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平成31年2月熊本県議会定例会における議案説明要旨
まず最初に、天皇陛下におかれましては、先月、御在位三十年を迎えられました。来週24日には政府主催の記念式典が執り行われます。県民を代表して、謹んで、御在位三十年をお祝い申し上げます。
今年4月30日には天皇陛下が退位され、5月1日に皇太子殿下が即位なさいます。歴史の転換期にあたり、天皇陛下への感謝の気持ちとともに、新しい時代にふさわしい、活力に満ちた素晴らしい熊本の創造に向けて、県民の皆様と力を合わせて、全力で取り組んで参ります。
第1 県政運営の所信について
それでは、まず、最近の県政の動向について御報告いたします。
熊本の空の玄関口である阿蘇くまもと空港についてです。長年の懸案である空港へのアクセス改善について、昨年末からJR九州と本格的な協議を行って参りました。そして昨日、鉄道整備に向けた基本的方向性について、JR九州の同意を得ることができました。
その主な内容は、(1)県民総合運動公園を経由する三里木駅からの分岐延伸、(2)JR九州への運行委託、(3)加えて、最大の課題である費用面については、運行開始後、整備費の3分の1を上限にJR九州から拠出いただけることになりました。
JR九州が既存路線の増収分の一部を整備費として負担するという新たな整備スキームのもと、今後、JR九州や国との協議を深めるとともに、詳細な調査検討をはじめとする事業化に向けた取組みを加速化して参ります。
次に、今回の定例会に提出しております議案の説明に先立ち、県政運営に対する私の所信の一端を申し述べます。
平成28年4月の熊本地震の発生から今年で3年を迎えます。そして、今年は、蒲島県政3期目の総仕上げに向けた極めて重要な年でもあります。
その年を表す一文字に、一昨年は熊本地震からの復興の「興(こう)」、昨年は創造的復興の「創(そう)」の一字を掲げ、ホップ、ステップと復興に向けた取組みを着実に進めて参りました。そして、3年目となる今年は、跳躍の跳(ちょう)、「跳(とぶ)」の文字を掲げました。県民の皆様とともに「県民総幸福量の最大化」に向けて大きくジャンプできるよう、創造的復興に向けた取組みを更に加速化するとともに、熊本への人の流れを創出するなど人口減少問題にも、しっかりと取り組んで参ります。
中でも、「住まいの再建」については、「被災された方々の『住まいの再建』なくして『心の復興』はない」との強い決意のもと、全力で取り組んでいます。その結果、現在、約2万9千人の方々が再建を実現されました。しかし、今なお約1万9千人の方々が仮設住宅で生活をされています。引き続き、被災された全ての方々が、恒久的な住まいを一日も早く確保できるよう、全力を尽くして参ります。
また、「益城町の復興まちづくり」についても、県道熊本高森線の4車線化のモデル地区先行整備や、木山地区の土地区画整理事業の仮換地指定を進め、益城町とともに、将来の発展につながるまちづくりに取り組んで参ります。
阿蘇へのアクセスルートについては、国道57号北側復旧ルートや阿蘇大橋の2020年度全線開通に向け、国との連携のもと、着実に復旧を進めて参ります。
海の玄関口である八代港については、国によるクルーズ船専用岸壁の整備、県による駐車エリアの整備、ロイヤルカリビアン・クルーズ社によるくまモンパークなど「おもてなしゾーン」の整備を一体的に進めます。来年4月の供用開始に向け、国、県、民間事業者の知恵と力を結集し、世界に誇るクルーズ拠点として、その魅力を高めて参ります。
陸の玄関口である熊本駅については、3月には新しい熊本駅舎が完成し、さらに、2年後の開業を目指した新たな駅ビルの整備もスタートします。賑わいのある、新たな熊本の顔となるよう、関係者としっかりと力を合わせ取り組んで参ります。
そして、今年はいよいよ、ラグビーワールドカップ、女子ハンドボール世界選手権大会の2つの国際スポーツ大会が熊本で開催されます。さらに、NHK大河ドラマでは、本県出身の金栗四三(かなくりしそう)を主人公とした「いだてん」が放送されるなど、熊本が国内外から大いに注目を集める、またとない一年となります。
間近に迫った両大会の成功に向け、万全の受入体制を整えるとともに、ラグビーワールドカップ6万人、女子ハンドボール世界選手権大会30万人の観戦者数目標の達成に向け、「オール熊本」での機運醸成を図って参ります。
また、大会の成功を一過性のものとせず、開催により得られる有形・無形の成果をレガシーとして継承し、インバウンドや国際交流の更なる拡大、スポーツの振興等に波及させることができるよう、取り組んで参ります。
これら2つの国際スポーツ大会や「いだてん」に加え、「くまモン」や「ルフィとその仲間たち」の力も最大限活用しながら、復興する熊本とその魅力を、全世界に発信して参ります。
第2 平成30年度2月補正予算について
続いて、今定例会に提案しております議案について、御説明申し上げます。
まず、平成30年度2月補正予算についてです。
去る2月7日に成立した国の第二次補正予算に対応するため、国土強靭化や防災・減災、TPP対応関連の予算を中心に495億円を計上しています。グループ補助金の追加措置や、農村地域防災減災事業などを盛り込んでおります。
一方で、事業執行見込みの精査による減額などがあり、これらを合わせますと、総額で79億円の減額補正となります。
これにより、補正後の現計予算額は8,532億円となります。
第3 平成31年度当初予算について
次に、平成31年度当初予算について御説明いたします。
1.予算の基本的な考え方・概要
今回の予算は、4カ年戦略の総仕上げとして創造的復興を実現し、さらには、国際スポーツ大会の開催を通じて、本県が未来に向けて大きく「ジャンプ」するための予算を目指しました。
そこで、重点10項目をはじめ、「将来世代にわたる県民総幸福量の最大化」につながる、より実効性の高い施策が大胆に展開できるよう編成しました。
この結果、一般会計予算の総額は、今年度に引き続き、地震前の規模を大きく上回る7,915億円となります。
2.予算の主な内容
それでは、歳出予算の主な内容について、4カ年戦略の4つの取組みの方向性に沿って説明いたします。
(1)安心で希望に満ちた暮らしの創造
第一に、“安心で希望に満ちた暮らしの創造”についてです。
家族や地域の強い絆が息づく地域づくり
まず、「住まいの再建」について、被災された方々の恒久的な住まいの確保に向け、支援策の更なる充実を図ります。併せて、来年春までの災害公営住宅の全戸完成を目指し、市町村と連携して、整備に全力を尽くして参ります。
また、市町村において、木造仮設住宅や「みんなの家」を今後も有効に利活用できるための支援策を創設します。
さらに、土砂災害等から県民の命と財産を守るため、いわゆる「レッドゾーン」からの移転促進や、早期避難のための周知を強化します。
南阿蘇村立野及び黒川地域の再生については、村や東海大学などの関係機関と連携を図りながら、住民の皆様による復興に向けた取組みを積極的に支援して参ります。
安全安心で暮らし学べる生活環境づくり
次に、教育については、子どもたちの主体的・対話的で深い学びや、グローバル人材の育成を実現するため、県立学校への本格的なICT環境の整備や英語教育の更なる充実を図ります。
また、近年急増する特別支援教育ニーズの高まりと、それに伴う知的障がい特別支援学校の狭隘化を解消するため、計画的かつ効率的な特別支援学校の施設整備を進めます。
さらに、県民の安全・安心な暮らしを守る警察官の受傷事故防止対策や交番・駐在所の安全対策を強化します。
あらゆる状況に備える医療・福祉提供体制の構築
次に、少子化対策については、市町村と一体となって結婚・妊娠・出産を総合的に支援するため、新たな交付金制度を創設します。
また、子育て支援については、放課後児童クラブの開所時間や受入学年の拡充を図ります。
さらに、発達障がいに関する診断・診療や相談ニーズの高まりに対応するため、発達障がい者支援センターの体制を強化します。
医療分野については、障がい児・者の歯科診療と人材育成等の中核を担う、県歯科医師会立口腔保健センターの体制強化を支援します。
(2)未来へつなぐ資産の創造
第二に、“未来へつなぐ資産の創造”についてです。
災害に負けない基盤づくり
災害に負けない基盤づくりとして、九州をつなぐ幹線道路ネットワークの整備を促進します。また、熊本天草幹線道路については、国との連携のもと、本渡道路等の早期完成に向けて整備を加速化します。
さらに、国の「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」を踏まえ、災害に負けない熊本づくりを目指し、重要インフラの強靭化・耐震化を進めて参ります。
大規模災害時に集中する110番通報を迅速に受理するため、県警の通信指令システムの機能強化を図るとともに、避難所としても利用される、県立学校施設の防災機能強化に取り組みます。
また、熊本地震の記憶と教訓を後世にしっかりと伝え、防災対応力の強化等につなげる「震災ミュージアム」の実現に向けた取組みを進めます。
地域の特性を活かした拠点・まち・観光地域づくり
阿蘇の世界文化遺産登録に向けた取組みを積極的に進めるとともに、天草の崎津集落、万田坑、三角西港といった熊本の世界遺産の魅力を国内外に発信して参ります。
また、熊本への移住・定住を進めるため、国の地方創生移住支援事業等を活用し、市町村と一体となった取組みを進めます。
御所浦地域の振興については、架橋事業休止の判断を踏まえ、島民の皆様の生活の不便さや負担を少しでも解消することができるよう、振興策の拡充を図ります。
くまもとの誇りの回復と宝の継承
熊本城、阿蘇神社をはじめ、本県の誇りである多くの文化財について、国内外の皆様のご支援のもと、着実に復旧を進め、次の世代へと継承して参ります。特に、熊本城の復旧については、県の文化財等復旧復興基金から、熊本市の実質負担額を全額拠出することで、復旧支援を強化します。
また、「阿蘇くじゅう国立公園」については、「国立公園満喫プロジェクト」による国の支援を最大限に活用し、世界水準のナショナルパークを目指した魅力の向上に取り組みます。
さらに、熊本の宝である豊富で良質な地下水を、未来へと確実に引き継ぐため、その涵養や水質保全の取組みを進めます。
(3)次代を担う力強い地域産業の創造
第三に、“次代を担う力強い地域産業の創造”についてです。
競争力ある農林水産業の実現
世界と戦えるくまもと農業の実現に向け、生産性や品質の向上に大きな効果が期待できる「スマート農業」を推進して参ります。
また、新規就農者を総合的に支援する取組みや、今後も増加することが予想される、農業分野における外国人材の受入れ・育成体制の強化を進めます。
林業分野では、来年度からスタートする新たな森林管理システムの円滑な実施に向けて、意欲と能力のある林業経営者の育成等を図るとともに、「くまもと林業大学校」の創設により、林業の担い手確保対策を拡充します。
水産分野では、「稼げる水産業」を目指し、ICTを活用した新たな養殖技術の開発や、高収益品種の生産体制の確立を目指します。
県経済を支える企業の再生・発展
次に、商工業については、引き続き、グループ補助金による復旧支援に万全を尽くすとともに、経営支援の強化や資金繰り支援の拡充を図り、被災事業者の復興への取組みをしっかりと支えて参ります。特に、小規模事業者の販路開拓や生産性向上等の取組みを積極的に支援します。
また、企業誘致については、他県との競争に勝ち抜くための補助制度拡充を図るとともに、市町村と連携したサテライト型オフィス等の誘致を積極的に推進します。
自然共生型産業を核としたオープンイノベーション機能の確立
さらに、くまもと発の次世代ベンチャー創出に向けて、官民連携コンソーシアムによる支援の取組みを進めます。
加えて、地域未来投資促進法を活用した県内企業の設備投資についても、引き続き積極的に支援して参ります。
地域資源を活かす観光産業の革新・成長
観光分野については、将来の熊本の経済をけん引する基幹産業化を目指し、デジタルマーケティングを活用したより効果的な観光戦略の推進と、県観光連盟の体制強化に着手します。
また、デスティネーションキャンペーンや国際スポーツイベントといった絶好の機会を捉え、多様な民間事業者のビジネスチャレンジを後押しします。
地域を支え次代を担う人材確保・育成
熊本の復興と発展を担う人材確保については、本県独自の企業と連携した奨学金返還等支援制度の周知を図るとともに、工業高校などの新規学卒者の県内就職促進の取組みを強化します。
また、UIJターンについても、国の支援策を最大限に活用しながら、相談窓口の拡充やマッチング機能の強化を図ります。
さらには、外国人材の受入体制整備に取り組む企業や経済団体等を積極的に支援して参ります。
(4)世界とつながる新たな熊本の創造
第四に、“世界とつながる新たな熊本の創造”についてです。
空港・港の機能向上によるアジアに開くゲートウェイ化
阿蘇くまもと空港については、3月に「コンセッション方式」の導入による新たな運営権者が選定されます。これに加え、空港アクセスの向上により、空港のポテンシャルが最大限に発揮されるよう、万全の準備を進めるとともに、アジアとつながる国際線振興対策を強化して参ります。
八代港については、来年4月の供用開始に向けた国際クルーズ拠点整備に全力を尽くすとともに、物流における新規国際航路の開設に向けた取組みを強化します。
世界と熊本をつなぐヒト・モノの流れの創出
次に、国内外で絶大な人気を誇るくまモンについては、その持続的な活躍を支える新たな財源スキームとして、基金を創設します。
また、今年のラグビー、ハンドボールの盛り上がりを、来年のオリンピックイヤーにしっかりとつなげるため、聖火リレーの準備やキャンプ誘致に取り組んで参ります。
さらに、若者の海外へのチャレンジを支援する取組みや、熊本で活躍する外国人材の受入れ支援体制を拡充します。
(5)川辺川ダム問題への対応
次に、川辺川ダム問題への対応についてです。
「熊本県五木村振興推進条例」に基づき、平成21年に策定した「ふるさと五木村づくり計画」が今年度で区切りの10年を迎えることとなります。これを踏まえ、今後の村の振興のあり方について、村民の皆様や村と丁寧に議論を重ねてきました。
その結果、「活き活きと暮らせるひかり輝く五木村」を目指す村の基本構想のもと、県と村で新たな計画を策定することとし、産業振興や移住・定住の促進などに、引き続き、しっかりと取り組んで参ります。
(6)水俣病問題への対応
最後に、水俣病問題への対応についてです。
公健法に基づく認定業務については、平成31年度までの4年間で1,200件の審査完了を目指し、迅速かつ丁寧に認定審査を進めて参ります。
また、引き続き、胎児性・小児性患者の方々などの日常生活の支援をはじめ、高齢化が進む水俣病患者の方々が、安心して暮らしていくことができるよう、しっかりと取り組みます。併せて、水俣・芦北地域の振興に着実に取り組んで参ります。
第4 その他の議案について
以上、予算案について御説明申し上げました。このほか、今定例会には、「熊本県情報公開・個人情報保護審議会条例」の制定など各種条例案件や、工事関係、専決処分の報告・承認案件なども併せて提案しております。
なお、今会期中には、人事案件についても追加提案する予定です。
これらの議案について、よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。