月29日(火曜日)~11月22日(金曜日)
質疑受付
令和元年 11月12日(火曜日)・令和元年 11月13日(水曜日)
現地見学会
令和元年 11月29日(金曜日)(予定)
質疑回答
令和2年 1月15日(水曜日)
応募締切
令和2年1月30日(木曜日)
一次審査(非公開)
令和2年 3月3日(火曜日)(予定)
二次審査(公開)
3.審査員
審査員長
伊東豊雄(建築家、くまもとアートポリスコミッショナー)
審査員
久原英司(株式会社エバーフィールド代表取締役)
桂 英昭(建築家、くまもとアートポリスアドバイザー)
末廣香織(建築家、くまもとアートポリスアドバイザー、九州大学准教授)
曽我部昌史(建築家、くまもとアートポリスアドバイザー、神奈川大学教授)
4.報道資料
公募型プロポーザル応募要項等
- 01-01 応募要項/株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計に係る公募型プロポーザル(PDFファイル:166KB)
- 01-02 作成要項/株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計に係る公募型プロポーザル(PDFファイル:84KB)
- 01-03 様式集/株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計に係る公募型プロポーザル(Excelファイル:172KB)
仕様書
- 02-01 仕様書/株式会社エバーフィールド木材加工場新築設計に係る公募型プロポーザル(PDFファイル:90KB)
- 02-02(別添資料1~3) 位置図、敷地周辺図、現況写真(PDFファイル:1.55MB)
- 02-03(別添資料4)株式会社エバーフィールド木材加工場新築工事 事業計画書(PDFファイル:105KB)
- 02-04(別添資料4|添付資料)配置計画図等(PDFファイル:3.05MB)
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