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阿蘇・散墨園
この作品は、新しいかたちのアートを通して、公共空間の提案が求められた「阿蘇町農村公園アート・プロジェクト・コンペティション」で実現した。
作品の舞台は、阿蘇山のカルデラ、人々の生活する世界最大の火山がつくりだした窪みのなか。
南に火口を含む阿蘇五岳、他の三方には外輪山が望まれる。
一面に広がる田園に、三つの塚が離れ小島のように浮かんでいる。
その塚のひとつを抱くかたちで「阿蘇農村公園・あぴか」はつくられ、屋外スポーツ施設群、イベント広場、いこいの森などで構成されている。
その一角がこの計画に与えられた。
この作品は、巨大な炭のように黒く焼かれた丸太が、漂うように飛散した様から「阿蘇・散墨園」と命名された。
建築概要
敷地全体を覆う敷砂利。
細長く、湾曲する築山。
規則正しくグリッド状に埋め込まれ、阿蘇の火口方向を指し示す、鋳物の反射盤。
無数に散乱する、黒く焼かれた丸太。
阿蘇の地域的特性から容易にイメージされる遠大な時空間が、この四つの要素を重ね合せ、構成することで、表現されている。
そして、ここを訪れた人は、周囲の景色と各要素が織り成す空間を眺め、さまよい、また、佇んだり、休んだりすることができる。と同時に、阿蘇の山並や木々、光や風や雨水を新しく感じ取れるように、仕掛けられている。
PHOTO:宮井政次
建築データ
名称 | 阿蘇・散墨園 |
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ふりがな | あそ・さんぼくえん |
所在地 | 阿蘇市黒川灰塚尻656 |
主要用途 | 公園 |
事業主体 | 阿蘇町(現・阿蘇市) |
設計者 | 堀正人 |
施工者 | 森工業 |
敷地面積 | 5,330平方メートル |
施工期間 | 1997年11月~1998年3月 |
総工事費 | 41百万円 |
建築家プロフィール
堀 正人(ほり まさと) | |
1957年 | 新潟県、柏崎市に生まれる。 |
1980年 | 東京芸術大学建築科卒業。 |
1982年 | 同大学建築科修士課程修了。 |
1982年~90年 | 磯崎新アトリエ勤務。 |
1984年~95年 | スペイン、バルセロナに住む。主に、オリンピック施設・スポーツホールの仕事に従事。 |
1991年 | バルセロナにてHori&Okabe Architectsを開設。インテリアや住宅などをスペイン及び日本で手掛ける。 |
1995年 | 日本に拠点を移し、堀アーキテクツを開設。 |
1996年 | 多摩美術大学非常勤講師。 |
主な作品 バルセロナの日本レストラン2店『石庭三彩』・『剣』、川口市鋳物建材のショールーム、カネット子ども美術館計画、広島県総領町木屋地区周辺整備アースワークデザイン計画 |