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石打ダム管理所

三角港から山あいに入って車で10分ほど。
目前には新しく建設された石打ダムが突然姿を現す。
やがて水を満々とたたえる湖のほとりにへばりつくようにこの管理所が崖っぷちに建つ。
8枚の壁が地盤から立ち上がり、その間に空間がつくられている。
雄大な人工物と自然の間に立つ調停者のようだ。
ダムのコントロール機器が収められ、普段は自動的に制御されるため、人は常駐していない。
しかし、この建物はいつでもダムを見つめている。
建築概要
この石打ダム管理所は、ダムの堰堤の下流側にできるであろうダム資科館に対峙するかたちで、壁がつくられ、この壁が各々変化している。そして、この壁から直交するかたちで建てられた壁によって、建築が構成されている。それぞれの軸の壁は8枚で構成され、より革新的なものから古典的なものヘと形を変えている。この壁の変化は水の変化。つまり雲となり雨、そして、川になり海となることを表している。建築の内部は、このダムの湖底に水没した美しい林をイメージして、外部のコンクリート打放しとは対照的にカラフルなデザインを施した。そして、今となっては湖底の美しい集落が見ることができないように、この建築の内部も管理事務所という建築の機能上、覗くことは困難である。そういう物語を組み立ててみた。


建築データ
| 名称 | 石打ダム管理所 | 
|---|---|
| ふりがな | いしうちだむかんりしょ | 
| 所在地 | 宇城市三角町中村 | 
| 主要用途 | ダム管理所 | 
| 事業主体 | 熊本県 | 
| 設計者 | 青木茂 | 
| 施工者 | |
| 建築 | マコト建設 | 
| 電気 | 高浜電工社 | 
| 空調 | 興農社 | 
| 衛生 | 興農社 | 
| 敷地面積 | 632平方メートル | 
| 建築面積 | 179平方メートル | 
| 延面積 | 270平方メートル | 
| 階数 | 地上2階 | 
| 構造 | 鉄筋コンクリート壁式構造 | 
| 外部仕上 | |
| 屋根 | アスファルト防水 | 
| 外壁 | コンクリート打放し | 
| 施工期間 | 1990年7月~1991年2月 | 
| 総工事費 | 78百万円 | 
建築家プロフィール

| 青木 茂(あおき しげる) | |
| 1948年 | 大分県生まれ | 
| 1971年 | 近畿大学第2工学部建築学科卒業 数種の職業を経験  | 
| 1977年 | 青木茂建築工房1級建築士事務所設立 | 
| 1991年 | 株式会社青木茂建築工房に変更、現在に至る | 
| 主な作品 蒲江町立中学校特別教室棟、戸高歯科、ゆの杜たにもと、鶴御崎の施設群、秀嶋邸、ホテル石松  | 
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| 受賞歴 | |
| 1985年 | 第10回全国建築士事務所協会全国大会会長賞 | 
PHOTO:KAP事務局

