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「採石業」をご存知ですか?~社会を支える採石業についてご紹介します~
1 採石業とは
採石業は、山や平地に存在する岩石や砂などを採取し、製品として出荷する仕事です。
産出された製品は、石材や土木建築の材料など様々な用途に使用され、高速道路やダム等の社会基盤の整備に役立てられています。
このページでは、そんな採石業の仕組みと役割をご紹介するとともに、採石業界で活躍されている方へのインタビュー記事を掲載しています。
小学生等を対象に、「採石場見学バスツアー」を実施しました。詳しくはこちらをご覧ください。
(https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/67/195556.html)
2 一般的な採石の流れ
(1)はじめに、山の表面を覆っている樹木や土を取り除き、岩石が採取できるように整地します。
(2)油圧ショベルなどを使って、岩石を削り取っていきます。火薬を用いて発破し、岩盤を崩すこともあります。
(3)採取した岩石をプラントに運び、用途に合わせて砕いたり、選別したりします。
(4)製品として出荷します。
3 日常生活とのつながり
採石業によって産出された製品は、石材としての使用のほか、コンクリートやアスファルトの材料など、多くの用途に用いられ、私たちが日常生活を送る社会の様々な場面で役立てられています。
採石業で産出された製品が役立てられている身近な例
▲天草未来大橋(天草市) ▲国道57号北側復旧ルート(大津町~阿蘇市)
(熊本河川国道事務所HPより)
▲立野ダム(大津町/南阿蘇村) ▲加藤神社大鳥居(熊本市)
(立野ダム工事事務所HPより)
▲天草砥石 ▲天草地域の陶磁器
(熊本県伝統工芸館HPより/県伝統工芸館所蔵品)
▲庭石や石灯篭 ▲くまモン石像(熊本市)
(パークシティ24h水道町)
県内の採石場位置図
県内には、53社61か所の採石場があります。(令和5年6月30日現在、県所管の認可中のもの)
※下記リンクをクリックすると拡大図が表示されます。
4 安全対策・環境配慮の取組み
採石を事業として行う場合は、「採石法」の対象となります。採石業を行いたい事業者は、県から採石業者としての登録を受けます。
採石の実施にあたっては、採石を行う場所や採取量、期間などに関する計画等を県に提供し、認可を受ける必要があります。
採石法に関する各種申請(令和4年4月1日施行)https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/67/131191.html
砂利採取法に関する各種申請(令和3年4月1日施行分)https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/67/90850.html
県は、計画内容が適正か審査するとともに、計画に違反した採石が行われていないか、災害の危険がないかなどを定期的に立入検査し、適正かつ安全な採石が行われるよう指導・監督を行っています。
県による指導・監督
▲立入検査の様子(採石業者の事務所にて) ▲立入検査の様子(採石現場にて)
緑化(原状回復)について
採石が計画どおり完了したら、採取場の原状回復を行います。特に、林地で採石した場合は緑化が必要となり、跡地にマツ、クヌギ、コナラなどの幼木を植樹したり、ススキなどの草の種をまいたりして、再び植物が生育するよう環境を整えます。
▲緑化の様子(植樹) ▲緑化の様子(播種)
草木が根付いていくと、次第に緑化が進みます。緑化は、景観を良くするだけでなく、草木が根付く力で岩盤を強くし、大雨が降ったときに土砂崩れなどの災害を防ぐ役割も果たします。
▲緑化の進行 ▲緑化後の跡地
5 採石業界で活躍する皆さんへインタビュー!
県内で採石業に携わっている採石業者の方へ、地域貢献の取組みや、採石業の魅力などを伺いました。
三加和鉱山株式会社(和水町)
東 俊昭(ひがし としあき)代表取締役社長(従事年数:25年)
Q.どのような製品を生産していますか。
A.当社が採取している岩石は「はんれい岩」で、密度が大きく、硬いのが特徴です。コンクリート製品やアスファルト合材などの用途に適しています。
生産している製品は、コンクリート製品やアスファルトのほか、舗装などの土木工事、鉄道用バラスト(※線路の下に敷きつめる砂利)などに使用されています。
Q.地域貢献などの取組みや活動を教えてください。
A.地元の菊水小児童クラブ(学童保育所)の子どもたちの社会見学活動を受け入れています。重機の見学のほか、実際にダンプやショベルカーの中に入ってもらうなど、体験と学習の場を提供しています。
また、地元のスポーツクラブ(金栗Projectランニングクラブ)とスポンサー契約を結び、子どもたちがスポーツを楽しめる環境づくりを支援しています。
そのほか、重機を提供して地域の道路の側溝掃除や草刈りを行ったり、花火大会への協賛、地元老人会へ寄付なども行っています。
▲子どもたちの社会見学活動の受け入れ
Q.工夫している点や、力を入れている点はどんなことですか。
A.「地元との共存・共栄」が大事だと考え、会社全体で、地域への協力を惜しまない姿勢をもって取り組んでいます。
採石業においては、JIS(日本産業規格適合性)認証を取得し、製品の品質管理と安定供給を行っています。
Q.採石業の魅力はどんなところですか。
A.私たちが採石業を通して生み出す製品は、建築・土木・道路・鉄道・河川工事など様々なシーンで、姿を変え、形を変えて社会に役立っています。採石業は、社会の発展に貢献できる業種だと思います。
Q.これから「採石業で働こう」と考えている人たちに向けたメッセージを教えてください。
A.採石業は社会発展になくてはならない基礎資材を生み出す業種です。皆さん一緒に社会発展に貢献しましょう。
西日本土木株式会社 山鹿砕石所・久原砕石所・玉東砕石所(山鹿市/玉東町)
古川 一郎(ふるかわ いちろう)所長(従事年数:18年)
Q.どのような製品を生産していますか。
A.「はんれい岩」を採掘しています。はんれい岩は火成岩の中の深層岩で、マグマが地下深くでゆっくりと固まってできた岩石です。非常に耐久性が高く、経年劣化がほとんどないのが特徴です。
製品は、病院や学校、マンション等の建築に使用する生コンクリートのほか、高速道路や国道等の道路に使用する路盤材と舗装用の合材、土木工事等で使用するコンクリート二次製品などに使用されています。
Q.地域貢献などの取組みや活動を教えてください。
A.地域の道路の日々の清掃活動、定期的な草刈りを行っています。
地域の行事等への参加・協賛のほか、毎年、地元の小学校へ本の寄贈を行っています。
また、大雨等により地元で災害が発生したときは、緊急を要する災害復旧へ迅速な応援を行うようにしています。
▲清掃車による道路清掃の様子 ▲重機を用いた草刈りの様子
▲地元小学校への本の寄贈
水川 宏志(みずかわ ひろし)課長代理(従事年数:23年)
Q.普段、どのような業務を行っていますか。
A.業務管理や部下の教育指導、現場作業などです。
Q.「採石業で働こう」と思ったきっかけは何ですか。
A.実家の近くに砕石場があったため、幼い頃から興味があり、高校の就職活動中に砕石場からの求人を見つけ、就職しました。
Q.採石業の魅力はどんなところですか。
A.自分たちが生産している製品が、病院や学校、線路や高速道路などのインフラ整備になくてはならないものだと分かったことや、熊本地震などの大きな災害の復旧復興に携わって、みんなの手助けができることが魅力だと感じました。
Q.これから「採石業で働こう」と考えている人たちに向けたメッセージを教えてください。
A.人が生活してく中で、砕石は絶対に必要な物です。
大きな山を、自分たちで計画立案し、計画通りに自分たちの手で開発して、砕石を絶やすことなく安定供給し、みんなの生活の手助けができるやりがいのある仕事です。
この仕事は、次世代へ継承していく壮大な仕事でもあります。「未来は自分次第」です。
有限会社 球磨川商事(人吉市)
地下 久美子(じげ くみこ)取締役(従事年数:5年)
Q.どのような製品を生産していますか。
A.当社では、主に「砂岩」を採掘しています。製品は、JR肥薩線やくま川鉄道の線路のバラストなどに利用されています。
他にも、道路工事の基盤材や住宅を建てる時の基礎に使用されるなど、みんなの生活の身近なところで役立てられています。
Q.地域貢献などの取組みや活動を教えてください。
A.毎年、お盆前や年末に地域の道路清掃活動を実施しています。そのほか、地元で開催される人吉花火大会への協賛なども行っています。
▲(有)球磨川商事の清掃活動の様子
Q.工夫している点や、力を入れている点はどんなことですか。
A.事業用車両による運搬等を行いますので、交通安全に重点的に取り組んでいます。看板を設置すること、道路を通行するときはスピードを出さないこと、地元の方たちの通行を優先することを徹底しています。
Q.「採石業で働こう」と思ったきっかけは何ですか。
A.家業として採石場を運営していたので、その姿を見て採石業界に入りました。
大学で森林を学んでいたこともあり、採石業に関する様々なことに対し抵抗なく取組んでいます。
山のこと、機械のことなど学ぶことはいろいろありますが、日々、勉強中です。
Q.採石業の魅力はどんなところですか。
A.採石業で産出されたものは、道路や建物の基礎となります。つまり、社会のいろいろなモノの「はじまり」となると考えています。
採石業を通して、社会インフラの根幹に携われることに面白さを感じています。
また、大きな機械を動かしたり、当社では行っておりませんが火薬で発破したりといった、ダイナミックな仕事ができるのが魅力です。やることがはっきりしているからこそ工夫のしがいがあります。
Q.これから「採石業で働こう」と考えている人たちに向けたメッセージを教えてください。
A.採石業は、目立たないけれど大事な仕事です。産出された岩石等はコンクリート等に使用された後も、土木工事の基礎材等に再利用されます。資源を「使い切る」のではなく、リサイクルすることで持続的に有効活用されています。
労働環境の面でも、現場の安全を最優先しますし、労働時間も決まっています。余暇も取れますので、働きやすい職場です。
業務を行うためには様々な資格取得が必要ではありますが、性別の差はあまりなく、どなたでも活躍できる業種です。
Q.県民の皆さんへ向けて
A.令和2年7月豪雨災害で被災した道路や護岸、橋の復旧に携わるなど人吉球磨地域の復興の一端を担うとの意識で、頑張って事業に取り組んでいます。
復旧復興の道はまだまだ途中ですが、「採石業はなくなってはいけない仕事」という使命感を持ち、その礎となれるよう貢献していきたいと思っています。
三池生コンクリート工業株式会社(玉名市)
坂井 清(さかい きよし)工場長(従事年数:40年)
Q.どのような製品を生産していますか。
A.当社では、山砂(「風化花こう岩」)、特に洗砂(※採取後に洗浄し、有機物などの不純物を取り除いた衛生的な砂)を生産しています。産出した洗砂は自社の生コン工場に運ばれ、生コンクリートの材料となります。当社の製品は、病院の建設や有明沿岸道路等にも使用されています。
洗砂の生産は、手間とコストがかかりますが、その分、良質な生コンの生産につながります。
建設も土木工事も採石業がなければ成り立ちません。自分たちが採取した石材や砂が、生活に身近な施設や道路になることに、大きな意義を感じています。
Q.地域貢献などの取組みや活動を教えてください。
A.周辺の地域には稲作を行う方が多いので、地域の人からの要望を受けて、場内の調整池の水をポンプで汲み出し、農業用水として使用してもらっています。
他にも、地域のお祭りなどに積極的に協賛しているほか、地元の福祉施設から依頼を受けて、施設が開催する花火大会へ場所を提供するといった協力を行っています。
付近の町道を月に1回ほうきで掃除しており、3か月に1回は水を撒いて清掃しています。また、県道を年2回、定期的に清掃しています。
▲三池生コンクリート工業(株)の清掃活動の様子
Q.工夫している点や、力を入れている点はどんなことですか。
A.採石場は土砂崩れ等の災害発生の危険がある場所なので、災害防止には特に気を付けています。
特に、近年は私たちの予想を超える大雨が多く発生しています。そのため、「絶対に地域に被害をもたらしてはいけない」と常に考え、日頃から安全対策を徹底しています。
Q.採石業の魅力はどんなところですか。
A.重機を操縦して岩石を削るといった経験ができるのは、採石業ならではだと思います。
もちろん、機械の操縦などは経験を積んで技術を身に着けることが必要ですが、一人前になると、一つの山を一人で任されるようになります。県への認可申請の手続きから表土の剥取り、岩石の採取までを自分の担当としてできるようになります。一つの山を自分の事業としてやり終えたとき、大きな達成感を感じることができます。
Q.これから「採石業で働こう」と考えている人たちに向けたメッセージを教えてください。
A.安全面に細心の注意を払っており、「時間がかかっても、回り道をしてでも安全第一」をモットーに、事故が起こらないように心配りをしています。
おかげさまで、創業以来約55年間、事故は一度も起きていません。
採石業で働きたい人はいつでも歓迎します。若い人がどんどん入ってきてほしいと思っています。
Q.県民の皆さんへ向けて
A.採石業を行っていくには、地域の理解が不可欠です。当社は代々、地域の皆さんとの信頼を第一に考え、地域から協力を求められたら積極的に協力することを大切にしています。
「地域に迷惑をかけないように」、「事故と災害が起こらないように」が一番と考え、これからも地域の理解を得ながら事業を行っていきたいと思います。