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一の宮直売所「四季彩いちのみや」・加工所「工房阿蘇ものがたり」

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0004340 更新日:2024年10月22日更新

一の宮直売所「四季彩いちのみや」・加工所「工房阿蘇ものがたり」の写真1

 阿蘇開祖の神々を祀った「阿蘇神社」が、悠久の歴史を語る一の宮町。
 町の特産品の直売所や加工所であるこの施設も、周囲の景観に溶け込むように造られている。
 一直線に薄く伸びた屋根は、山並みを活かすため水平性を強調したデザイン。
 屋根に設けられたハイサイドライトからは柔らかな光が降り注ぎ、室内に清潔感あふれる空間を創り出している。
 自然と共に暮らす人々の心地よい生産、流通の場。
 阿蘇の恵みが、ここから全国の食卓へ届く。

建築概要

 阿蘇山や外輪山を一望できるロケーションを縁取る緑の杜のように、敷地全体を公園として捉え、阿蘇らしい自然の溢れる公園のなかに建物を溶け込ませる。
 ワークショップで培われたコンセプトをもとに、前年完成した“阿蘇ものがたり”ブランドを生産する加工場と、そのつくりたての商品や一の宮特産の野菜やお米が販売される直売所、そして公園のトイレなどの付帯施設が阿蘇山に面して計画された。将来町民とともに練られた文化施設や湧き水を生かした公園なども計画される予定があり、その整備が待たれるところである。
 加工場と同じ鉄骨と木材のハイブリッド構法を踏襲しながら、曲面壁の厨房をコアにレストランと店舗エリアを自由で開放的な空間とすることで、南面のガラス越しに広がる阿蘇のパノラマを来訪者の記憶にとどめるように展開している。北側の高窓からの柔らかな光と白い壁、阿蘇の名産品であるトマトをイメージした赤い厨房、杉角材を敷き詰めた繊細で優しい天井のコントラストが明るく賑わいのある空間を導く。
 白く縁取られた庇から白い壁面に影をひく加工場、平行に配置された3枚の鉄筋コンクリート壁と浮き屋根をもつトイレ、開放的なガラスファサードを持つ直売所などを縦走的に配置させ、変化しながら軽やかに伸びる白い屋根群とその光と影のグラデーションが、四季折々に変化する阿蘇の山並みを際立たせることを狙っている。

建築データ

 一の宮直売所「四季彩いちのみや」・加工所「工房阿蘇ものがたり」の写真2 一の宮直売所「四季彩いちのみや」・加工所「工房阿蘇ものがたり」の写真3

名称 一の宮直売所「四季彩いちのみや」・加工所「工房阿蘇ものがたり」
ふりがな いちのみやちょくばいしょ「しきさいいちのみや」・かこうしょ「こうぼうあそものがたり」
所在地 阿蘇市一の宮町宮地538-1
(四季彩いちのみやHP)http://4kisai.com/<外部リンク>
主要用途 物産館、レストラン
事業主体 一の宮町(現・阿蘇市)
設計者 岡部憲明
直売所「四季彩いちのみや」
主要用途 物産館、レストラン、公衆トイレ
施工者  
建築 山内建設、佐藤建設
設備 九電工
外構 クマレキ工業
植裁 阿蘇造園
敷地面積 6,654.00平方メートル
建築面積 499.02平方メートル
延床面積 377.30平方メートル (直売所:299.60平方メートル 公衆トイレ:77.70平方メートル)
階数 地上1階
構造 鉄骨造、一部木造
外部仕上  
 屋根 カラーガルバリウム鋼板t-0.4特殊立ハゼ葺き棟無し工法
 外壁 アクリル樹脂プラスター塗り櫛引き仕上げ、一部杉板貼り
施工期間 2003年11月~2004年3月
総工事費 198(百万円)

 一の宮直売所「四季彩いちのみや」・加工所「工房阿蘇ものがたり」の写真4 一の宮直売所「四季彩いちのみや」・加工所「工房阿蘇ものがたり」の写真5

加工所「工房阿蘇ものがたり」
主要用途 加工場
施工者  
建築 山内建設
設備 大協熊本支店
敷地面積 3,489.93平方メートル
建築面積 399.00平方メートル
延床面積 299.60平方メートル
階数 地上1階
構造 鉄骨造、一部木造
外部仕上  
屋根 カラーガルバリウム鋼板t-0.4特殊立ハゼ葺き棟無し工法
外壁 アクリル樹脂プラスター塗り櫛引き仕上げ
施工期間 2002年11月~2003年3月
総工事費 112百万円

建築家プロフィール

岡部憲明さんの写真

岡部 憲明(おかべ のりあき)
1947年 静岡県生まれ
1974年 ポンピドゥーセンター、IRCAMの設計・監理に従事
1981~89年 RPBWパリのチーフアーキテクト
1988~94年 RPBWJ 代表 関西国際空港旅客ターミナルビルの設計及び監理に従事
1994年 岡部憲明アーキテクチャーネットワーク設立、主宰
1996年~ 神戸芸術工科大学教授
主な作品
関西国際空港旅客ターミナルビル、牛深ハイヤ大橋、ヴァレオユニシアトランスミッション厚木工場、桜新町の集合住宅
受賞歴
1988年 関西国際空港旅客ターミナルビル国際コンペ優勝
1995年 日本建築学会賞(作品/関西国際空港旅客ターミナルビル)
2001年 土木学会景観デザイン賞最優秀賞(牛深ハイヤ大橋)
2002年 BCS賞(ヴァレオユニシアトランスミッション厚木工場)

PHOTO:清島靖彦、宮井正樹