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熊本市営新地団地C

熊本市営新地団地の第3期工事である。
緩やかな斜面に計画されたこの団地は、新地団地A・Bと同様、都市的スケールの長大なファサードを持つ。
東西1kmにおよぶ細長く広大な敷地を持つ新地団地の中央に位置し、西地区と東地区を結び付けるように住棟の途中で屈曲している。
この団地では、都市に残された数少ないまとまった敷地を地域に解放し、街づくりの拠点にするための工夫がなされている。
建築概要
歩道を歩く人には北側への視界を開き、地域の人たちにはコミュニティの場を提供するため、東西で10mある敷地の高低差を利用し、建物を浮かせてピロティとしている。その他にも公園のような空間をつくり、公共建築のあり方を提案している。
住棟のしくみとしては、建替前の住環境を形成していた"小さな界隈"の再現として北側廊下から階段室でアプローチする通り庭的空間を抜け、居間と一体になったテラスを用意している。
構造的には、建物の南北面を住棟全体の壁梁とし、それに直交する戸境の耐力壁と厚さ25cmの無梁板によってコンクリートの箱を形成し、上下階の遮音性の向上と将来の住戸プランの容易な変更を可能にしている。


Photo:石丸捷一、KAP事務局
建築データ
| 名称 | 熊本市営新地団地C |
|---|---|
| ふりがな | くまもとしえいしんちだんちC |
| 所在地 | 熊本市清水町新地1917-58 |
| 主要用途 | 共同住宅 |
| 事業主体 | 熊本市 |
| 設計者 | 富永譲 |
| 施工者 | |
| 建築 | 水上建設・マコト建設・井手工務店・中九州建設JV |
| 電気 | 東邦電気工業、西鉄電設工業 |
| 給排水 | 飯塚電機工業、三祐工業 |
| 昇降機 | 日立製作所 |
| ガス | 西部ガス |
| 植栽 | 武蔵造園 |
| 敷地面積 | 12,555m2 |
| 建築面積 | 3,421m2 |
| 延面積 | 17,877m2 |
| 階数 | 地下1階、地上7階、塔屋1階 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 |
| 外部仕上 | |
| 屋根 | シート防水 |
| 外壁 | 磁器タイル、リシン吹付 |
| 施工期間 | 1991年12月~1993年10月 |
| 総工事費 | 3,177百万円 |
建築家プロフィール

| 富永 譲(とみなが ゆずる) | |
| 1943年 | 台湾台北生まれ |
| 1967年 | 東京大学工学部建築学科卒業、菊竹清訓建築設計事務所入所 |
| 1973年 | 東京大学工学部建築学科助手 |
| 1979年 | 富永譲+フォルムシステム設計研究所設立、日本女子大学・武蔵野美術大学・東京芸術大学講師 |
| 主な作品 奈良シルクロード博飛火野会場、早稲田ゼミナール所沢校、川崎市大山街道ふるさと館、茨城県営長町アパート、長野冬季五輪選手村、山形県平田町タウンセンター |
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