八代市立高田あけぼの保育園

イ草で知られる農業地帯の中に工業と商業が共存する熊本第二の都市、八代市。
地域とのつながりも残る市街地に住民との共同作業で造られたのがこの保育園。
光があふれ、風が通る木造平屋建ての建物は、構造的なオープン性はもちろん、その建築プロセスにおいても徹底的に地域との共生を追求した点で極めてユニークな存在となった。
保母さんや園児たち、地域の人々の声を元にしたデザイン、子どもたちや市民の手によるペインティング。
中庭を配し、壁をなくした広々とした空間がコミュニティにとけ込む園の姿を物語る。
また、屋上のソーラーパネルや雨水の空調への利用など、自然環境をも構成要素として取り込み、さまざまな角度からこの土地との融合を試みている。
建築概要
扱いやすい建物を目指している。同じ天井高の大きなワンルームを、中庭、建具、家具などを用いて遊戯室、保育室などの諸室に分節している。そうすることで、将来変化するであろう保育形態や将来的な建物の用途転用に対応できるようになっている。木製建具は桟と桟との間にパネルを入れられるようにし、必要に応じ、壁的な状態をつくることができる。
屋根構造は角材と合板による斜交格子梁、水平力はスチールのパンチングプレート(掲示板などにも用いられる)で負担している。
設備面では、夏は井戸水を利用し、冬は太陽熱集熱器により暖められた温水を用いたシステムとなっている。

<建築データ>
| 名称 |
八代市立高田あけぼの保育園 |
| ふりがな |
やつしろしりつこうだあけぼのほいくえん |
| 所在地 |
八代市本野町522番地 |
| 主要用途 |
保育園 |
| 事業主体 |
八代市 |
| 設計者 |
みかんぐみ |
| 施工者 |
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| 建築 |
和久田建設 |
| 電気 |
小林・久武建設工事共同企業体 |
| 機械 |
金剛・旭建設工事共同企業体 |
| ソーラー |
金剛・旭建設工事共同企業体 |
| 警備 |
キューネット |
| 外構 |
和久田建設 |
| 遊具 |
ゲルチョップアートワークス |
| 敷地面積 |
3,609平方メートル |
| 建築面積 |
808.10平方メートル |
| 延面積 |
663.47平方メートル |
| 階数 |
地上1階 |
| 構造 |
木造 |
| 外部仕上 |
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| 屋根 |
アルミメッキ鋼板 |
| 外壁 |
不燃処理パイン無垢板材 |
| 施工期間 |
2000年8月~2001年3月 |
| 総工事費 |
200百万円 |
<受賞データ>
| 2001年 |
第7回木材利用大型施設コンクール県木材協会連合会賞 |
<建築家プロフィール>
みかんぐみ
1995年 |
| 加茂紀和子、熊倉洋介、曽我部昌史、竹内昌義、マニュエル・タルディッツのパートナーシップによる建築設計事務所設立 |
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加茂 紀和子(かも きわこ) |
| 1962年 |
福岡県生まれ |
| 1987年 |
東京工業大学大学院修士課程修了後、久米設計 |
| 1992年 |
マニュエル・タルディッツとセラヴィアソシエイツ設立 |
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熊倉 洋介(くまくら ようすけ) |
| 1962年 |
新潟県生まれ |
| 1993年 |
東京都立大学大学院博士課程修了 |
| 1994年 |
熊倉洋介建築設計事務所設立 |
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曽我部 昌史(そがべ まさし) |
| 1962年 |
福岡県生まれ |
| 1988年 |
東京工業大学大学院博士課程修了 |
| 1988年 |
伊東豊雄建築設計事務所 |
| 1994年 |
ソガベアトリエ設立 |
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竹内 昌義(たけうち まさよし) |
| 1962年 |
神奈川県生まれ |
| 1989年 |
東京工業大学大学院修士課程修了 |
| 1989年 |
ワークステーション |
| 1991年 |
竹内昌義アトリエ設立 |
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マニュエル・タルディッツ(Manuel Tardits) |
| 1959年 |
パリ生まれ |
| 1984年 |
ユニテ・ペタゴジック卒業 |
| 1988年 |
東京大学大学院修士課程修了 |
| 1992年 |
加茂紀和子とセラヴィアソシエイツ設立 |
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| 主な作品 |
| NHK長野放送会館、Shibuya-Ax、Kh-2、植柳新町地域学習センター |
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| 受賞歴 |
| 1995年 |
NHK長野放送会館建築設計競技最優秀賞 |
| 2000年 |
第5回くまもとアートポリス推進賞選賞 |
| 2001年 |
Jcdデザイン2001優秀賞 |
Photo:宮井正樹