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宇城市豊野小中学校
建築概要
豊野小中学校は、小学校の建て替えにあたって、近隣の中学校敷地・校舎を活用して増改築を行った施設一体型の小中一貫校である。特別教室や体育館を共用して効率的に整備を行うと共に、一貫教育により不登校などの中一ギャップへ対応する教育上の効果も期待された。既存中学校は、耐震補強および部分改修を行っている。設計は、小泉アトリエとSDA建築設計の共同企業体があたった。
中学校敷地には2列に並行配置された校舎棟と体育館棟が存する。新たな校舎はその残余となる隙間を充填するような形となる。結果として、既存構築物の外形を包絡する柔らかな曲線で囲まれた平面形状となっている。その平面に、緩やかな起伏を持つ一枚の屋根を架けている。起伏は株の機能に沿った天井高さから導き出されたものである。屋根は一方向に木造の集成材の針を架け渡しており、校舎内のどこにいても、いろいろな方向に伸びていく屋根が見えてくる。拡がりが感じられると同時に、一つ屋根の下という感覚を生み出し、児童・生徒の一体感を醸成する屋根である。
この柔らかい曲線でスペースを囲い込んでいく形式は、時間軸を見据えたものでもある。次の中学校校舎の建て替えの際には、今回建設された校舎の外側に、従前の校舎の痕が残されることとなる。
新旧の建物を物理的につなぎ、小学生と中学生の気持ちをつないでいく。そして未来へと記憶をつないでいく役割を果たす、「つなぐ」学校建築である。
建築データ
名称 宇城市豊野小中学校
所在地 宇城市豊野町糸石3536番地
主要用途 小学校・中学校
事業主体 宇城市教育委員会
設計者 小泉雅生+SDA建築設計事務所
施工者
- 建築:(1期工事)増永組、(2期工事)戸田・武末特定建設共同企業体
- 電気・空調・衛生:九電工、外構:奥村建設
敷地面積 27,408.12平方メートル
建築面積 4,204.76平方メートル
延べ面積 5,169.82平方メートル(一部改修含む)
階数 地上1階(改築棟)、地上2階(改修)
構造 鉄筋コンクリート一部鉄骨造(躯体)+木造(屋根)
仕上げ
- 屋根:ステンレスシーム溶接工法
- 軒裏:繊維混入ケイ酸カルシウム板
- 外壁:コンクリート打ち放し補修+含浸系着色撥水材、化粧型枠コンクリート打ち放し+含浸系着色撥水材、窯業系サイディング+含浸系着色撥水材、レンガタイル
施工期間
1期工事:2012年1月~2012年4月、2期工事:2012年4月~2013年3月
総工事費 57百万円(1期)、750百万円(2期)
建築家プロフィール
小泉雅生(こいずみまさお)
1986年 東京大学大学院在学中にシーラカンスを共同設立
1988年 同大学院修士課程修了
2001年~ 東京都立大学大学院助教授
2005年 小泉アトリエ設立
2010年~ 首都大学東京大学院都市環境科学研究科建築学助教授、博士(工学)
主な作品
アシタノイエ、戸田市立芦原小学校、千葉市美浜文化ホール・保健福祉センター、象の鼻パーク/テラス、LCCM住宅デモンストレーション棟
受賞
2004年 第2回サスティナブル住宅小国土交通大臣賞、日本建築学会作品選奨
2005年 平成20年日本建築士会連合会奨励賞
2009年 第13回公共建築賞優秀賞、第55回神奈川県建築コンクール優秀賞、第22回AACA賞優秀賞
SDA建築設計事務所(熊本市)
主な作品
県立帯山第二団地、くまもと日産モーター株式会社PARAISO、天草工業高校実習棟・体育館(JV)、美里町中央総合体育館、高森町立高森中学校、多良木町立多良木小学校 ほか
受賞
1987年 国土建設週間建設大臣表彰
2002年・2003年・2005年 熊本県木材協会連合会賞
2012年 熊本県森林組合連合会賞
経緯
公募型プロポーザル
応募25件
2008年11月20日 一次審査(5者選考)
2008年12月07日 二次審査(公開)
最優秀賞 小泉アトリエ+SDA
優秀賞 古谷誠章+熊本大学田中智之研究室
一次審査選考者
株式会社飯田義彦建築工房
シーラカンスK&H
株式会社山下設計九州支社
住民参加ワークショップ
- 第1回 豊野ギャラリー開所式
- 第2回 こんな授業がしたいワークショップ
- 第3回 豊野の学校を育てよう
- 第4回 みんなで見守ろう豊野の子どもたち