本文
空港アクセス鉄道に係る調査・検討結果について(概算事業費、需要予測、B/C等)
熊本県では空港へのアクセス改善に向け、空港アクセス鉄道整備の調査・検討を進めております。
令和7年9月県議会において、調査・検討結果(概算事業費、需要予測、B/C等)について報告しました。
報告内容については以下のとおりです。
1 調査・検討の趣旨・概要
(1)調査・検討の趣旨
- 阿蘇くまもと空港へのアクセスは、リムジンバスを含めた自動車での移動が主であり、朝夕のラッシュ時には渋滞が発生し、想定時間内に空港に到着できない事態が多く発生。
- 今後、更なる国際航空路線の拡充や半導体関連産業の集積等により、空港利用者の大幅な増加が予想される中、熊本市中心部と阿蘇くまもと空港が鉄道でつながることで、熊本都市圏の都市機能が一層向上し、半導体関連企業の円滑な企業活動にも資する。
- また、空港アクセス鉄道は、新生シリコンアイランド九州を実現し、日本の半導体関連産業の復活を目指す国家プロジェクトの成功のためにも、重要なインフラである。
- このため、令和4年12月議会で空港アクセス鉄道は「肥後大津ルート」とすることを表明し、鉄道整備の具体化に向けた調査・検討の深度化を進めてきたもの。
(2)調査・検討の概要
肥後大津ルートでの整備に向け、以下のとおり検討の深度化を実施。
- 整備ルートの絞り込み → 令和7年6月議会で公表
- 物価高騰などを踏まえた概算事業費の見直し、運行形態の整理、需要予測、費用便益分析(B/C)等の精査 → 今回公表
2 運行形態に係るJR九州との協議
令和4年度におけるJR九州との確認書取り交わし
- 令和4年11月に、肥後大津ルートに関する確認書を取り交わし、「空港アクセス鉄道と豊肥本線全体の利便性の最大化及び運営の効率化という目標を共有」の上、直通運転を基本として検討するなど、空港アクセス鉄道の早期実現に向けて取り組むことを確認。
- 運行形態については、三里木ルートに関する確認書に基づく上下一体(運行委託)方式に加え、上下分離方式により下部分は県が設立する第三セクターが運営し、上部分はJR九州が豊肥本線と一体的に運行を担う方式を検討することとしていた。
今回の報告にあたっての運行形態に係るJR九州との協議結果
- 空港アクセス鉄道の運行形態については、JR九州が第二種鉄道事業者として、豊肥本線と一体的に運行を行う上下分離方式を採用することとした。
- 空港アクセス鉄道における効率的なダイヤ設定による快速運行を実現するため、空港アクセス鉄道の整備に合わせて、豊肥本線輸送力強化のための整備も両者が協力して行うこととした。
3 需要予測等に係る主な前提条件
4 調査結果概要
物価高騰などの影響により概算事業費は増加したものの、快速運行の設定による所要時間の短縮や、所要時間短縮等による需要予測の増加等により、30年の費用便益分析(B/C)は「1.21(前回「1.03」)」となった。
5 概算事業費(前回調査結果との比較)
空港アクセス鉄道整備に係る事業費の増(主な増要因) [+約200億円]
・物価、人件費の高騰[+約160億円]
前回調査結果のR3.4月価格からR7.4月価格で再算定し、4年分の物価、人件費の上昇分を反映。近年の物価高騰が大きく影響。
・鉄道設計の深度化[+約30億円]
信号場、トンネル、空港駅、主要交差部等の構造精査
・車両費、運行システム改修費[+約10億円]
将来の運行計画を想定した必要車両数の見直し、運行ダイヤのシステム改修費
豊肥本線輸送力強化に必要な事業費 [+約60億円]
- 空港までの快速運行の実現や豊肥本線の効率的な運行ダイヤの設定により利用者の利便性を向上させるため、「行違い化(東海学園前駅)」「同時進入化(武蔵塚駅、原水駅)」など、空港アクセス鉄道の開業までに必要な豊肥本線の輸送力強化を実施。
- 国やJR九州等関係機関と協議の上、活用できる国の財政支援メニューを考慮しながら、最適な事業スキームを検討。
6 需要予測と費用便益分析(B/C)(前回調査結果との比較)
需要予測、費用便益分析(B/C)の伸びの主な理由
- 需要予測の計測モデルにおいて、鉄道利用者の基礎となる、JASM(TSMC)をはじめとした最新の企業進出や住宅等の開発状況、今後の市町村におけるまちづくり計画等に基づく市町村の鉄道沿線における従業人口(昼間人口)、居住人口(夜間人口)の増加見込みを反映。
【最新の開発状況等を反映した増加見込み】
- 菊陽町:従業人口 +4,124人、居住人口 +7,429人 ※
- 大津町:従業人口 +840人、居住人口 +7,946人 ※
※各町における人口の増加数ではなく、基準時点以降の開発に伴う住宅等(人数ベース)の増加数
- 令和6年3月と5月に、県独自に空港等において「県内での移動手段に関するアンケート調査」を実施し、これまで考慮できなかった、阿蘇くまもと空港を利用して熊本を訪問される方の「道路交通渋滞等に左右されず定時に運行する鉄道の価値(時間信頼性)」を反映した需要予測モデルを構築。
- 空港利用者鉄道分担率:前回 15.7% → 今回 18.4%
<参考:鉄道が直結する他空港における鉄道分担率>
羽田空港:55.4%、福岡空港:48.5%、仙台空港:42.4%、伊丹空港:26.7%、宮崎空港:21.2%
- 豊肥本線の輸送力強化を行うことで、熊本駅から空港までのより利便性の高い運行ダイヤの作成が可能となったため、それに基づく列車の快速運行の導入や所要時間短縮を反映した。
- 快速列車:前回 設定なし → 今回 14本/日(普通列車に比べ約9分速達性が向上)
- 普通列車:前回 49本/日 → 今回 47本/日(豊肥本線 普通 50本/日)