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平成23年 7月 6日 知事定例記者会見

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0006822 更新日:2011年7月6日更新

知事定例記者会見

日時:平成23年7月6日(水曜日)  10時00分から
場所:知事応接室

会見録

知事定例記者会見の会見録や報道資料等を掲載しています。
なお、知事の発言の趣旨を損なわない程度に読みやすいよう整理しています。

発表項目

コメント

 ロアッソ熊本ホームゲームでの応援について

質疑応答

(幹事社)
 おはようございます。今月から、NHKと時事通信社、日本経済新聞社が幹事社を務めさせていただきますので、よろしくお願いします。それでは、まず知事から今日の発表項目について、お話をお願いします。

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発表項目

蒲島知事
 はい。本日は3つの発表項目があります。最初は「熊本港のガントリークレーンの整備について」、それから2番目が「東日本大震災の支援について」、3番目が「『親子ハッピーフォーラム』の開催について」であります。

熊本港ガントリークレーンの整備について

報道資料:熊本港ガントリークレーンの整備について(PDFファイル:347KB)

 まず、熊本港ガントリークレーンの整備について発表します。国内のみならず、アジアの活力を熊本に呼び込むためには、熊本港の役割は大変大きいものと考えております。今回のガントリークレーンの導入によって、ホンダをはじめとする熊本都市圏に立地する企業のコンテナ貨物の取扱量が、今後飛躍的に拡大するものと確信しています。

 ガントリークレーンの整備につきましては、当初20億円を超える県負担を想定しておりました。しかし、「財政再建」と「くまもとの夢」の両立を図るために、次の3つのことを行いました。1つは、岸壁の補強について、国の直轄事業で整備すること。2つ目に、ガントリークレーン本体については、交付金事業を活用すること。3つ目が、静岡県のご厚意により、清水港のガントリークレーンを5500万円以下という安い価格で譲っていただくことであります。この3つの取組みによって、現時点では、当初想定の半分以下の県負担で整備できる見込みになりました。年内には、静岡県との協議を終え、平成24年中の供用開始を目指したいと思っています。

 これまで、熊本県と静岡県は、ホンダやヤマハなど静岡県をルーツとする企業の立地など、民間レベルをはじめとした様々な交流を行って参りました。今回のガントリークレーンの導入は、両県の友好のシンボルとして、さらにはこれを契機に裾野の広い様々な関連産業の交易拡大につながるものと期待しています。

 今月中には静岡県と防災協定も締結する予定でありますし、今後とも静岡県との交流をますます深めていきたいと思っています。

発表項目

東日本大震災の支援について

 2番目は、東日本大震災の支援であります。

 まず、東日本大震災復興支援チャリティーバザールについて発表します。

 去る6月4日、5日に開催しました東日本大震災復興支援チャリティーバザールの最終結果が、先週30日の実行委員会で報告されました。2日間の入場者数が目標の3万人を上回る3万1000人、義援金等についても目標の1500万円を上回り1600万円となりました。極めて短期間での準備でありましたけれども、本県の市民力を結集して、被災地への支援、そして地産地消による県内経済の活性化に貢献できたものと確信しています。改めて県民の皆様をはじめ、関係者の皆様のご協力に感謝を申し上げたいと思います。

 それから7月3日、日曜日に、被災者支援の一環として、「東日本大震災県内避難者交流会」を開催いたしました。

 これは、県内に避難されている方々から、避難者の集まりの場を提供して欲しいという意見があったことを踏まえて開催したものであります。現在、県内には75世帯、187名の方々が避難されております。当日の交流会には、その約6割に当たる47世帯、109人の方々にお集まりいただきました。交流会では、まず県の担当者から国や県などの各種支援策を説明した後、避難者相互の自由な情報交換・懇談の場を設けました。

 私も懇談の場に参加して、直接避難者の方々のお話を伺いました。想像を絶する地震や津波に遭われた際の大変な思いや、今後の被災地の復興に対する心配、切実なそのお気持ちなどを聞かせていただきました。一方で、多くの方々から、熊本県民の皆さんが心温まる気持ちを持って対応していただいたことに対して感謝の言葉をいただきました。私としても大変嬉しく思った次第です。また今、画面にもありますように、交流会の感想についても述べられております。そこでは「同じ境遇におかれた者同士で、情報交換ができて良かった」とか、「前向きに頑張ろうという気持ちが持てた」といった声をアンケートで多数いただきました。改めてこの交流会をやって良かったなと思っています。くまモンも私と一緒にホスト役を務めてくれ、子ども達のみならず、参加者の方々にとても喜んでいただきました。今後とも避難者の方々が本県で安心して暮らせるよう、市町村と連携して、きめ細やかに対応していきたいと思っております。

 それから私自身、被災地を自分の目でしっかりと見ておく必要があると考えておりましたが、混乱が続く中での現地入りは控えていたところであります。こうした中、震災発生からもうすぐ4カ月が経ち、被災地も徐々に落ち着きを取り戻しつつあると聞いておりますので、今月14日、宮城県東松島市を訪問することにいたしました。当日は、被災地視察や現地に派遣している職員の激励、そしてくまモンとともに被災した保育所の子ども達の慰問も行う予定であります。

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発表項目

「親子ハッピーフォーラム」の開催について

 3番目は、親子ハッピーフォーラムの開催についてであります。

 「ひとり親家庭等応援事業」の一環として、「親子ハッピーフォーラム」を開催いたします。サッカー日本代表の長友佑都(ながともゆうと)選手のお母さんによるトークショーをはじめ、子ども達に夢を与えるとともに、親御さんにも希望と元気を届ける内容となっております。ひとり親家庭を社会全体で支えるための「ひとり親家庭等応援隊」の結成式も行います。

コメント

ロアッソ熊本ホームゲームでの応援について

報道資料:「熊本県民サンクスマッチ」の開催!(PDFファイル:79KB)

 以上が発表項目でありますけれども、最後に1つコメントをさせていただきます。

 それは、「ロアッソ熊本ホームゲームでの応援について」であります。ロアッソ熊本は、県民にとっても大きな夢であるJ1昇格に向けて今頑張っております。7月17日、日曜日、KKWINGで開催されます「カターレ富山」戦は、J1昇格を現実のものとしていくための、負けられない一戦であります。当日は、私も会場で県民の皆さんとともに応援したいと思います。なお、当日は「ロアッソ熊本をJ1へ」県民運動推進本部主催による、「熊本県民サンクスマッチ」として、いろんなイベントも開催されます。県民の皆様にも、是非応援においでいただき、KKWINGを埋め尽くしたい。そして力の限り、大きな声援を送りたいと思っています。そして、皆で勝利を勝ち取って、喜びを分かち合いたいと思っております。

 以上が今日の発表項目とコメントであります。

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質疑応答

ガントリークレーン整備後の熊本港の位置付けについて

(幹事社)
 ありがとうございました。では、まず幹事社から発表項目について1点伺います。

 熊本港のガントリークレーンの整備について伺いたいんですけれども、考え方なんですけれども、八代港の重点整備ということで、熊本港は外れました。その中で、九州の八代港ですとか、あるいは九州全体の中で熊本港というのはどう位置付けられて、どのような考え方で、このガントリークレーンの後に整備していかれるのか、という考え方を伺えますか。

蒲島知事
 もともと八代港と熊本港は、県としては両方とも重要(な)港湾であると考えておりました。国の方では、八代港だけを選ばれましたけれども、熊本県としては両方大事だと考えております。熊本港がこれから政令指定都市になる熊本市にとっても重要な港になるであろう、そして熊本県全体への波及効果も大きいだろうと(考えました)。また、ガントリークレーンがないと、どうしてもホンダさんの荷物、あるいは富士フイルムさんの荷物、そういう荷物が運べないことが分かっており、ガントリークレーンを導入したいというのは、土木部港湾課の悲願でありました。ただし、一方では非常に高額になりますので、財政再建という中で、ガントリークレーンという悲願とをどう両立させるかというのが大きな課題であったわけです。それを考えて、先ほど3つの項目を述べました。1つは、岸壁を直轄事業で整備する、それから交付金事業を活用する、しかし今回の特色としては何よりも、清水港にあるガントリークレーンを低廉な価格で譲渡していただくという、静岡県の大変なご厚意があり、これまで想定していた20億円という県負担を半分以下に抑えられたことです。それで「財政再建」と「くまもとの夢」の両立という面から、お金をかけずに整備するというのがとても大事な状況の中、今回、熊本港の整備が成功したのではないかと思っています。

質疑応答

熊本港整備の検証について

Q
 ずい分、安あがりで今回整備するということを強調されているわけですけれども、熊本港については、既に1600億円つぎ込んでいるわけですね。その1600億円がどのような効果と課題を残しているのかということについての、きちんとした検証というものをまともに聞いたことがないんですよね。

蒲島知事
 1600億円つぎ込んだというお話ですけれども、だからこそ「そこで捨てる」のか、あるいは「つぎ込んだ分を少しでも取り戻す」のか2つの選択肢があると思います。一方では、「もうこれ以上つぎ込む必要はない」、以前、「パチンコで負けたから、またつぎ込むとまた負けるんじゃないか」という例え話もありましたよね。でもそういうものとして私は捉えていません。今までそれだけつぎ込んできたということは、大々的な投資はとてもできません。それでなるだけ安く、今回ちょっとでもその投資分を取り戻すためには、何が必要かというと、熊本に立地している大企業の荷物が、今博多港の方に行っていますので、それを熊本港の方に取り戻すことです。そういう意味では、ガントリークレーンが必須なんですね。これがないと、その荷物は博多に行ってしまうので、なるべく経済的にガントリークレーンを整備したい。だから、もう1600億も投資したじゃないかというお話ですけれども、それを少しでも取り戻したいというのが、私の県政に与えられた責任じゃないかと思ってやっています。

Q
 ただ知事、こういう発表にはとても既視感があってですね、何度も、熊本港はこれを整備すると利用されるんだと。開港の時からホンダは口実に使われているんですよね。新しい投資をする時、必ずホンダの名前を出してされるが、実態として使われてきていないわけです。使い勝手が良くないわけですよ。
 そして、それを繰り返し、そういう理屈で、前のめりにですね、追加投資をしてきたわけです。今日は、物はガントリークレーンに変わっていますけれども、それによって大きく打開するというのをとても鵜呑みにできないようなところもあるし、それからこの考え方ですね、直轄事業で岸壁を補強するならばいいのかですね。直轄事業というのは国民の税金でしょう。県民であると同時に国民の一員でもあるわけですから、国費が投入されるからいいという話でもない。現に浚渫は毎年5億から10億、国費と県費合わせてつぎ込んでいるわけですから、だから、もともと港として向いていたのか、そういうことも含めて1600億円の検証というものを、やっぱり緻密にやって欲しいんですけれど、どうですか。

蒲島知事
 記者さんのご意見は、1600億円投資したのに、それに見合う成果があっていないことをまず検証した後に、こういう投資を行うべきではないかというお話だと思いますけれども、それはこれまでも検証してこられたと思います。私自身が3年前に県政を担当した時には、これが1つの所与〔※与えられた前提条件〕だったので、その中でこれをどう活かすかというのが私に求められていたと思います。そこで、最初にガントリークレーンの話があった時に、更なる投資(をする)というのはおかしいのではないかと、これまでの経過を踏まえながら(考えました)。それだけの投資をする時には、私自身のフィロソフィー〔※哲学〕として、とにかく経済的に、節約できるものがあれば、節約の方法はないのかということ(を指示しました)。私にとっての節約は、県費の節約です。その方法としてあらゆる方法を考えて、この3つが出てきたということで、これだったらいけると(思いました)。これまで投資した分の全ては取り戻せないかもしれない、ただ、全部は取り戻せないとしても、少なくとも無駄にしないと。そのためには、やはりガントリークレーンはどうしても必要だと私も確信しました。そこで、ホンダさんともお話をし、それから他の企業ともお話をしたところ、ガントリークレーンがあれば、今アジアに行っている荷物も、熊本港から(積み出しを行うことが可能になるし)、特に(博多港までトラックで輸送しなくてもよくなるので、)CO2削減という観点からも(熊本港が選択される可能性が高まるのではないか)、というサジェスション〔※提案〕があったので、今回踏み切ったところです。ただ、私の中にずっとあるのは、過大な投資はいやだと(いうことです)。だから、身の丈にあった投資という意味では、私は、今回は随分と努力したのではないかと思っております。そして、それに対して静岡県の方がガントリークレーンの余裕があったので、譲渡を確約してくれたということに対して大変感謝いたしております。

質疑応答

熊本港の更なる活用策について

Q
 関連なんですが、ホンダのことだけではなくて、今後、県として何か活用策というか…。

蒲島知事
 これからホンダさんだけではなくて、ソニーさんもあるし、富士フイルムさんも、それから大日本スクリーンさんも東京エレクトロンさんも、今、熊本に大規模な立地を行っております。そういう意味で、ニワトリが先か卵が先かの話で、もし船がたくさん動けば非常に便利になりますので、企業の方も利用してくれると思います。まず船を動かす、船の便を増やす。それによって、企業の方も博多から熊本の方に変えてくれる。そういう方向に誘導しなくてはいけないと思っています。だから、(ガントリークレーンを)作ったから、そこで安心ではなくて、何のために作ったかというと(利用してもらうためですから)、とにかく熊本港をもっともっと利用してもらいたいと思っています。

 今の記者さんのお話から考えてみますと、もともと熊本港というのは港に向いていないのではないかという、そういうところからお話があったと思いますけれども、そういう港もたくさんあるんですよね。例えば金沢港なんかもそうなんです。それから博多港もそれほど完璧に向いているわけではないようです。ただ、その背後にある市が発展すれば、そこ〔※その都市にある港〕は次第に使われるようになるんですよね。かつて(、北陸で)は新潟港(がよく使われていた港)であったけれども、今は金沢港が使われている。それから博多港もそうですよね。だから、私は熊本市、(熊本)都市圏が発展すれば、相互作用、相関関係として熊本港もさらに使われるようになる、使われるようになるとまた更に熊本県全体への波及効果が大きくなると思っています。

 これは、「くまもとの夢」への挑戦と財政再建下にある熊本県の現状を考えた最適の解ではないかと思っています。

記者からの質問に答える蒲島知事の写真

質疑応答

ガントリークレーンの導入効果について

Q
 知事、今回のガントリークレーンの導入でですね、現在熊本港のコンテナの取扱量が4500ある、TEU[1]っていうんですかね、20フィートコンテナ換算で、八代市の半分以下ぐらいだろうと思うんですけれども、ガントリークレーンの整備でどれくらいの増加を狙っていらっしゃるんでしょうか。

蒲島知事
 先ほどから述べていますホンダさんとか、東京エレクトロン、あるいは富士フイルム、そういう大きな所がどのくらい、我々のアプローチに協力してくれて、そして博多から熊本への転換を図ってくれるかということにかかっていると思います。ただ、今確実にどのくらい伸びるかというのは、ここで確定値を言うことはできません。予想値というのは、港湾課長、どのくらいになっていますか。

【港湾課長】
 はい。5倍程度にはなるのではないかと思っています。

蒲島知事
 5倍程度だそうです。頑張ってくださいね。


[1]ティー・イー・ユー(twenty-foot equivalent units)港湾におけるコンテナ貨物の取扱量の単位。またはコンテナ船の積載容量の単位。コンテナには様々な形状があるため、20フィートコンテナ1個分を1TEUとしている。標準的な20フィートコンテナ1個分の容積は、長さ6.1m幅2.4m高さ2.6m、約39立方mである。

質疑応答

熊本港と八代港の役割分担について

Q
 知事、関連ですけれども、博多に行っているものを取り戻すというのは分かるんですけれども、船便が増えるということはですね、今ある八代港にある部分も持って来るという可能性もありますよね。その八代との役割分担というのはどういうふうになっているんですか。

蒲島知事
 八代港の貨物を取るということではなくて、私にとっては八代港も熊本港も同じ熊本でありますから、どっちが良くなってどっちが悪くなるということは全然考えていません。両方ともよくなる方法は何かと(考えています)。今(熊本港で扱ってもらいたいのは、)八代港で扱わない富士フイルムさんとかホンダさんとか、熊本都市圏の荷物ですよね。だから、特にCO2削減という大きな問題があるので、わざわざ高いガソリンを使って博多港まで行かなくても、熊本港を使っていただけないだろうかというのが我々の考えであり、また、バルク[2]を中心とする八代港とは違った役割が、私はあると思います。だから、両方が良くなる方策をこれから取っていかなくてはいけないと思います。ただ、「重要港湾に選ばれなかったから、ではもう熊本港は捨てます」というのは、熊本県の立場ではありません。両立できるというのが熊本県の立場でありますので、その1つとして、ガントリークレーンの整備を進めたということです。


[2]ばら荷。特に、ばら積み貨物。(出典:「大辞泉」(小学館))

静岡県から譲渡予定のガントリークレーンの状態について

(幹事社)
 では、発表項目以外含めて、各社から質問があったらお願いします。

Q
 すみません。ガントリークレーンの関連なんですけれども、この静岡県からいただく物そのものというのは、要は中古品であるし、その物としては大丈夫なんですか。

蒲島知事
 はい。それはちゃんと検証済みであります。

Q
 例えば耐用年数がどれくらい短いんだとか。

蒲島知事
 それも踏まえたうえで、新品を入れた場合と、それから中古を入れた場合の検証をして、新品を入れた場合よりも、今回の清水港のガントリークレーンを譲っていただく方が圧倒的に(経済的に)有利だという計算結果が出ました。そういう合理性がないと導入できません。ただ、売っていただく価格が破格に安いということも素晴らしいことであるし、(静岡県との)友好のシンボルとして、これを末永く大事にしたいと思っています。

記者からの質問に答える蒲島知事の写真

質疑応答

原子力発電の再稼働に関する熊本県からの要請等について

Q
 知事よろしいですか。原発の運転再開についてなんですが、昨日も九電の熊本の支社長さんがお見えになっていましたけれども、玄海原発について、隣県の長崎県などはですね、自分達の意見も聞いて欲しいというような声を上げられていらっしゃる。熊本県も川内原発が隣県にあるわけですけれども、川内が止まっている分が再開するにあたって、今まで受けている報告だけではなくて、知事の方から注文をつけるとか、そういったことをされるお考えはありますでしょうか。

蒲島知事
 いつか記者会見でも言いましたように、私は原発を直ちに廃止するということは、日本国全体の経済状況を見る限り、現実的ではないと考えています。これからどういう形のエネルギー政策が必要かということについては、国民的な議論が必要だと思っていますし、それをもとに持続可能なエネルギーへの転換であるとか、あるいは太陽光エネルギー、小水力といったものへの転換が図られるべきだと思っています。

 そういう中で今、古川知事は大変な苦悩の中におられます。1つは、九州全体、それから日本全体の経済、そういう中で、どういう判断をするか。一方では住民の安全、県民の安全という、ものすごく大きいプレッシャーの中で、今苦悩されていると思います。私自身は、古川知事の悩みを共有し、今後どんな決断をされるか、分かりませんけれども、その決断に理解を示したいと思います。とりわけ熊本県から注文をつけるということは考えておりません。

Q
 その悩みの共有の仕方として、玄海町の町長さんと佐賀県知事に判断を委ねてしまうのではなくて、その周辺の自治体も含めて、やはり考えるというそういう選択肢もあっていいんではないかと思います。

蒲島知事
 そういう選択肢もあると思います。それは国の(原子力政策の)方向性、国の(原子力発電に関する)安全性の認定など、そういうものを踏まえながら、古川知事も玄海町の町長も判断されておりますので、古川知事の所に今、一身にプレッシャーが来ているという段階であります。古川知事も、全く他のことを考えないで(意見を)おっしゃるかというとそうではなくて、立地していない市町村のことも考えていらっしゃるだろうし、それから隣県のことも考えの中に入っていると思います。この際、それに対して私から「こうして欲しい」とか、「こうすべきだ」という要請は控えたいと思っています。

Q
 むしろ川内原発の方については、熊本県内でも先日水俣市議会だったですかね、1、2号機の計画的廃炉と、それから3号機建設計画の再考というのも求める意見書というのを、これは全会一致であげているわけですよね。だから熊本県内の課題でもあるわけですね。

蒲島知事
 知っておかなくてはいけないのは、実は熊本県経済も原発からくる電力の恩恵を被っているということ。そして、鹿児島県、それから佐賀県の方々、とりわけ(原発立地県の)知事の方々の苦悩、そういうものを分からなくてはいけないと思うので、私自身はですね、先ほども言いましたように、こういうふうにしてくださいという要請は控えたいと思っています。

質疑応答

教育委員会の校長、教頭の選考について

Q
 話を変えさせていただいてよろしいですか。ちょっと先週、6月県議会の途中から報道を始めているんですけれども、教育委員会の校長、教頭の選考考査について、現場の先生方と教育委員会の事務局に勤めておられる指導主事さんで、選考考査に受かった後の取扱いに格差があるというようなことが分かりまして、現場の教員の方々からも非常に多数の不満というか、そういう声も寄せられてきているんですけれども、我々が問題視しているのは、いわゆる子ども達、生徒・児童の教育の場、そこを司る教育行政の中で、そういうアンフェアなことがあっていたという、そういうことが問題ではないかと我々は思っているんですが、知事としてはその辺どのようにお考えになられますか。

蒲島知事
 戦後以来、政治と教育というのは、非常に敏感な問題として取り扱われてきました。つまり政治が教育の現場に口を出すことを抑制するという、それが教育委員会の今の制度ではないかと思っています。今、その教育委員会をどうすべきであるということについて、特に個々のケースについての言及は、私は知事としては避けるべきではないかと思っています。ただ、間接的にはですね、教育委員会の方は、私のマニフェストの中に、例えば「夢のある教育」ということをうたっておりますけれども、それもしっかりと受けとめてくださっているのではないかと思っています。だから、どのような組織も課題はあるし、それから親御さんの悩みもある、そういうふうに改善して欲しいという気持ちもあると思います。県民の代表としての知事としては、「問題の解決のために奔走して欲しい」、「改善に取り組んで欲しいと思う」ということまでは言えますけれども、どうすべきだというのは、教育委員会の権限と知事の権限、政治と教育という峻別した中で、避けるべきではないかと思っています。

 県民の代表としては、とにかく問題があったら、速やかに解決して欲しいという、この気持ちを分かって欲しいということです。それを分かって、教育委員会の方は責任を果たしてくれるではないかと確信しているところです。

Q
 我々が指摘したことに関しては、やはり問題があるというご認識はお持ちということでよろしいですか。

蒲島知事
 問題があるという認識は皆さんがそういうふうに〔※校長、教頭の選考方法がアンフェアではないかと〕指摘されましたけれども、問題があるというふうに仮定すればですね、解決・改善に取り組まれるのではないかと思っています。

Q
 仮定すればですか。

蒲島知事
 それ以上、知事として、「それが問題だから解決すべきだ」と、そこまで踏み込んで言える権限はありません。

Q
 知事はよくずっとここで教育委員会との距離のことはお話されますけれども、教育委員の任命権者は知事であり、教育委員会の予算編成権を持っているのは知事でいらっしゃる。やっぱりその金と人、人事を持っているというのは、ものすごい力をお持ちなんですよね。でも、その力をお持ちというか、それだけ責任もお持ちのはずなんだけれども、そこでちょっと距離を置かれるというか・・・、もうちょっと知事の思いというか、きっちりおっしゃっていただいた方がいいと僕らは思っているんですけれども。

蒲島知事
 では、記者さんは、私が立ち入ってと言ったらおかしいか・・・。(教育行政に)介入するべきだと思われますか。

Q
 こと細かく立ち入ってというよりは、やはりどうすべき、どういう認識を知事としては持っている、これぐらいの部分はやはり踏み込んでおっしゃってもおかしくはないと考えております。

蒲島知事
 では、県民の代表として言えることは、問題が発生した時、どの組織でもいろいろ課題ありますよね。その問題解決に取り組んで欲しいと(いうことです)。速やかに取り組んで欲しい、これは議会でもそう答弁いたしましたけれども、そういうことではないでしょうか。

記者からの質問に答える蒲島知事の写真

質疑応答

水俣病特措法の判定結果の公表について

Q
 水俣病の件なんですけれども、特措法の申請が熊本だけでも3万人超えてですね、判定作業も進んでいるんですが、判定の結果について、発表されないというようなことが水俣病の保健課の方から先日ご説明があったんですけれども、その結果についてはすべての判定作業が終わってからにするというふうなことになっておりまして、それだと今やっている判定作業がですね、検証ができない、もう1つは今申請に二の足を踏んでいらっしゃる方達の参考の情報にもならないというふうに考えているんですが、それを発表するというふうに考え直すご予定はありませんでしょうか。

蒲島知事
 これは途中の段階では発表しないけれども、全てが解決した後で発表するということで(あったと思います)。これはちょっと正確な答えが必要ですので、担当課長、今の(質問に対する)答えについて、よろしくお願いします。

【水俣病保健課長】
 水俣病保健課長でございます。前回、記者さん方にはご説明をしたんですけれども、それと同じでございます。県といたしましては、全ての判定が終了後に、それ〔※その結果〕につきましては公表したいという方針でございます。その理由につきましては、現在診断等を進めておりますけれども、円滑な実施に努めたいということです。それから、申請についてご躊躇なさる方があるというお話でございますけれども、説明会やいろんな方法を使って、ご遠慮なくご申請いただけるような環境づくりに努めて参りたいと思っております。以上です。

蒲島知事
 県の水俣病に関する最大の目標というのは、幅広い救済で、それが使命だと考えています。そして、診断や判定の円滑な実施も必要であるということで、判定が全て済んだ段階で公表すると(いうことです)。確定する前に数字を出すというのも、非常に誤解を生むのではないかなと思いますし、それから途中段階で出すことによって、検診機関の協力を得られないということなど、いろいろな要素があると思います。終わった後ですべて公表するということになっております。

Q
 先週の説明では、保健課としてそういう判断をしたというような説明をいただいたんですけれども、じゃ蒲島知事としても同じ判断であると考えてよろしいでしょうか。

蒲島知事
 はい。そうです。

質疑応答

社会保障と税の一体改革について

Q
 ちょっと国政に絡むんですけれども、松本龍〔※前防災担当相〕さんの騒動とかで、ちょっと霞んでいるんですけれども、社会保障と税の一体改革の中で、2010年代半ばに消費税10%というところが政府の中では正式決定されました。自治体としても、その10%の中に、自治体の更に積み増しもあるということなんですけれども、この政府の判断を、まず知事としてはどのように受け止めておられるかというのをお聞かせください。

蒲島知事
 この社会保障と税の一体改革について、その必要性についてはずっと言われてきました。ただ、知事として懸念があった、あるいは知事会として懸念があったというのは、地方の意見が入っていないんではないかということで、ギリギリまでこれは国との調整が行われたと思っています。今回は、国と地方の協議の場において、地方の意見が概ね反映されたと考えておりますので、一定の評価を持っています。

 ただ、財源の確保の方法であるとか、あるいは、いつこれが施行されるのかという期限が非常に不明確ですよね。そういう意味で、その不明確さというのが、まだこの問題の評価が確定していないところではないかと思っています。いつから消費税が上がるのか、期日が2010年代の半ばというのは、感覚的に考えると2015年だと思いますけれども、ただそれに経済的な状況も反映するというものも入っていますよね。だから、それ〔※景気の状況〕によって、またこれ〔※消費税の増税時期〕が変わるかもしれないので、その不明確さがあるということが、一体改革についての懸念材料ではないかと思っています。

Q
 そもそもで言うと、社会保障と税の一体改革、その中心的な施策である消費税の値上げということに関しては、知事としては・・・。

蒲島知事
 これは知事としても賛成だし、知事会としてもその方向です。地方の意見が入っていないということで、批判していたわけです。今回はそれが反映できた。ただ、これ〔※消費税〕は、方向性は決まって、2010年代の半ば、それに経済的な状況を反映するということでありますので、どのくらい確定的かというのはちょっと分からない。(期日が)確定的でないと何が問題になるかというと、それ〔※社会保障と税の一体改革〕に沿った施策ができない、地方が政策を行うことができないということだと思います。それから多分作る方〔※政治家・国の官僚〕も時間的緊迫性がないので、また延びることもあり得ると思います。そういう不明確さというのは、やはりなくさなくてはいけないんではないかと思っています。

 それでは以上です。

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