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高橋酒造田野蒸溜所・交流施設
高橋酒造田野蒸溜所・交流施設
Takahashishuzo Tano Distillery Community Facility
高橋酒造田野蒸溜所・交流施設は、令和2年7月豪雨で被災した人吉球磨地域を元気づける復興拠点として、球磨焼酎で知られる老舗酒造メーカーが、新たに手掛けたウイスキーの蒸溜所と交流施設である。
人吉市南部・標高680メートルの山間地に位置し、田園に囲まれた敷地の南側にある美晴山では、毎年野焼きが行われるなど、地域住民による景観の保全が続けられている。赤い屋根の木造校舎と体育館は、長年地域のシンボルとして親しまれてきた場所であり、既存の建物を活かしたコンバージョンにより、周辺の自然景観と調和した空間へと再生された。
ウイスキー蒸溜所としての機能に加え、製造過程の見学や体験が可能な場として、地域住民や来訪者が集う交流施設としても機能し、地域の記憶と美しい景観を次世代へ継承する新たな拠点として生まれ変わった。
建築概要
本計画は豊富な水資源と美しい田野高原や水田の景観に恵まれる人吉市田野町(標高680m)に建つ廃校となった旧・田野小学校(1988年竣工)を活用し、再生したものである。木造の校舎を貯蔵庫やギャラリー・オフィスに、鉄骨造の体育館を蒸溜所に改修し、グラウンド側に試飲スペース・ショップを増築して2棟をつないでいる。廃校となった小学校の特徴を継承しながら、雄大な田野高原の風景を享受できる場を創出した。
インテリアは小学校らしさを感じさせる郷愁的な教室の骨格は残しつつ、天井を抜いて天井裏の木架構を演出した貯蔵庫やギャラリーのほか、一部2階の床を挿入して展示スペースへ改修した。校舎と体育館をつなぐ増築部には試飲スペース・渡り廊下を設け、この地域の特徴である田野高原の雄大な風景を一望できる場所をつくっている。
体育館を改修した蒸溜所には増築部2階の渡り廊下からつながる見学ブリッジを挿入し、ブリッジ先端には北側の水田の風景の見える展望スペースを設けた。増築部の1階はピロティとし、蒸溜所と貯蔵庫をつなぐ軒下の生産動線としている。機能的には1階の生産ゾーンと2階の見学ゾーンを分離し、水平面の上下で2つの異なった風景をつくり出している。


建築データ
名 称 高橋酒造田野蒸溜所・交流施設
所 在 地 熊本県人吉市田野町3316-4
主要用途 工場(ウイスキー蒸溜所)
事業主体 高橋酒造株式会社
設 計 者 平瀬有人+平瀬祐子
施 工 者 株式会社速永工務店
敷地面積 11011.23平方メートル
建築面積 1183.41平方メートル
延 面 積 1278.32平方メートル(改修前:897.58平方メートル)
階 数 地上2階
構 造 木造(既存校舎)-鉄骨造(既存体育館)-鉄骨造(増築部)
外部仕上
屋 根 ガルバリウム鋼板嵌合式立平葺・セメント洋瓦
外 壁 溶融亜鉛メッキ鋼板・サイディングの上塗装
施工期間 2023年6月~2024年10月
総事業費 非公開
建築家プロフィール
平瀬 有人(ひらせ ゆうじん)
1976年 東京都生まれ
2001年 早稲田大学大学院修士課程修了
2007年 yHa architects
2008〜2023年 佐賀大学准教授
2023年 早稲田大学芸術学校教授
平瀬 祐子(ひらせ ゆうこ)
1975年 東京都生まれ
2001年 早稲田大学大学院修士課程修了
2008年 yHa architects
主な作品
富久千代酒造 酒蔵改修ギャラリー、五ケ山クロス ベース、天神中央公園ハレノガーデン、御嶽山ビジターセンター、TETUSIN DESIGN RE-USE OFFICE
主な受賞
2016年 日本建築士会連合会賞優秀賞
2016年 日本建築美術工芸協会芦原義信賞
2016年 JID AWARD2016 大賞
2019年 SDレビュー2019 朝倉賞
2022年 第4回日本建築設計学会賞
2024年 iF DESIGN AWARD 2024
くまもと人材育成事業
「高橋酒造田野蒸溜所・交流施設完成見学会」
「こども建築塾2025『記憶をカタチにのこそう』」
アートポリスプロジェクト「高橋酒造田野蒸溜所・交流施設」は、令和5年1月に設計者として「平瀬有人+平瀬祐子/yHa architects」が選定され、旧田野小学校をウイスキー蒸溜所と交流施設へとコンバージョンした施設になります。
今回、当施設が開所するにあたり、令和2年7月豪雨からの創造的復興の一環として整備された本プロジェクトの完成を広く周知するとともに、県内外の建築を学ぶ学生や建築関係者など建築人材育成の機会として、完成見学会を開催しました。
また、こどもたちに「ものづくり」の楽しさを知ってもらうとともに、地域を守り未来をつくる建築人材の育成にもつなげるため、「くまもとアートポリスこども建築塾」を併せて実施しました。
完成見学会(令和7年11月9日)
高橋酒造田野蒸溜所・交流施設が開所したことを記念して、完成見学会を開催しました。
当日は、あいにくの雨天にも関わらず、県内外から建築関係者や学生など約80名の方に参加いただきました。
見学会では、事業者である高橋酒造株式会社 高橋昌也専務取締役から本計画の経緯を含めご挨拶をいただき、設計者の平瀬有人氏、平瀬祐子氏から設計概要の説明の後、2グループに分かれ完成した建物を見学しました。
見学の際には、高橋酒造株式会社の高橋昌也専務取締役、高橋良輔常務取締役、施工を担当された株式会社速永工務店 黒木浩行氏にも同行いただき、参加者からの質問への対応などご協力をいただきました。

参加者は、敷地が持つ3つの〈記憶※〉を継承する建築の考え方に熱心に耳を傾けられていました。
※ … 物質的記憶、郷愁的記憶、地域的記憶
なかなか見ることができない施設であり、参加者はメモや写真を撮りながら、時間いっぱいまで熱心に見学をされていました。
見学会にご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
こども建築塾2025「記憶をカタチにのこそう」(令和7年11月9日)
午後からは、県内の小学生を対象とした「くまもとアートポリスこども建築塾2025」を開催しました。
今回のこども建築塾は、旧田野小学校の校舎と体育館をウイスキー蒸溜所と交流施設へとコンバージョンしたアートポリスプロジェクト「高橋酒造田野蒸溜所・交流施設」で行い、人吉・球磨地域を中心に16名の小学生が参加しました。
講師を務めていただいた、本プロジェクト設計者 yHa architectsの平瀬有人さんと平瀬祐子さんから、この建物にはいろいろな所に小学校の記憶を思い出すような面影が残されていることの説明がありました。
まずは、その小学校の面影探しからこども建築塾がスタートしました。
こどもたちはグループとなり、6年生を中心にみんなで一生懸命小学校の面影を探してくれました。
校舎の廊下にあった水飲み場や放送用のスピーカー、教室の黒板、体育館にある校歌の刻まれた木板やキャットウォーク、敷地にある国旗掲揚台やプールなど、ほぼすべての面影を見つけ出し、100点満点をもらいました。
その後、小学校の記憶がこの建物に残っているのと同じように、この田野地区に生えている植物のはっぱを樽にスタンプして、ここだけの記憶をのこすワークショップを行いました。
はっぱの形をきれいにのこすのは思いのほか難しく、最初は設計事務所のスタッフのみなさんと一緒になって、作業されていました。
どんどん上達し、後半になると、みんなひとりでできるようになり、大きな樽がカラフルな葉っぱスタンプで彩られました。
最後に、「葉っぱスタンプの樽」を囲み、講師の先生方と参加者で写真を撮影し、こども建築塾は終了しました。
みんなで製作した「葉っぱスタンプの樽」は、当施設ギャラリーに展示しています。
20歳になったら、記念品として作成した「葉っぱスタンプを押したラミネート」を持って、ウイスキーを飲みに来てくれることを期待しています!
参加いただきました皆様、ありがとうございました!
開催案内(令和7年9月29日)
アートポリスプロジェクト「高橋酒造田野蒸溜所・交流施設」は、令和5年1月に設計者として「平瀬有人+平瀬祐子/yHa architects」が選定され、旧田野小学校をウイスキー蒸溜所と交流施設へとコンバージョンした施設になります。
今回、当施設が開所するにあたり、令和2年7月豪雨からの創造的復興の一環として整備された本プロジェクトの完成を広く周知するとともに、県内外の建築を学ぶ学生や建築関係者など建築人材育成の機会として、完成見学会を開催します。
また、こどもたちに「ものづくり」の楽しさを知ってもらうとともに、地域を守り未来をつくる建築人材の育成にもつなげるため、「くまもとアートポリスこども建築塾」を併せて開催します。
完成見学会

日時・場所
日時/令和7年(2025年)11月9日(日曜日)
第1回 10時00分-11時00分(受付 9時30分)
第2回 11時15分-12時15分(受付10時45分)
場所/人吉市田野町3316-4(高橋酒造田野蒸溜所)
※会場に駐車場があります。車でお越しの際は、できる限り乗り合わせてお越しください。

主催/くまもとアートポリス事務局(熊本県建築課)
協力/高橋酒造、yHa Architects、速永工務店
内容
説明者(設計者)/平瀬有人、平瀬祐子(yHa architects)
・施設の説明
・現場の見学
こども建築塾
日時・場所
日時/令和7年(2025年)11月9日(日曜日)
13時30分 ~ 15時30分(受付13時00分)
場所/人吉市田野町3316-4(高橋酒造田野蒸溜所)
主催/くまもとアートポリス事務局(熊本県建築課)
協力/高橋酒造、yHa Architects、速永工務店
内容
講師(設計者)/平瀬有人、平瀬祐子(yHa architects)
1 施設の説明
2 施設の見学
3 ワークショップ「ここだけの記憶をみんなでカタチにのこそう」
留意事項
〇 当日は、現地集合・現地解散です。
〇 会場に駐車場があります。
〇 参加はこどものみです。保護者の見学は可能です。
〇 参加者は主催者の方でレクレーション保険に加入します(費用負担はありません)。
〇 イベントの写真・動画は、広報用として、くまもとアートポリスSNSや熊本県HP、その他印刷物に使用します。
〇 提供いただいた個人情報は、保険加入及び本イベント管理のために収集するものであり、他には流用しません。
安全祈願祭が行われました!(令和5年6月14日)
6月14日(水曜日)に、建設地の旧田野小学校で、松岡人吉市長や地元田野町内会の元田会長が来賓として参加され、安全祈願祭が行われました。
安全祈願祭では、高橋酒造(株)の高橋光宏社長から、「田野地区でお酒づくりをしたいとの思いが実現できた。アートとして評価を得られるものをつくりたい」との言葉がありました。また、設計者の平瀬祐子氏からは、「豊富な水資源と美しい景観がある田野地区で、地域に愛されるものをつくっていきたい」と言葉がありました。
完成は、来年夏頃の予定です。
高橋光宏社長 平瀬祐子氏

高橋酒造 田野蒸留所・地域交流施設 くまもとアートポリスで取り組みます!(令和5年1月26日)
高橋酒造 田野蒸留所・地域交流施設は、高橋酒造株式会社が行う、人吉球磨地域を元気づける復興拠点です。
豊富な水資源と、美しい景観に恵まれる田野地区で、旧田野小学校をリノベーションするという魅力的なプロジェクトは、令和2年7月豪雨からの創造的復興であり、新しいアートポリスプロジェクトとして決定しました。
伊東豊雄くまもとアートポリスコミッショナーが平瀬有人氏、平瀬祐子氏を推薦し、設計が進められています。

※外観イメージ図

※内観イメージ図

※模型写真1

※模型写真2
事業の概要
事業主体 高橋酒造株式会社
設計者 平瀬有人+平瀬祐子
建設地 人吉市田野町3316‐4(旧田野小学校)
事業内容 旧田野小学校校舎等を蒸留所や地域交流施設に改修
改修規模 延床面積 約1,300平方メートル(増築:約400平方メートル)
1階:約850平方メートル 1階:約450平方メートル
整備スケジュール
令和5年6月~令和6年2月 第1期工事(生産設備に関する部分)
令和6年3月 生産開始(予定)
令和6年度~令和8年度 貯蔵期間、第2期工事(見学施設に関する部分)
見学施設オープン(予定)
建築家プロフィール

平瀬有人+平瀬祐子
平瀬有人(ひらせゆうじん)
早稲田大学理工学部建築学科卒業
早稲田大学大学院修士課程修了
平瀬祐子(ひらせゆうこ)
早稲田大学理工学部建築学科卒業
早稲田大学大学院修士課程修了
共同でyHa architectsを設立。
主な作品
・「富久千代酒造 酒蔵改修ギャラリー」(佐賀県鹿島市)
1921年に竣工した登録有形文化財の旧精米所を酒造りのギャラリーに改修。
(日本建築学会作品選集新人賞、グッドデザイン賞など多数受賞)
・「五ケ山クロス ベース」(福岡県那珂川市)
(日本建築学会作品選集、ウッドデザイン賞、第32回福岡県美しいまちづくり建築賞優秀賞など多数受賞)
・「TETSUSIN DESIGN RE-USE OFFICE」(福岡県福岡市)
(日本建築学会作品選集、グッドデザイン賞、日本建築設計学会賞など多数受賞)
・「天神中央公園 ハレノガーデン」(福岡県福岡市)
・「御嶽山ビジターセンター」(長野県木曽郡)など

