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県立美術館分館
雄壮な石垣を残す熊本城、その静かな佇まいに隣り合うように県立美術館分館は建っている。
このプロジェクトは、この地に建っていた旧県立図書館の再生工事として進められ、外装、内装とも新しい建物に生まれ変わった。
このような再生工事の試みは、日本ではまだまだ事例が少ない。
外観は、熊本城の威容に呼応するかのようだ。
屋根は、兜のように突出し、展示ウォールが収納できるよう、工夫されている。
内部は、外と表情を変えて温もりが感じられるよう1階から4階までの吹き抜け部分は、全面板張りとなっている。
建築概要
ヨーロッパにおけるリノベーションは古い構築物に新たな生命を付与し、畜積された記憶を保存する目的のもとに行われてきた。
旧図書館は歴史的なランドマークではないから、我々は、単なるリノベーションに止まらず、ラディカルな変革を行うべきだと考えた。
建物の新たなイメージは、それが面する熊本城の石垣の壮大さと力強さに呼応するとともに敬意を払ったものである。それにしてもこの建物はどうあるべきなのだろう?スペイン風に?ヨーロッパ風に?日本風に?熊本にあるバルセロナなのか?バルセロナなのか?あるいは熊本なのか?
建築データ
名称 | 県立美術館分館 |
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ふりがな | けんりつびじゅつかんぶんかん |
所在地 | 熊本市千葉城町2−18 (県立美術館分館HP)https://branch.museum.pref.kumamoto.jp/<外部リンク> |
主要用途 | 美術館 |
事業主体 | 熊本県 |
設計者 | トーレス&ラペーニャ+大和設計 |
施工者 | |
建築 | 浅沼組+坂口建設JV |
電気 | 太陽電気 |
空調 | 上田商会+三祐工業JV |
衛生 | 広誠設備工業 |
昇降機 | 東芝 |
敷地面積 | 4,071平方メートル |
建築面積 | 1,889平方メートル |
延面積 | 5,084平方メートル |
階数 | 地下1階、地上4階 |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
外部仕上 | |
屋根 | 銅板ブキ |
外壁 | 石貼り(県産合津石)乾式工法 |
施工期間 | 1991年10月~1992年10月 |
総工事費 | 1,798百万円 |
受賞データ
1993年 | 照明普及賞(照明学会九州支部) |
1995年 | BELCA賞 |
建築家プロフィール
エリアス・トーレス | |
1944年 | スペイン生まれ |
1968年 | バルセロナ建築高等技術学校卒業、ホセ・アントニオ・マルチネス・ラペーニャと専門的な協力関係を結ぶ |
1969年 | バルセロナ建築高等技術学校教授 |
1977年 | ロサンゼルスのUCLA客員教授 |
ホセ・アントニオ・マルチネス・ラペーニャ | |
1941年 | スペイン生まれ |
1968年 | バルセロナ建築高等技術学校卒業、エリアス・トーレスと専門的な協力関係を結ぶ |
1980年 | バルセロナ建築高等技術学校教授 |
主な作品 イビサの教会、大阪花博フォーリー、バルセロナオリンピック選手村 |
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受賞歴 | |
1986年 | The Golden Delta、ADIFAD産業デザイン賞 |
1995年 | Hispalyt Award賞 |
PHOTO:石丸捷一、KAP事務局