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平成24年 3月 7日 知事臨時記者会見
知事臨時記者会見
日時:平成24年3月7日(水曜日) 15時00分から
場所:知事応接室
会見録
知事臨時記者会見の会見録や報道資料等を掲載しています。
なお、知事の発言の趣旨を損なわない程度に読みやすいよう整理しています。
発表項目
水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件に関する福岡高裁判決について
質疑応答
水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件に関する福岡高裁判決について
発表項目
水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件に関する福岡高裁判決について
蒲島知事
この度の水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件に関する福岡高裁判決について、これまで判決内容及び判決の対応を慎重に検討を行ってまいりましたが、本日上告することを決断いたしました。
この決断に至るまで、いろんな視点から検討を行ってきました。その結果、水俣病の認定制度の根幹にかかわる今回の控訴審判決を受け入れることは、行政の長としては難しく、国との協議も踏まえ、熟慮の結果、上告もやむを得ないとの判断に至ったものです。
先日は、この場所で、短い時間ではありましたけれども、(被処分者の)息子さんである原告の方にお会いしました。長年のご苦労とご心痛をお聞きしました。そのお気持ちに触れて、私は本当に心が痛み、ご高齢である原告の方のことを考えると、「本当に上告していいのか、この判断でいいのか」と、何度も自分に問いかけました。
今回の決断は、悩みに悩んだ末の、行政の長である知事としての決断であり、私個人にとっては、とっても重く苦しい決断でありました
なお、上告受理申立の詳細な理由は、後日提出予定の理由書の中で明らかにしたいと考えております。以上です。
質疑応答
水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件に関する福岡高裁判決について
(幹事社)
2点お尋ねします。まず、「行政の長として、」受け入れることが難しいということでしたが、理由について、もう少し、判決のどの部分かをご説明お願いします。
蒲島知事
高裁の判決には、水俣病の認定申請の根幹にかかわるような問題が含まれております。それは、行政の長としては、受け入れないものです。
先程申し上げたように、個人的には、本当にお会いして、そしてご高齢であられ、これまでも苦労されてこられて、ここで上告、私がまさに訴えられた相手でありますので、上告という判断でいいのかと何度も思いましたけれども、悩んだ末に上告という決断をさせていただきました。
(幹事社)
もう一点、度々触れられていますが、県民である原告の方とお会いになって、当事者を抱える県として上告を断念して欲しいというお話しがあったけれども、その中で、行政の長としての判断を優先させたというか、決断に至ったことについてもう少しご説明を。
蒲島知事
当然、原告の方個人のことの悲しみ、そういうものは私も重く受け止めています。ただ、認定制度の根幹に関わりますと、多くのこれまでの過去のことも踏まえながら、多くの方々の生き方、そういうものにも影響していくと私は思っていますし、それから地裁と高裁との判断の違いもありますので、そういう意味も込めて上告して上級審の判断を仰ぐべきではないかと思った次第です。
Q
ちょっとだけ聞き取れなかったのですが、過去のことを踏まえたら多くの方の、何でしょうか。
蒲島知事
これは私が想像以上にですね、この根幹に触れる認定制度というのはですね、そういう重いものであるという意味であります。それは歴史的にも重いものであるということに触れたところです。
Q
その重い過去の歴史というのが、実は過ちのもとに構築されてきたのではないかというようなことまではお考えになりませんでしたか。
蒲島知事
今回の、私が先ほど述べたように、やはり私の想像以上にこの認定制度、認定申請というのか、この制度というのは重いものがあって、それの根幹に関わる問題である、それが今回含まれているということで、こういう判断をさせていただいたということに尽きます。
Q
今回上告された訳ですけれども、熊本県の知事、それから担当者というのは次々と変わっていきます。一方、原告の方は、ずっと同じ人が苦しんだままです。仮の話ですけれども、最高裁判決で棄却された時、その責任は誰が負うべきなのでしょうか。
蒲島知事
それは最高裁の判決が出た後で、どのような判決が出るかわかりませんけれども、そのifというね、それについてはまだ答えられません。
Q
最高裁の判断には従うべきだとは思いますが。
蒲島知事
先ほども言いましたように、そのifにはですね、この段階で答えることはできません。もしもということだとは思いますけれども、それについては、ここで答えることはできません。
Q
知事、今の質問はifではなくて、最高裁はいずれ判決を出すんです。出た判決に従うかどうかということです。
蒲島知事
これは制度上のものでありますので、そのことについてはどのような判断が出るかわかりませんので、その段階でお答えするしかないと、私はそう思いますけど。いずれ出るとはわかっていますので、はい。
Q
知事の判断が、こういう言い方でいいのかわかりませんが、告示前日の今日になった訳を教えてください。
蒲島知事
明日から私は、知事ではありますけれども、代理者を置きますので、これが、ぎりぎり知事としてこの場に立ち、知事として判断し、知事としてみなさんの質問に答える、ぎりぎりの時期、時間ということを考えて、今日にしました。
Q
2点お願いします。1点、想像以上に認定制度の根幹に関わるというご説明がありましたが、そこの想像以上にという部分は環境省の方からそういうふうに、根幹に関わる問題であるというような、連絡若しくは伝えられたこと、説明があったのでしょうか。
蒲島知事
それは環境省から言われたとかそういうことではなくて、私の方が、もちろん環境省と協議はしましたけれども、様々なラインを通して両者がそういうふうに一致していることと思います。
Q
環境省からそういう根幹に関わるという説明があったということでしょうか。両者で話し合ってですけれども、そういう制度に関わるという説明もあり、知事の方も考えて、両者でそういう判断をしたということでしょうか。
蒲島知事
両者の協議の結果、熟慮に熟慮をして、結局私が判断するべきものでありますから、協議はあっても最終的な判断は私の方でさせて頂きました。
Q
もう一点、先日の会見でも、細野大臣は、認定制度は否定されていないんだということを会見でおっしゃって、その考えについて、知事は、従うというようなことでしょうか。その論理に立つならば、今回の判決は否定されていないのであれば、根幹に関わるということを考えなくても、断念するという判断もあったのではないでしょうか。
蒲島知事
まあ、そういう考え方もできますけれども、私はやはり個々のケースで終わらない問題だと考えています。それは、認定基準そのものは環境省が所管しておりますので、環境省が判断すべき事だと思っておりますけれども、先ほど私が述べましたように、やはり今回の判決というのは、私自身は水俣病の認定制度の根幹に関わるものだと、そういうふうに捉えております。
Q
より具体的に。根幹に関わるというのを繰り返しおっしゃるんですけれども、認定制度のどの部分に関わってくるというご判断なんですか。いわゆる所管する大臣自体は、否定していない、否定されていないという見解まで出しているところに拘わらず、知事がそこに対して根幹に関わるとおっしゃるのは何処でしょうか。
(環境生活部長)
私の方で後ほど申し上げさせて頂いてよろしいでしょうか。
蒲島知事
ここでどうぞ。
(環境生活部長)
行政法である救済法の水俣病の認定処分というのを、救済法の趣旨、目的から当然、定説的な医学的知見に基づいて予め設けられた、具体的かつ明確な統一的判断条件によって判断されるべきところです。
しかし、今回の判決においては、民事の損害賠償請求訴訟のような形で、原告被告双方から提出されたすべての証拠に基づいて、個別具体的な総合判断を行っているということで、行政法でいうところの救済法の認定と違う判断をされているということで、今回そういった観点の根幹に関わる部分ということで申し上げております。
後ほど具体的にはもう少し詳しく話をさせて頂きます。
Q
知事、確認ですが、上告の断念も考えたが叶わなかったというとらえ方でよろしいですか。
知事
もう一回言ってください。
Q
上告の断念も考えたけれども、想像以上に認定制度の歴史が重かったので、それは叶わなかったということですか。
蒲島知事
まあ「揺れた」と言った方が正しいかもしれません。
Q
そうすると上級審でですね、何らかの認定基準の新しい基準というか、最高裁は何か認定基準は新しいものを示すべきだというお考えはありますか。
蒲島知事
最高裁の判断がどのようなものになるかわかりませんけれども、もし同じ判断であればそれを示さないと認定制度そのものは、県としてできなくなるのではないかということは想像できますけれども。あくまで、それは仮定、ifの話なので、ここではちょっと触れられないと思います。
Q
知事、先ほど高裁と地裁の違いがあるということを仰ったと思うんですけれども、大阪地裁では、控訴されておりますが、同じような判断が2回に渡って出て、基準そのものが否定はされていないと仰いますけれども、運用は確実に否定をされているわけで、しかも今回は高裁がそういう判断を出したと、2回に渡って。それに対してはどう思われますか。
蒲島知事
それぞれの裁判所でこのケースについて違った判断がされたというふうにとらえております。関連性とか、そういうご質問は何かの関連があるんじゃないかというご質問かもしれませんけれども、それについては、私は分かりませんが、ただ、裁判制度からして、それぞれの裁判所が、このケース、原告の方のケースについて、個々に判断をしたのではないかと私は思っております。
Q
多くの人に生き方に影響していく判決だというお話があったんですけれども、これは特措法の方を指してらっしゃるのか、それとも原告のお母さんのように、未検診で亡くなられた方を指しているんですか。
蒲島知事
判断基準は、長い間、この判断基準で判断されて、公健法というものが持続して維持されてきたんですけれども、私が言ったのは、特措法との関係を言った訳であります。
Q
原告の方は、これでまた長い間待つことになりますが、説明の方は知事自ら行ったんでしょうか、または今後行う予定はあるのでしょうか。
蒲島知事
説明といいますと。
Q
上告をするということについて、お伝えするという。
(環境生活部長)
それは私の方で。
蒲島知事
原告の方にですか。担当部署の方から既にお伝えしてあります。
Q
知事の方からお伝えするというお気持ちはないでしょうか。
蒲島知事
県としてお伝えしているということです。あと、その後の関連、それから背景については、これに続けて部長の方から。これに続けてやるんですか。
(環境生活部長)
はい。続けてやります。
Q
1点だけ。いわゆる本当に最後の決断をされたんですけれども、この決断が明日から始まる選挙戦に関してどのような影響があるとか、ご自分でお考えでしょうか。
蒲島知事
私は、選挙のことは一切考えたことはありません。全ての決断は、必ず、多くの方々、あるいは県民の方々の意に沿わない場合があります。私の決断はあくまで、県政にとって、県民にとって、どの判断が一番いいかという、その一点に絞られておりますので、選挙のことでこの判断が揺るぐことはありません。
Q
最後に1点だけ。先日も伺ったのですが、知事としては当然県政を行っていく上で県民の幸福量の最大化を掲げていらっしゃって、水俣病についても同じような視角から考えていらっしゃると思いますが、今回の上告もその枠組みに入っているのでしょうか。
蒲島知事
とてもそれが、先ほど行政の長としてと、それから個人としての考え方に大変な悩みがあったというのは、幸福量の最大化という観点でとても難しい判断をしなければいけなかったと、私は、今回とてもそういうケースの一つで、難しかったような気がします。
ただ、先ほど言いましたように、熊本県にとって、知事が一人で負いきれるような問題ではなく、すごく大きな問題というふうに判断致しました。