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県内のチブサン、千金甲などの装飾古墳を精巧に再現したレプリ力や、出土遺物の実物を展示しています。
会場:装飾古墳室(本館1階)
観覧料:無料
※展示効果のため、照明を暗くしております。
装飾古墳とは、石棺や石室あるいは横穴墓の内・外面に、彫刻や彩色により文様や絵画などの装飾を施した古墳のことです。5世紀から7世紀ごろまで造られ、全国で723例(令和元年調べ)ほどが知られていますが、九州の北・中部に集中的に存在しています。特に、熊本県内には205例が分布しており、装飾古墳の発生と展開を考える上で注目されています。本館の装飾古墳は、熊本県の代表的な装飾古墳を再現したものです。
装飾古墳の図柄は、(1)幾何学的な文様(円文、同心円文、三角文、直弧文など)、(2)器財器物文様(靫、盾、弓などの武器武具や舟や家屋など)、(3)人物鳥獣文様(人物、馬、鹿、鳥など)などに分けられますが、ひとつの古墳に各種の文様が描かれている場合も多く見られます。そして、これらの装飾には、武器武具、装甲の力、または、幾何学文の呪力などにより墓域を守るもの、被葬者の生前の生活や財産を描き、死後の世界への供物としているもの、死後の世界を描き死者の安らかな眠りを祈っているものなどがあると考えられています。
本県内の装飾古墳では、具象的な文様よりも三角文や円文、直弧文などの幾何学文様がことによく発達して注目されていますが、地域・時代によっては靫や盾、人物などの具象的な文様もみられ、エネルギーに満ちたものです。しかし、やや後の時代の奈良県・高松塚古墳の壁画(7世紀末~8世紀初め)などに比べると、かなり素朴で異質なものです。
これらの装飾古墳は、日本古代の優れた原始美術として、また、文献の乏しい古代史の空白を埋め、古代人の思想を表現するものとして、まことに貴重なものといえます。また、日本の近代美術史上に名を刻む抽象画家・坂本善三を生んだ本県としては、古代から続く熊本の抽象絵画のルーツを示すものと位置づけることも可能でしょう。
本館では、このような装飾古墳の原始美術としての一面に着目し、原始から現代に至る熊本の美術史の原点として、全国にさきがけて装飾古墳室を設置しました。
広浦古墳石棺材 |
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