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草千里公衆トイレ

 世界一のカルデラと広大な原野を持つ阿蘇にある草千里は、青い池と鮮やかな緑のコントラストがとけあい、阿蘇の雄大さを感じさせる。
 敷地となった草千里駐車場に斜面から続く芝生の屋根、ガラスと檜のルーバーの壁面で構成された公衆トイレが建つ。
 自然公園内に建物を建てること、阿蘇、草千里という自然とどう向き合うかという課題に、一つの提案をした。
建築概要
草千里の雄大なランドスケープを楽しむための駐車場に隣接するこの公衆トイレは、草千里を眺める場所を必然的につくり出してしまうのだが、同時に草千里の風景の中へと送り返されるものであるべきだと考えた。この他にも、施設の性格から控えめであることと、駐車場からの視認性の両立。バリアフリーと斜面に建つことの両立。自然公園内の施設であることから、できるだけ木を使用することと、鉄筋コンクリート造であることの両立など、複雑にからまった相矛盾する条件を一つ一つ解きほぐして緊密に関係づけ、環境との隣接性を浮き上がらせようとした。結果、斜面に切り込みを入れ、めくりあげるような構成となり斜面の領域と駐車場の領域の重なりとして空間がつくられることになった。


建築データ
| 名称 | 草千里公衆トイレ | 
|---|---|
| ふりがな | くさせんりこうしゅうといれ | 
| 所在地 | 阿蘇市 | 
| 主要用途 | 公衆便所 | 
| 事業主体 | 熊本県 | 
| 設計者 | 塚本由晴+齋藤百樹建築設計事務所 | 
| 施工者 | |
| 建築 | 蔵原建設 | 
| 電気 | 帯屋電機商会 | 
| 機械 | 長神設備、熊本利水工業、大旭興業 | 
| 敷地面積 | 519.67平方メートル | 
| 建築面積 | 106.33平方メートル | 
| 延面積 | 106.33平方メートル | 
| 階数 | 地上1階 | 
| 構造 | 鉄筋コンクリート造 | 
| 外部仕上 | |
| 屋根 | コンクリートFRP防水のうえ緑化 | 
| 外壁 | ヒノキカーテンウォール及びヒノキ小幅板本実張 | 
| 施工期間 | 1997年12月~1998年4月 | 
| 総工事費 | 134百万円 | 
建築家プロフィール

| 塚本 由晴(つかもと よしはる) | |
| 1965年 | 神奈川県生まれ | 
| 1987年 | 東京工業大学 工学部建築学科卒業  | 
| パリ建築大学ベルヴィル校 | |
| 1992年 | 貝島桃代とアトリエ・ワン設立 | 
| 1994年 | 東京工業大学 大学院博士課程修了  | 
| 現在 | 東京工業大学工学部建築学科専任講師、博士(工学) | 
| 主な作品 週末住宅PALETTE、田園に佇むキオスク(くまもとアートポリス'92デザインコンペティション最優秀賞)、ハスネ・ワールド・アパートメント、アニ・ハウス、ミニ・ハウス  | 
|
| 受賞歴 | |
| 1997年 | 東京建築士会住宅建築賞 | 
| 1998年 | 東京建築士会住宅建築賞 | 
PHOTO:宮井政次

