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熊本市営新地団地A
新地団地建替計画はくまもとアートポリスの中でも最大規模であり、一つの街としてのスケールを備えている。
そこで5人の建築家が、共通の考え方に基づきながら、各々の個性を最大限に発揮するという前提でプロジェクトが推進されることになった。
その第一期工事の新地団地Aには従前の居住者が完成後戻ってくるため、できるだけ既存の地形をはじめ、石垣の形状や、かつての通路パターンなどを残すよう配慮されている。
全長170mの5階建住棟が両翼となり、それに挟まれた2~3階の中庭を囲んだ低層棟を配置することで外部空間の質が比較的高い住区を構成するよう意図されている。
建築概要
低層住棟群は、周辺住区とのスケールの連続感を保つため導入されたが、その意図を一層明瞭にするため5階建住棟の両側にも低層棟と似たような表情をもたせ、人々がこの団地の内側に入っても2~3層の親しみやすいスケールを感じるとともに、南面表、北面裏という住棟の表情をなくす効果にもつながっている。
圧倒的な長さを持つ5階建住棟は、ともすると"壁"となりがちであるが、等間隔に2~3層吹抜けたゲートが作られたことにより、視線がオープンスペースに抜けていくように配慮されている。
Photo:北島俊治、熊本県広報課
建築データ
名称 | 熊本市営新地団地A |
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ふりがな | くまもとしえいしんちだんちA |
所在地 | 熊本市清水町新地1917-58他 |
主要用途 | 共同住宅 |
事業主体 | 熊本市 |
設計者 | 早川邦彦 |
施工者 | |
建築 | 増永組・水上建設・川上建設・小田建設・パチオ・ワクダ建設工事共同企業体、九嶺建設 |
電気 | 太陽電気・福田電気・鶴電気建設工事共同企業体、熊本電研 |
衛生 | たしろ住設・長神設備・公栄設備・平和設備建設・西部ガス工事共同企業体、肥後設備 |
外構 | 平井喜楽園、熊本造園 |
敷地面積 | 45,306平方メートル(2期工事含) |
建築面積 | 7,134平方メートル |
延面積 | 23,047平方メートル |
階数 | 地下1階、地上5階 |
構造 | 鉄筋コンクリー卜造 |
外部仕上 | |
屋根 | シート防水 |
外壁 | コンクリート打放しリシン吹付 |
施工期間 | 1989年12月~1991年5月 |
総工事費 | 3,204百万円 |
受賞データ
1992年 | 日本文化デザイン賞 |
1994年 | 日本建築学会賞 |
建築家プロフィール
早川 邦彦(はやかわ くにひこ) | |
1941年 | 東京都生まれ |
1966年 | 早稲田大学建築学科卒業 |
1971年 | イェール大学建築芸術学部大学院修了 |
1972年 | 竹中工務店勤務 |
1978年 | 早川邦彦建築研究室設立 |
主な作品 NWハウス、FOREST、ANGLE、GAハウス、ステップス、イズ・プレタポルテ、MK邸、南青山の家 |
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受賞歴 | |
1985年 | 日本建築協会新人賞 |