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菊池市街地ポケットパーク
建築概要
菊池市中心市街地は、かつての街並みが残る親密なスケールを持ったまちです。戦後は温泉観光地として賑わい、現在もまちを巡る水路とともに温泉は重要な資源です。そこにいくつかの公園を整備することで、まちなかを歩いて巡る歩行者ネットワークのポイントをつくり、新たな人の流れを生み出そうとしました。整備をした2つの公園には、それぞれ温泉や水路水を利用した親水機能を設け、訪れる人の交流・滞留の場として親しまれるよう計画しました。
切明公園は、まちの入口となる場所に位置します。くぼんだ地面に水が自然と溜まってできた湖や池をモチーフに、水路から引き込んだ水と温泉で親しみやすい浅い水盤を3つ設けました。また、白い石を固めた舗装の上に鉄板で組み立てた(石や岩に見える)公衆トイレやベンチを、人の動きを誘発するよう配置していきました。
横町公園は住宅地の中にあるため、住民のための日常的な公園として位置づけました。人の流れや交流をテーマに、パイプを曲げて積み上げた「バンク」が足湯・公衆トイレ・ベンチなどをかたちづくります。バンクは人の動きや活動のガイドとなって、敷地全体に渦のような模様を描いていきます。また、まちなかに少ない樹木を植え、緑色の石を固めた舗装と合わせて緑が印象に残るようにしました。
いずれの公園もまちなかを歩いて巡るその動きをつなげるように、公園内もぐるぐると歩いて巡れる計画にしています。
建築データ
切明
名称 切明ポケットパーク
ふりがな きりあけぽけっとぱーく
所在地 熊本県菊池市隈府495-1
主要用途 公園
事業主体 菊池市
設計者 塩塚隆生アトリエ
施工者 株式会社七城建設
敷地面積 273.59平方メートル
建築面積 14.10平方メートル
延床面積 24.36平方メートル
階数 地上1階
構造 鉄骨造
外部仕上 スチール亜鉛メッキ+リン酸処理
施工期間 2011年11月~2012年3月
総工事費 32百万円
横町
名称 横町ポケットパーク
ふりがな よこまちぽけっとぱーく
所在地 熊本県菊池市隈府167-17
主要用途 公園
事業主体 菊池市
設計者 塩塚隆生アトリエ
施工者 豊住建設
敷地面積 265.85平方メートル
建築面積 15.28平方メートル
延床面積 24.67平方メートル
階数 地上1階
構造 鉄骨造
外部仕上 スチール亜鉛メッキ+リン酸処理
施工期間 2011年11月~2012年3月
総工事費 31百万円
建築家プロフィール
塩塚 隆生(しおつか たかお)
1965年 福岡県生まれ
1988年 大分大学工学部建設工学科卒業
1990年 大分大学大学院修士課程修了
1994年 一級建築士事務所塩塚隆生アトリエ設立
1999年 株式会社塩塚隆生アトリエ代表取締役
2002年~2011年 大分大学工学部非常勤講師
2004年~2008年 九州大学芸術工学部非常勤講師
2012年~ 大分大学工学部福祉環境工学科建築コース客員教授
主な作品、受賞
2001年 2001年度グッドデザイン賞(国見:みんなんかん)
2002年
JCDデザイン賞2002
奨励賞(大野町のバスターミナル)
2004年 日本建築学会作品選集(入江のゲストハウス)
2007年 第7回JIA熊本住宅賞(城下町の住宅)
2008年 第13回くまもとアートポリス推進賞(城下町の住宅)
2009年
DETAIL・PRIZE2009(ドイツ)大賞ファイナリスト
(SILENT HOUSE)JCDデザインアワード2009
銀賞(PLATFORM01・02)
2012年
日本建築学会作品選集(SILENT HOUSE)
日本建築家協会優秀建築選2011(SILENT HOUSE)
工事現場の様子
平成24年(2012年)3月
平成24年(2012年)4月2日から、いよいよ使用開始です。
【切明】
鉄骨工場で製作された足湯のシェルターやトイレが現場へ運び込まれ、設備機器の取り付けや床面の仕上げを終えて、いよいよ完成しました。
桜満開の菊池のまちを楽しんだあとは、足湯でゆったり過ごされてはいかがでしょうか。
【横町】
横町も、植栽を終えて完成です。
菊池秋祭り恒例の打ち上げ花火を見るには絶好の場所になるのでは、と地元の方がおっしゃっていました。隠れスポットになるかもしれません。
平成24年(2012年)3月25日
【切明】
水盤の石貼り、足湯上屋のシェルターも最終段階です。
公衆トイレの内装工事を行っている様子です。
【横町】
ベンチなどが取りつけられるバンクを組み立てている状況です。
平成24年(2012年)3月22日
【切明】
公衆トイレの外枠が現場に到着。
半分ずつ工場で加工されたものを、現場でひとつにします。
水盤となる床の石貼りを行っています。
【横町】
浸透性舗装工事を行っているところです。
平成24年(2012年)3月13日
【切明】
足湯上屋のシェルターになる部分。鉄骨工場で検査を行いました。
平成24年(2012年)3月12日
【切明】
足湯となる水盤に、ベンチの柱と階段が取り付けられました。
鉄骨工場で検査を終えた上屋が、メッキリン酸処理を終えていよいよ現場に登場。
足湯の屋根
トイレ
平成24年(2012年)3月6日
【切明】
サインを検討中。一目で分かりやすいよう、ピクトグラムと文字を併用しています。
【横町】
うずまき状のバンクが入る穴があきました。
平成24年(2012年)2月
平成24年(2012年)2月21日
【横町】
鉄骨工場での検査が行われました。
下の写真は公衆トイレとなる部分です。曲げられた大きな2枚の鉄板が、なめらかに溶接されています。(壁面の色が変わっている部分が溶接部)
下の写真は足湯の上屋です。
トイレ、足湯の上屋とも、今後亜鉛溶融メッキを施し、リン酸処理を行って、現場へ運搬されます。
平成24年(2012年)2月15日
【切明】
水盤の捨てコン打ちを行っているところです。
【横町】
手前が足湯、奥が公衆トイレ部分です。現在上屋の鉄骨を工場で製作中です。
平成24年(2012年)1月
平成24年(2012年)1月20日
【切明】
石積みが3段目まで進みました。迫間(はざま)石という、地元産の石を使っています。
【横町】
公衆トイレは配筋工事が進みました。
足湯付き休憩スペースができるところも、配管工事が完了しています。
平成24年(2012年)1月13日
【切明】
水路上にあった橋の撤去作業が終了し、擁壁できれいに整えられました。
間知石の積み上げが始まりました。
現場で他の石との重なり具合を確認しながら、職人さんの手でひとつひとつ石の形が整えられ、積み上げられていきます。
【横町】
公衆トイレが出来上がる場所です。配管工事が進みました。
平成24年(2012年)1月6日
【切明】
公衆トイレの地下ピットのコンクリート打設が完了し(写真左)、水路上の橋の撤去工事も始まりました(写真右)。
敷地に大きな穴が2つあきました。手前には足湯、奥には公衆トイレを造っていきます(写真は12月末現在)。
平成23年(2011年)12月
平成23年(2011年)12月21日
【切明】
水路側には擁壁が立ち並び、トイレは基礎配筋が完了しました。
【横町】
敷地に残されていたコンクリートの塊が取り除かれ、整地されました。
菊池ポケットパーク着工
平成23年(2011年)11月29日
平成23年11月、菊池ポケットパークがいよいよ着工しました。
切明地区、横町地区とも、縄張りが完了しています。
切明
横町
設計過程
2008年10月27日 プロジェクト決定
2008年12月12日 まちづくり戦略ワークショップ「まちの記憶を未来に繋ぐ」
(「くまもとアートポリス建築展2008」のなかで開催)
※住民と一緒に行う「わいふの今昔地図」の作成を通じて、まちの時間の流れを含めた全体像を浮かび上がらせ、隈府の今と昔の良さを再発見しました。これは、記憶=遺産をこれから生まれる未来のまちなみデザインへと繋げる協同作業であり、この成果は、ポケットパークデザインのアイディアを生むヒントとして活用されました。
2009年2月2日 全体住民説明会(3地区住民と行政、設計者)
2009年4月2日~7 各地区での説明会
2009年7月29日 住民説明会(横町地区住民と行政、設計者)
2009年9月2日 全体住民説明会(3地区住民と行政、設計者)
2009.9 基本設計完了
2010.2 実施設計完了(予定)
2010年2月7日 アートポリスシンポジウムin菊池の開催
2011.11 切明地区、横町地区の工事着工
完成パース図
切明ポケットパーク
横町ポケットパーク
※設計段階に作成したもので、一部変更の可能性もあります。
設計者・塩塚隆生氏からのコメント
塩塚 隆生/塩塚隆生アトリエ
菊池ポケットパーク整備事業は、2008年10月から始まり、住民とのワークショップやシンポジウムを経て2010年3月に設計を終えました。その後昨年(2011年)11月に着工し、この3月の完成を目指して工事を進めています。
菊池市中心市街地は、かつての街並みが残る親密なスケールを持ったまちです。そこにいくつかの公園を整備することで、まちなかを歩いて巡る歩行者ネットワークのポイントをつくり、新たな人の流れをつくり出そうとするものです。工事を進めているのは2箇所で、それぞれ足湯や水路などの親水機能を設け、訪れる人の交流・滞留の場として、また地域住民の憩いの場として親しまれるよう計画しています。
切明(きりあけ)公園では、くぼんだ地面に水が自然と溜まってできたようなプリミティブな風景を、3つの水盤と石や岩を連想させる公衆トイレ・ベンチ・シェルターによってつくりだします。
横町公園では人の流れや交流をテーマに、パイプを曲げて積み上げた「バンク」が足湯・公衆便所・ベンチなどをかたちづくりながら、人の動きや活動のガイドとなって敷地全体に渦のような模様を描いていきます。
いずれもまちを歩いて巡ることと連動することで、菊池を体感してもらおうとするものです。
菊池市街地ポケットパークは、訪れる人の交流・対流の場として、また地域住民の憩いの場として、面的な出会いの空間の創出を目指し、歩行者ネットワークの主要ポイントで計画されました。
足湯や水路などの親水機能など、菊池の文化や自然<水>とのふれあいができる特色ある施設整備が望まれています。