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球泉洞休暇村バンガロー「final wooden house」
建築概要
木材というものは恐ろしく万能である。そして通常の木造建築の場合には、木材はその万能性ゆえにさまざまな場所に器用に使い分けられている。しかし万能であるのなら、逆にただ一つの方法、ただ一つの木の使い方によって、これら全てを満たすような建築を作ることができるのではないだろうか。万能性の反転である。そこから、さまざまな機能や役割が細分化する以前の、渾然一体となった未分化の状態を保持した新しい空間を創り出そうとしている。
350mm角の杉材は驚くほどの迫力を持っている。それは僕たちが木材と言っているものとは別物の「ある存在」である。木がまぎれもなく木である寸法、そして同時に、身体に直接応答する寸法、それが350mmである。こうして、350mmの段差による立体的な空間が作り出される。
ここでは床、壁、天井といった区別はない。床だと思っていたところが、別の場所から見ると椅子であり天井であり壁である。床レベルは相対的であり、人が居る場所によって空間の成り立ちが違って見えてくる。人が空間の中に立体的に分布する。それは新しい距離感として体験されるだろう。
建築データ
名称 | 球泉洞休暇村バンガロー「final wooden house」 |
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ふりがな | きゅうせんどうきゅうかむらばんがろー 「ふぁいなる うっどぅん はうす」 |
所在地 | 葦北郡芦北町大字告葛の平787 |
主要用途 | 宿泊施設 |
事業主体 | 球磨村森林組合 |
設計者 | 藤本壮介 |
施工者 | 株式会社田中組 |
敷地面積 | 89.30平方メートル |
建築面積 | 15.13平方メートル |
延面積 | 15.13平方メートル(ロフト7.50平方メートル) |
階数 | 地上1階 |
構造 | 木造 |
外部仕上 | 熊本産スギ材キシラデコール塗 |
施工期間 | 2008年2月~2008年7月 |
総工事費 | 4百万円 |
建築家プロフィール
藤本 壮介(ふじもと そうすけ) | ||||
1971年 | 北海道生まれ | |||
1994年 | 東京大学工学部建築学科卒業 | |||
2000年 | 藤本壮介建築設計事務所設立 | |||
2009年~ | 東京大学特任准教授、慶応大学・東京理科大学非常勤講師 | |||
主な作品 聖台病院作業療法棟、聖台病院新病棟、しじま山荘、伊達の援護寮、T house、登別のグループホーム、7/2 house、情緒障害児短期治療施設、House O、House N |
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主な受賞 | ||||
2004年 | JIA新人賞2004 | |||
2005年 | AR AWARDS 2005 入賞 | |||
2006年 | AR AWARDS 2006 大賞 | |||
AR AWARDS 2006 優秀賞 | ||||
平成18年東京建築士会住宅建築賞 金賞 | ||||
2007年 | AR AWARDS 2007 優秀賞 | |||
KENNETH F.BROWN ARCHITECTURE DESIGN AWARD 入選 | ||||
2008年 | JIA日本建築大賞 |
PHOTO:濱口廣一郎