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熊本種

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0000779 更新日:2010年1月29日更新

熊本種の写真

「肥後五鶏の復元並びに保存に関する研究」より(平成14年1月 松崎正治(熊本県農業研究センター研究員))

「熊本種」について

 熊本種は、明治20年(1887)から明治40年(1907)にかけて、熊本県下益城郡小川町を中心として、在来種にエーコク種を交配し、更にバフコーチン種や白色レグホーン種、バフプリマスロック種を交配して、産卵率の向上と羽色・体型の斉一化を図り、明治38年(1905)に「熊本コーチン」と命名した。

 その後、大正10年(1921)に「熊本種」と改称され、大正13年(1924)に帝国家禽研究会が第1次熊本種審査標準(三井高遂,1924)と、大正14年(1925)に熊本種の標準画(三井高遂,1925)を発表した。

 また、昭和3年(1928)に同研究会が熊本種審査標準を改訂し、熊本種の新しい標準画(三井高遂,1928)も発表した。この統一した方針によって改良がされるようになったことから急速に改良が進み、優れた卵肉兼用種として熊本県だけでなく、福岡県、大分県においても飼養されるようになった。

 しかし、昭和10年(1935)以降、養鶏界は実用鶏時代に移ったので銘鶏から多産鶏の時代となり、卵用種の白色レグホーン種を中心に、卵肉兼用種の横斑プリマスロック種、ロードアイランドレッド種、ニューハンプシャー種が主に飼養されるようになり、熊本種は衰退した。

 また、戦後の昭和20年(1945)から30年(1955)には新たに輸入された白色レグホーン種を中心に、卵肉兼用種の横斑プリマスロック種、ロードアイランドレッド種、ニューハンプシャー種等が飼養され、昭和30年代当初は雑種強勢を利用した鶏、例えば白色レグホーン種と横斑プリマスロック種を交配したロックホーンや白色レグホーン種とロトドアイランドレッド種を交配したロードホーン等の一代交雑種が主に飼養されるようになった。

 これらの一代交雑種の雌は卵用として、雄は肥育して肉用として利用されていたが、昭和30年(1955)代の後半には、卵用種としてはハイラインやデカルブ等の外国鶏銘柄鶏が、また肉用種としてはコーニッシュ種が輸入され、これが卵肉兼用種と交配され、ブロイラーが生産されるようになった。

 熊本県養鶏試験場も昭和39年(1964)に輸入したコーニシュ種と交配するための肉用母鶏として熊本種を利用する計画を立て、僅かに残っていた熊本種を使って「コーニッシュ雄×熊本種雌」の交配による肉用鶏の肥育検定を行った結果、この肉用鶏は発育が良く肉質も優れていたが、熊本種の繁殖能力が悪いため熊本種自身の維持が困難となり、昭和44年に熊本種の保有を断念した。

 その後、熊本種唯一の飼養者であった山鹿市の渕上悦男氏保有の熊本種も、近親交配の弊害のため雄が交尾行動を喪失し、同種内の繁殖が不可能となった。そこで、当時養鶏試験場に勤務していた筆者は、渕上氏が飼養していた熊本種全羽数(雄1羽、雌3羽)を導入し、それを基に昭和51年(1976)から熊本種を改良・増殖し、その高品質肉用鶏としての遺伝資源利用方法を明らかにしようとした。

復元方法

 昭和51年(1976)に渕上悦男氏より導入した熊本種雄1羽と雌3羽を使用して、人工授精による繁殖をおこない、雛15羽を得たが、育成率が悪く、成鶏まで成長した個体は雄1羽と雌3羽であり、熊本種同士の交配での増殖は困難であると考えられた。

 そこで、体型・羽色が熊本種にもっとも近いと考えられる土佐九斤の雄を岡山県養鶏試験場より導入して、下図のとおり熊本種雄に交配し、その雑種第一世代(F1)に熊本種の累進交配を実施した。累進交配は昭和54年(1979)に熊本種の血液割合が雄7/8と雌は3/4との交配で81.3%になったところで中止し、その後、閉鎖群育種により熊本種審査標準を基に選抜・淘汰・交配を繰り返し、体重、体型、羽色の固定化を図った。

熊本種の改良増殖のための交配の図

※累進交配・・・手持ちの在来種を早急に改良したいとき、外部から改良種を輸入して交配、その子どもにさらに改良種を交配させる手法。遺伝的改良効果が大きい。

土佐九斤の若鶏の写真
土佐九斤の若鳥(1976年)

絶滅寸前だった1976年当時の熊本種の写真
絶滅寸前だった1976年当時の熊本種

農業フェアで展示された熊本種の画像
農業フェアで展示された熊本種

補足説明、「肉用熊本コーチン」について

 熊本種を復元することができたので、高品質肉用鶏を生産するために、熊本種を大型に改良した雄系統「熊本コーチン」の造成を開始するとともに、熊本コーチンと交配する雌系統「熊本ロード」(ロードアイランドレッド種)の造成も開始した。

 これら「熊本コーチン」の雄と「熊本ロード」の雌を交配し、100日以上肥育したものを「肉用熊本コーチン」と名付け、熊本県産の地鶏として生産をおこなってきた。

 また、「肉用熊本コーチン」の能力をさらに向上させるために、熊本ロードに白色プリマスロックを交配し、褐色羽装・大型で産卵率のよい雌系統「九州ロード」を造成した。

 平成13年からは、「熊本コーチン」の雄と「九州ロード」の雌を交配し、発育と肉質面で改良を加えた新しい「肉用熊本コーチン」が生産されている。さらに、平成16年には「肉用熊本コーチン」が地鶏肉の特定JAS認定を受け、熊本県を代表する“地鶏”として確固たる地位を築いている。

 ※「九州ロード」は、雄系統熊本コーチンと原種天草大王の交配相手として位置づけられている。

熊本コーチンの写真
熊本コーチン

熊本ロードの写真
熊本ロード

褐色羽装大型雌系統(九州ロード)の写真
褐色羽装大型雌系統(九州ロード)

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