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モク活2025
「くまもとの木造建築受賞記念シンポジウム モク活2025」を開催しました!
(2025年11月22日)
くまもとアートポリスでは、人材育成事業の一環として県内の建築関係者と林業関係者が一緒になり、木造建築物の魅力を発信する「モク活シンポジウム」を2022年から毎年開催しています。4回目となる今回は、近年建築関係の受賞が続いている県内の木造建築物の施主、設計者、施工者の方々をお招きして、
令和7年(2025年)11月22日(土曜日)に熊本県庁にて、
「くまもとの木造建築受賞記念シンポジウム モク活2025」を開催しました。
県内外から木造建築物やくまもとアートポリスに関心のある高校生、大学生、建築・林業関係者、行政関係者など約170名が参加し、熱気に包まれた時間となりました。
第1部では、近年建築関係の賞を受賞された県内の6つの木造建築物の設計者に、作品の魅力や木材活用のポイントなどをお話しいただきました。
南阿蘇鉄道高森駅・交流施設 太田浩史/ヌーブ
「熊本地震で被災した南阿蘇鉄道の創造的復興として、高森駅は駅舎・ロータリー・プラットフォームを一体で再構築した。駅と町をつなぐ開放的な配置とし、夕日が見える西向きの大きな視界、町側から列車の動きが見える構成を実現。160mの木造上屋は世界的にも稀で、地元材の南郷檜を用い、柱を極力減らした軽やかな空間を形成した。Grasshopperで3次元相持ち構造「修羅組み」を作り、外観に金物が見えないよう7000本のホームコネクターを使用した。地域参加型のワークショップを通じて、鉄道・建築・コミュニティが融合した新しい駅の姿を提示し、将来的にはクルーズトレイン「ななつ星」の受け入れも視野に入れたプロジェクトとなった。」
エバーフィールド木材加工場 小川次郎/アトリエ・シムサ

「熊本での大規模木造建築の経験を踏まえ、小径材を使った約600平方メートルの大空間を新たな構造で実現した加工場。木の膨張・収縮といった“生物性”に着目し、松ぼっくりのように似て非なる部材が連続する有機的な建築を構想。レシプロカル構造を三角形ユニットとして展開し、壁と屋根を同一構造で連続させる革新的な試みを行った。設計・施工・施主が初期から協働し、大型モックアップで接合・施工手順を検証。3D CADとプレカット技術により、全て寸法の異なる複雑な部材を正確に構築し、外装は大工の手刻みで仕上げた。最新技術と伝統技術が融合した、現代木造の新しいモデルとなった。」
秀岳館高等学校新校舎 佐藤俊輔/バオプラーン熊本

「秀岳館高校では、特色ある校舎づくりとして木造4階建て耐火校舎を採用。西日本でも先駆的な木造耐火技術を用い、地域材活用と学校の魅力向上を両立した。8m×8mのモジュールによる中廊下型で、将来の教室分割・統合が容易な可変性を確保。狭小地で野球部の活動を妨げないため「建て逃げ」施工を採用し、4層が同時に立ち上がる特殊な現場となった。金物費が木工事費の1/4を占めるなど大規模木造特有の課題に対応しつつ、地盤改良でコスト削減も実現。完成後は明るく機能的な校舎として評価され、その後の県内木造建築の発展にも寄与した。」
そらいろ保育園 志垣孝行/志垣デザイン店

「宇城市松橋に建つ木造平屋の企業主導型保育園。大きな一枚屋根の下に多様な小空間が点在する構成とし、幼児が長時間過ごす場として一体感と多様性を両立した。固定壁を最小限にし、棚や植栽、工作物などで子どもと先生が境界をつくる“余白のある建築”を実現。伝統モジュール(910mm)を活用し、在来軸組にC型チャンネルを組み合わせて大屋根を支えるハイブリッド構造とした。隣接する地域交流カフェは保護者・地域住民の憩いの場となり、建築と運営が協働して“生きた保育環境”を育てている点が特徴。」
立野交流施設(立野駅) 真道吉広/ジメント

「熊本地震後の創造的復興として、JRと南阿蘇鉄道の結節点である立野駅を再構築。地域の交流拠点・観光拠点・乗換拠点として多機能を担う。阿蘇の自然を最大限取り込むため、V字型屋根と多方向の視点場を設計し、夕日、外輪山、列車の動きが見える風景の駅を実現。主体は鉄骨造だが、屋根・上屋・広場の家具などに地域材を用いた木質化を徹底。2019年の法改正により木現しが可能となり、軽量な木造屋根が実現した。駅前広場と一体でイベントが行われ、地域住民、高校生、観光客が混ざり合う公共空間となっている。」
熊本地震震災ミュージアム 体験・展示施設 百田有希/o+h
「震災遺構をネットワーク化する構想の中核拠点として、阿蘇カルデラを望む旧東海道阿蘇キャンパス跡地に建設。周囲の雄大な自然と対話するため、くの字型の有機的な屋根を採用し、外輪山や震災遺構を切り取る視点場を形成。展示室を3棟に分け、半屋外の軒下空間が連続させる構成とした。震災の記憶を学ぶ中で、つらい感情が沸いたときに阿蘇の風景に心を整えてもらえるように設計した。構造はRC+木造のハイブリッドで、長大建築特有の揺れの問題を渡り廊下の“柔らかさ”で解決。屋根材には阿蘇の野焼きの灰を使ったタイルを用い、地元施工者と協働して大地のグラデーションを表現。地域の技術とアートポリス文化が結実した建築となった。」
第2部では、くまもとアートポリスアドバイザーの桂氏の進行により、第1部の登壇者である設計者に加え、施主、施工者、木材供給者といった多様な立場の参加者によるディスカッションが行われました。当日の会場には、建築の業界を目指す県内の高校生の参加が多くあり、桂氏からは「この若い参加者こそが、このシンポジウムの一番の収穫」という言葉が最初に述べられました。ディスカッションの話題の中心となったのは、それぞれの立場から見る木造を選択する意味と意義でした。第1部で紹介された受賞作品の関係者からは、難易度の高い木造建築に挑む中で現場での対話がいかに重要であるか、またはその「せめぎ合い」があるからこそ、結果として建築物の完成度が高まった背景が語られ、会場の共感を集めた。木材供給側からは、地域材を活用することが、単なる地産地消ではなく、効果的な持続可能な資源利用であることの視点が示され、今後は地域で育った木を適切に使い、植えて育てる循環を「見える化」する必要性が語られました。
受賞作品の中にはウッドショックの最中に施工が進められたケースもあり、木材の確保において地域との連携が奏功したことが共有されました。ディスカッションを通じて浮かび上がったのは、建築技術だけの話ではなく、人と人、地域と産業をつなぐ総合的な営みに着目することが、今後の可能性を広げるということでした。限られた時間の中で開催されたディスカッションは、熱を帯びた話が繰り広げられ、今後の県産材活用の大きなヒントが与えられました。
<参加者の声>
・実際に、建物を見学させていただいたが、設計された方のお話を聞くことで、より魅力を感じられた(20代学生)
・こういったシンポジウムを年に2回くらいやってほしい(10代学生)
・設計者だけでなく、施工者の話も聞くことができ、新鮮で面白かった(20代行政)
・設計段階や工事段階で困難であった点や木材の樹種をどう決めたかなど、もっと深くしりたい(60代建築関係者)
「くまもとの木造建築受賞記念シンポジウム」の開催について
くまもとアートポリスの人材育成事業として、県内の建築関係者と林業関係者が一緒になって木造建築物の魅力を発信する「モク活シンポジウム」を、2022年から毎年開催しています。
また、県では、脱炭素(Decarbonization)社会の実現に向けた取組みの重要度が増す中、「くまもと県産木材炭素貯蔵量認証制度」を創設し、脱炭素と木造建築の推進を行っています。
今回は、近年受賞が続く県内の木造建築物の設計者に、木造建築の魅力を発表いただき、施主・設計者・施工者・木材供給者などの方々とともに「熊本の魅力を活かした新しい木造建築の可能性」を探っていくシンポジウムを開催します。

<受賞作品の紹介(令和7年11月4日掲載)>※施設名称五十音順


1.日時
令和7年(2025年)11月22日(土曜日)
午後1時20分から午後5時まで
※受付は、午後1時から開始します。
2.場所
熊本県庁行政棟本館 地下大会議室(熊本県熊本市中央区水前寺6-18-1)
※駐車場は県庁南側駐車場をご利用ください。
3.定員
定員200名(参加費無料、事前申込優先)
4.内容
第1部 設計者による受賞作品発表
<発表者> ※五十音順
太田 浩史 /ヌーブ
小川 次郎 /アトリエ・シムサ
佐藤 俊輔 /バオプラーン熊本
志垣 孝行 /志垣デザイン店
真道 吉広 /ジメント
百田 有希 /o+h
第2部 ディスカッション
<出演者> ※五十音順
〇第1部発表者
太田 浩史 /ヌーブ
小川 次郎 /アトリエ・シムサ
佐藤 俊輔 /バオプラーン熊本
志垣 孝行 /志垣デザイン店
真道 吉広 /ジメント
百田 有希 /o+h
〇受賞施設施主・施工者
岩元 政貴 /竹内工務店
久原 英司 /エバーフィールド
志垣 豊和 /吉永産業
橋本 幸典 /橋本建設
日田 政己 /建吉組
〇木材供給事業者等
犬童 大輔 /球磨村森林組合
坂田 雅孝 /ウッディファーム
水間 信介 /熊本県木材協会連合会
原田 展幸 /ライフジャム
〇コーディネーター
桂 英昭 /くまもとアートポリスアドバイザー
※シンポジウム終了後、交流会を開催します(交流会は別途料金が必要です)
時間:午後5時30分から
会場:ホテル熊本テルサ1階レストラン(熊本県熊本市中央区水前寺公園28-51)
料金:5,000円(事前申込制)
5.申込方法
電子申請システム(LoGoフォーム)から申込みをお願いします。
【申込みはこちらから】<外部リンク>
6.主催・共催
主催 熊本県(建築課・林業振興課)
共催 一般社団法人熊本県建築士事務所協会

