本文
熊本市営新地団地B
先に建設された熊本市営新地団地Aに次ぐ、新地団地建替計画の第二期目の工事である。
第一期のものとは、色彩もコンセプトも一見違うもののような印象を与えるが、そのじつ、不思議な調和を成している。
広場を中央に配し、それを挟んで、線対称のように2つの住棟が向かいあって建設されている。
居間などの家族が集まる場所を広場に面した形で配し、本来、建物の内部に置かれることのおおかった階段部分を、住棟に張り付けるように設置することによって、人と人とが自然に行き交い、コミュニケーションを図ることのできる場を形成している。
建築概要
あたかも対の鯨が遊泳するような住棟は、波打つファサードと質の違う開口を持つ壁で構成し、長大な退屈を避けた。住棟に挟まれたモールはステージ、住棟は親客席と、全体を劇場に見たてた。そのためにモールに面した部屋がすべて公な空間になるよう、サニタリ一を中央に集約した。
すべての階段をモールと直結し、家族内、団地住民、さらに近隣住民との交流も、それぞれのスケールで保証している。こうして人間達のコミュニティを抱きながら、鯨達は市民の海を東へと目指す。
Photo:清島靖彦
建築データ
名称 | 熊本市営新地団地B |
---|---|
ふりがな | くまもとしえいしんちだんちB |
所在地 | 熊本市清水町新地1917 |
主要用途 | 共同住宅 |
事業主体 | 熊本市 |
設計者 | 緒方理一郎 |
施工者 | |
建築 | 多々良+富重建設+太平建設JV、三ツ矢建設+近田建設+作村技建工業JV |
電気 | 白鷺電気工業+一電業社JV、西日本電工+旭電気設備JV |
衛生 | 誠工社+日栄工業JV、協電機工+永田冷機工業所JV |
敷地面積 | 17,196m2 |
建築面積 | 3,802m2 |
延面積 | 16,179m2 |
階数 | 地上5階 |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
外部仕上 | |
屋根 | 露出シート防水 |
外壁 | コンクリート下地リシン吹付、コンクリート打放し |
施工期間 | 1990年12月~1992年3月 |
総工事費 | 2,551百万円 |
建築家プロフィール
緒方 理一郎(おがた りいちろう)
1941年 熊本市生まれ
1966年 日本大学理工学部卒業
大坪・山村建築設計事務所入所
1971年 緒方理一郎建築研究所設立
1990年 没
主な作品
由井邸、川の塔#1、川の塔♯2、川の家、上通コミュニティマート構想、コート93、水俣病歴史考証館、創元社