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みんなでつくる「みんなの家」づくり(西原村小森仮設団地)
西原村小森第2のみんなの家(集会所)
PHOTO/針金洋介
建築概要
日本建築家協会九州支部熊本地域会が推薦した地元建築家ユニット『kulos』が設計を担当した。建築家のやるべきことを限定するため屋根は切妻と割り切ることで、被災者に寄り添った設計を進めた。住民との意見交換会では、縁側のある風景を写真で紹介し、暮らしの風景を共有しながら建築のカタチにした。壁のないスタディ模型を示しながら意見交換を始めると、利用者の開放性への理解が高く、「鍵をかけなくてもいい、いつでも使えるみんなの家がよい」という意見でまとまった。住民とともにつくった「みんなの家」は大切に使われ、復興後の移築の話まで出ている。地元建築家だからできるサポートをこれからも続けていきたい。
建築家プロフィール
大谷 一翔(おおたに いっしょう)
1985年鹿児島県生まれ/2007年崇城大学工学部建築学科卒業/現在、大谷一翔建築設計事務所代表
柿内 毅(かきうち たけし)
1972年熊本県生まれ/1996年熊本工業大学建築学科卒業/現在、トポスペース建築研究所代表
堺 武治(さかい たけはる)
1968年熊本県生まれ/1992年職業訓練大学校建築科卒業/現在、堺武治建築事務所代表
坂本 達哉(さかもと たつや)
1972年熊本県生まれ/1994年熊本工業大学建築学科卒業/現在、坂本達哉建築設計事務所代表
佐藤 健治(さとう けんじ)
1974年熊本県生まれ/1993年熊本YMCA学院建築学科卒業/現在、SPACELAB一級建築士事務所代表
長野 聖二(ながの せいじ)
1971年大分県生まれ/1996年熊本大学建築学科卒業/現在、長野聖二建築設計處代表取締役
原田 展幸(はらだ のぶゆき)
1973年熊本県生まれ/1996年熊本工業大学建築学科卒業/現在、ライフジャム一級建築士事務所代表取締役、kulos代表
深水 智章(ふかみず ともあき)
1977年熊本県生まれ/1999年熊本工業大学工学部建築学科卒業/現在、深水建築設計事務所代表
藤本 美由紀(ふじもと みゆき)
1973年熊本県生まれ/1998年熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修了/現在、フジモトミユキ設計室代表
山下 陽子(やました ようこ)
1974年山口県生まれ/1995年国立有明工業高等専門学校建築学科卒業/現在、株式会社u.hアーキテクツ代表取締役
黒岩 裕樹(くろいわ ゆうき)
1980年熊本県生まれ/2013年熊本大学大学院自然科学研究科環境共生工学専攻博士後期課程修了/現在、黒岩構造設計事ム所代表取締役
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写真提供 坂本達也建築設計事務所/kulos
※撮影 針金洋介
建築データ
名称 西原村小森第2のみんなの家(集会所)
所在地 阿蘇郡西原村小森3157-1
施工期間 2016.08~2016.12
設計 大谷一翔+柿内毅+堺武治+坂本達哉+佐藤健治+長野聖二+原田展幸+深水智章+藤本美由紀+山下陽子/kulos+黒岩裕樹
((公社)日本建築家協会九州支部熊本地域会推薦)
施工 (株)かずやハウジング
構造 木造
階数 平屋
建築面積 79.14平方メートル
延べ面積 54.65平方メートル
協力 木村設備設計事務所、KASEIプロジェクト、資材提供/(照明)株式会社遠藤照明、(空調機器)旭電業株式会社、(ガラス)出田実業株式会社、(塗料)オスモ&エーデル株式会社、(衛生機器)TOTO九州販売株式会社、(樋)株式会社タニタハウジングウェア
西原村小森第3のみんなの家(集会所)
建築概要
「誰でも気軽に立ち寄れるようにしたい」などの利用者の意見を踏まえ、土足のまま入れる全面板土間案を採用した。可動式の置き畳やテーブルなどの家具で自由なレイアウトを可能にしたことで、普段使いだけでなくイベントや展示会場など、さまざまな形で利用されている。トイレは、隣接する店舗との動線も考慮して、まわりの目を気にせず使うことができるよう外部から利用できるようにした。外部には木製のデッキと芝生が配置され、春には桜の下で子どもたちが遊ぶ姿を眺めることができるだろう。
建築家プロフィール
山室 昌敬(やまむろ まさたか)
1971年熊本県生まれ/1995年熊本工業大学建築学科卒業/現在、セルアーキテクト代表取締役
松本 義勝(まつもと よしかつ)
1981年熊本県生まれ/2004年東海大学建築学科卒業/現在、マック代表取締役
梅原 誠哉(うめはら せいや)
1988年ミャンマー生まれ/2011年東海大学産業工学部建築学科卒業/2011~16年マック設計部
佐竹 剛(さたけ ごう)
1978年熊本県生まれ/2003年熊本大学大学院自然科学研究科建築学専攻修了/現在、游建築設計事務所
河野 志保(かわの しほ)
1990年熊本県生まれ/2016年熊本大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了/現在、游建築設計事務所
本 幸世(もと さよ)
1991年熊本県生まれ/2016年熊本大学大学院自然科学研究科博士前期課程修了/現在、セルアーキテクト
谷口 規子(たにぐち のりこ)
1976年熊本県生まれ/2000年豊橋技術科学大学大学院工学研究科修士課程修了/現在、ビルド総合設計 代表取締役
山田 大介(やまだ だいすけ)
1982年熊本県生まれ/2015年熊本YMCA学院建築学科卒業/現在、株式会社グリーン設計勤務
写真提供 設計者
建築データ
名称 西原村小森第3のみんなの家(集会所)
所在地 阿蘇郡西原村小森3157-1
施工期間 2016.08~2016.12
設計 山室昌敬+松本義勝+梅原誠哉+佐竹剛+河野志保+本幸世+谷口規子+山田大介((一社)熊本県建築士事務所協会推薦)
施工 (株)グリーン住宅
構造 木造
階数 平屋
建築面積 77.03平方メートル
延べ面積 56.92平方メートル
協力 KASEIプロジェクト、資材提供/(照明器具)東芝ライテック株式会社、(照明器具)株式会社古荘本店、(ルームエアコン、室外機設置架台)空研工業株式会社
西原村小森第4のみんなの家(集会所)
建築概要
不要になった本を募り、運営方法や本のレイアウトの検討など住民の方々と一緒に考えながら、“みんな”が集える「本の家」をつくりあげることができた。今回の計画では三つの基本方針をもとに、ワークショップで要望や意見を取り入れながら設計した。一つ目は、みんなが利用できるよう、様々な目的や立場の人が一つの空間を共有できる場とすること。二つ目は、断面寸法を抑え、災害時に材料が容易に確保できる杉の流通材で架構をすることで、次なる規格型へのケーススタディとして汎用性があり今後も活用できるデザインとすること。三つ目は、屋根・壁材・床材・天井材等の全てを乾式工法で構成し、再利用できる素材・工法とすることで、仮設としての役割を終えた後に移設などで再利用が可能な計画とすることである。
建築家プロフィール
甲斐 健一(かい けんいち)
1975年熊本県生まれ/1998年長崎大学構造工学科卒業/現在、甲斐構造設計事務所代表
田中 章友(たなか あきとも)
1979年熊本県生まれ/2003年崇城大学大学院建設システム開発工学専攻修士課程修了/現在、産紘設計
丹伊田 量(にいだ りょう)
1981年熊本県生まれ/琉球大学工学部環境建設工学科卒業/現在、ロゴス設計同人
志垣 孝行(しがき たかゆき)
1984年熊本県生まれ/2011年熊本大学自然科学研究科博士前期課程卒業/現在、志垣デザイン店
木村 秀逸(きむら しゅういち)
1975年熊本県生まれ/1998年熊本学園大学卒業/現在、(有)木村設備設計事務所取締役部長
写真提供 設計者
建築データ
名称 西原村小森第4のみんなの家(集会所)
所在地 阿蘇郡西原村小森3157-1
施工期間 2016.08~2016.12
設計 甲斐健一+田中章友+志垣孝行+丹伊田量+木村秀逸((公社)熊本県建築士会推薦)
施工 (株)丸山住宅
構造 木造
階数 平屋
建築面積 69.85平方メートル
延べ面積 56.62平方メートル
協力 昭和女子大学杉浦研究室、熊本県立熊本工業高校インテリア科、KASEIプロジェクト、資材提供/(輻射式冷暖房機器)株式会社エコファクトリー、(エアコン)出田実業株式会社、(照明器具)東芝ライテック株式会社・株式会社古荘本店、(椅子)熊本工業高校インテリア科
西原村小森仮設団地でみんなでつくる「みんなの家」が完成!(平成28年12月10日)
~みんなでお祝い!3棟合同完成イベントを開催しました!~
西原村小森仮設団地で、仮設団地に入居されている方々の意見を反映した「みんなの家」が3棟完成したことをお祝いして、合同完成イベントを開催しました。
3棟の真ん中に位置する第3団地「みんなの家」の前で合同完成式を開催し、その後第4団地、第2団地と移動して、それぞれ完成式を行いました。
西原村の日置村長をはじめ、資材提供いただいたみなさまや、設計段階の意見交換会から参加いただいた入居者の方々も出席いただき、一緒に完成をお祝いすることができました。
また、式では、村立西原中学校吹奏楽部と碧落アンサンブルのよる演奏や、みんなの家の表札を揮毫いただいた熊本市立必由館高校の生徒さんの表札の設置、自治会長さんも一緒に桜の植樹、熊本工業高校からの椅子の贈呈なども行い、参加者から盛大な拍手が贈られ大変盛り上がりました。
みんなの家の広場では、KASEI(九州大、西日本工業大、佐賀大)によるワークショップも開催され、被災した地域にあったツツジの移植や、芝張り、豚汁の振る舞いなどもありました。子どもたちは、新しくできたみんなの家を走り回ったり、3棟のみんなの家を周るスタンプラリーに大喜びで一緒に楽しんでいただけました。
これら3棟のみんなの家は県内の建築家のみなさんに設計していただきました。
各みんなの家をご紹介します!
西原村小森第2のみんなの家(集会所)
設計/大谷一翔+柿内毅+堺武治+坂本達哉+佐藤健治+長野聖二+原田展幸+深水智章+藤本美由紀+山下陽子/Kulos+黒岩裕樹
施工/(株)かずやハウジング
開放的な大きな窓と建物を廻る縁側があるこのみんなの家では、早速子どもたちが楽しそうに走り回っている様子が印象的でした。建物全体が子どもたちの遊び場となっていて、自然と人が集まり、縁側に腰掛けおしゃべりが始まります。入居者の方の意見を反映した大きなキッチンも設け、大人数での集会やイベントも可能。夜には、窓から淡い光が漏れ、仮設団地を照らす灯篭のようです。
西原村小森第3のみんなの家(集会所)
このみんなの家は、下足のまま気軽に立ち寄れる板土間となっており、可動式の畳とベンチにより様々な使い方が可能です。柔らかい照明により木の温かさが際立ち、とても居心地の良い空間となっています。みんなの家に隣接して店舗の建設もはじまり、店舗との行き来も考慮したデッキの計画や、外部から利用できるトイレなど随所に配慮がなされています。
西原村小森第4のみんなの家(集会所)
「本の家」がテーマのこのみんなの家は、本を手にお茶を飲みながら語らえる空間に加え、子どもたちの勉強スペースもあります。昭和女子大学のご協力により、『ホンノバ・プロジェクト』で集まった本と、このみんなの家に合わせて学生たちが製作した本棚やテーブルを提供していただきました。また、県立熊本工業高校からはインテリア科の生徒たちが製作した椅子を提供いただきました。これらの家具とみんなの家が見事にマッチし、まるでブックカフェのよう。入居者の方にも本の設置を手伝ってもらいました。
参加いただいた入居者のみなさんは、
「新しくできたみんなの家に毎日通いたい!」「ここでお花見がしたい!」「広場で子どもたちが遊べるようにしたい!」などなどこれからの活用を心待ちされています。
入居者のみなさんに大いに活用され、入居者のみなさんによってますます彩られていく「みんなの家」になることでしょう。
引き続き、みんなの家を活用した取組みや広場づくりなどの仮設団地の住環境整備を進めていきます。
今後の取組みも要チェック!!
くまもとアートポリスフェイスブックでも「みんなの家」に関する情報を発信しています。
アクセスはこちらから!⇒くまもとアートポリス公式フェイスブック<外部リンク>
「みんなの家」の広場づくりのアイデア交換会を開催!(平成28年12月4日)
西原村小森仮設団地にまもなく完成する3棟の「みんなの家」の前の広場を今後有効に活用していただくために、KASEI(九州大、西日本工業大、佐賀大)・設計者と入居者の皆さんとのアイデア交換会が開催されました。
この「みんなの家」の設計を進めるにあたり開催した意見交換会の中で、入居者の皆さんから「子どもが遊べる広場がほしい」「広場に緑がほしい」という意見も出されたことから、広場をどう活用したいかアイデアを出し合い、「みんなの家」の完成式に併せて入居者のみなさんと一緒に広場づくりに取り組みます。
この日は、広場の活用方法や寄贈される桜を植える位置について話し合い、子どもたちからも「広場でサッカーがしたい。」「卓球がしたい」などたくさんの意見をが出されました。
途中、桜を寄贈いただいたドイツの光学機器メーカー「カールツァイス社」のベンジャミンさんや、クライン ダイサム アーキテクツのマークさんにもご参加いただき、大変盛り上がりました。
話し合いの結果、第2団地ではボール遊びをしても危険がないよう、道沿いにツツジの植樹を、第3団地では桜の樹の周りに芝張りを、第4団地では位置を決めた桜の周りのデザイン検討会を「みんなの家」の完成式の日に実施することになりました。
どのような”みんなの広場”になるのか楽しみです!
「みんなの家」合同上棟イベントを開催!(平成28年10月30日)
~西原村小森のみんなでつくる「みんなの家」3棟が上棟~
西原村小森仮設団地では、仮設団地に入居されている方々の意見を反映した「みんなの家」の建設が急ピッチで進んでいます。
小森仮設団地は、第1から第5団地まで312戸が建ち並ぶ大規模な団地で、3棟のみんなの家が建設中です。
10月30日に、みんなの家の棟上げをお祝いするイベントとして、設計者や施工者、KASEI(長崎大、九州大、西日本工業大、佐賀大)の皆さんが餅投げと焼き芋会を開催しました。
入居者のみなさんには、お住まいの団地に関係なく、それぞれの餅投げイベントに参加され、「出来上がるのが楽しみ、早く使いたい!」「お餅たくさんとれたよ!」など、ご高齢の方から子どもたちまで楽しんでいただけました。大規模な団地なので、普段あまり顔を合わせる機会のない子どもたちも、このイベントで友達になれたようです。
また、西原の畑でとれたシルクスイート(さつまいも)を使った焼き芋は、長蛇の列ができるほど大盛況で、焼き芋を食べながら団欒されたり、KASEIのみなさんと子どもたちが一緒に遊んだり、さらには、どのようなことに困っているのかなど今後の活動に繋がるお話も伺うことができました。
みんなの家の工事もいよいよ大詰めです。
完成をお楽しみに!!
西原村小森仮設団地でみんなでつくる「みんなの家」 意見交換会(2回目)!(平成28年8月10日)
~西原村小森仮設団地で意見交換会(2回目)を開催~
8月3日(水曜日)の意見交換会に続き、8月10日(水曜日)に西原村小森仮設団地で「みんなの家」の設計について、2回目の意見交換会を開催しました。
前回いただいたご意見を反映した設計案を設計者が模型などで説明された後、改めて入居者の皆さんから設計案に対するご意見やご要望をお聞きしました。
各集落で行われていた行事について年表に書き込んだり、どういう手すりが使いやすいかについて討論したりと、入居者のみなさんが実際に活用することを具体的にイメージして意見交換を行うことができました。
今回も、KASEI(※)のメンバー(九州大、西日本工業大、佐賀大の皆さん)にご参加いただき、ワークショップ形式の意見交換では各グループに入ってもらい、入居者の皆さんから多くの意見を引き出してもらえました。
※ KASEI(加勢)・九州建築学生仮設住宅環境改善プロジェクト
Kyushu Architecture Students Supporters Environment Improvement Project
今回で意見交換は終了となり、設計案をまとめ工事に進んでいきます。乞うご期待!!
西原村小森仮設団地でみんなでつくる「みんなの家」 意見交換会!(平成28年8月3日)
~地元建築家とつくる「みんなの家」づくりがスタート!~
仮設住宅の入居者の方々と設計者(※1)とが意見交換しながら、皆さんの意見を取り入れた設計を行う、オリジナルのみんなの家づくりを西原小森団地でスタートしました。具体的には、設計者が模型などで設計案を説明し、利用方法や間取りなどへの要望を聞きながら設計に反映していきます。
※1 設計者は、アートポリスコミッショナーの伊東豊雄氏からの推薦に基づき決定しています。
小森団地は第1団地から第4団地、計302戸の大規模な団地で、仮設住宅の建設とあわせて各団地に1棟ずつみんなの家を建設しました。
第2団地から第4団地は、80戸以上の住宅があることから、それぞれの団地のみなさんの意見を取り入れたオリジナルのみんなの家をもう1棟ずつつくっていきます。
設計は、熊本県内の建築家で構成した3グループが担当します。
第2団地:日本建築家協会九州支部熊本地域会推薦建築家グループ(11名)
第3団地:熊本県建築士事務所協会推薦建築家グループ(8名)
第4団地:熊本県建築士会推薦建築家グループ(5名)
設計はもちろんのこと、建ってからこそ地元ならではの強みを活かした関わり方で力になっていきたいと、心強い意気込みで臨んでいただいています。
今回開催した意見交換会では、模型などで設計案を説明した後、いくつかのグループに分かれて入居者の皆さんから設計案に対するご意見や、こうしてほしいなどのご要望をお聞きしました。
また、今後仮設団地における住環境の改善、向上に取り組んでいただくKASEI(※2)のメンバー(九州大、西日本工業大、佐賀大の皆さん)にもご参加いただき、団地全体のご意見を聞くなどして意見交換会を盛り上げていただきました。
※2 KASEI(加勢)・九州建築学生仮設住宅環境改善プロジェクト
Kyushu Architecture Students Supporters Environment Improvement Project
今後どのように活用していきたいか、どのような使い方ができるかを想像しながら、たくさんの意見をいただくことができました。
早速、8月10日(水曜日)午後7時から2回目の意見交換会を開催し、ご意見を反映させた設計案をご提案します!