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平成25年 5月 2日 知事臨時記者会見
知事臨時記者会見
日時:平成25年5月2日(木曜日)13時30分から
場所:知事応接室
会見録
知事臨時記者会見の会見録を掲載しています。
なお、知事の発言の趣旨を損なわない程度に読みやすいよう整理しています。
コメント・質疑応答
水俣病訴訟控訴取下げについて
コメント・質疑応答
水俣病訴訟控訴取下げについて
蒲島知事
それでは臨時の記者会見を行います。去る4月16日の最高裁判決で大阪高裁に差し戻された水俣病行政訴訟について、私は、控訴を取下げ、裁判を終結することを本日決断しました。その後、直ちに原告の御遺族にこの旨をお伝えいたしました。併せて、環境省、法務省にも伝えました。また、事務方には控訴取下げの手続きを始めるよう指示いたしました。
亡くなられた原告御本人及び御遺族の方々には、申請から本日の私の決断に至るまで、長年にわたり大変な御心労をおかけしたことについて、申し訳なく思っております。この場をお借りして心からお詫び申し上げたいと思います。
私は、今回の2つの最高裁判決を厳粛に受け止め、様々なことを考える中で、知事として、政治家として、また、1人の人間として熟慮に熟慮を重ね、高度な政治的判断の結果として控訴取下げを決断いたしました。
その理由としては、今回の判決が、最高裁まで争った結果、溝口訴訟と同じ理由で破棄差戻しになったことを厳粛に受け止めたこと、また、34年の長きにわたり認定を求めてこられた原告及び御遺族に、これ以上御心労をかけ続けることは忍び難いと考えたからです。
控訴の取下げにより、認定を義務付けた大阪地裁の判決が確定いたします。よって、速やかに認定の手続きを行うことといたします。以上が私の本日のコメントであります。
(幹事社)
コメントの中にもありますけど、控訴の取下げ手続きを始めるよう指示しましたとありますが、これは具体的に言うといつになるのかということと、速やかに認定の手続きを行うとありますが、これはいつになるのか。
蒲島知事
スケジュールですか。
(幹事社)
そうです。知事がまた、溝口さんと同じように知事の判断で認めることになるのかどうかを教えてください。
蒲島知事
はい。私の判断ということは間違いありませんけれども、その間、様々な方々に相談をいたしました。この決断そのものは大変大きな決断でありますので、御意見を様々な方からいただきましたけれども、決断に至ったプロセスについては、私自身の判断でありますので、プロセスについてはコメントいたしません。
今後のプロセスでありますけれども、連休明けにはこの控訴取下げの手続きを進めます。それが完了次第、速やかに認定ということになります。
Q
手続きが終わって、認定の時期は大まかにいつ頃になるかということはわかりますか。見通しみたいなものは。
蒲島知事
時期については、部長の方から答えさせます。
環境生活部長
今、知事の方から話がありましたように、まず控訴取下げの手続きが必要です。これは裁判所の方にいたしますので、その手続が終了次第、速やかに行いたいという知事の先程のお話しの通りです。期限がいつということは、今、言いましたように裁判所に取下げの手続きを行ってからの話になりますので、今はお答えできません。
Q
大まかな時期についても難しいですか。
環境生活部長
連休明けということしか今のところありませんが、連休明けも非常に幅が広いので、今のところ、いつまで、いつとか目標そのものはできません。ただ、そんなに2、3週間かかるという話ではないと思います。
蒲島知事
速やかに。
Q
この中にある「熟慮に熟慮を重ねて、高度な政治判断」というくだりがありますが、国との協議を重ねられてきたと思いますが、国との協議の中で、何らか向こう側から反対の声があったのを押し切ったということなんでしょうか。
蒲島知事
熟慮に熟慮を重ねる段階で、当然国との相談といったらいいですかね、協議ではなくて。それについて色々なプロセスがありますけれども、そのプロセスはそれぞれに、とても私の決断に大きな影響をもたらした訳でありますが、最後は私の政治決断であります。私は自分でできることは自分でやるということでやってきましたし、相手があることはやはり相手と話し合わなければいけない。そういう意味では、この決断については私の判断によらせてもらったということであります。
Q
反発はあったんですか。
蒲島知事
それについてはちょっとコメントできません。最終的な決断は私の決断ですので、全ての責任は私の決断です。
Q
2つお伺いしたいのですが、1つは本日の決断になったというところで、日程的な部分で何かの意味合いを持たせられているのか。
蒲島知事
日程的というのは、例えば今日の決断ということになりますけれども、これはやはり熟慮を重ねるための時間が必要です。それと共に、もう1つは、やっぱりこれ以上長引かせて御遺族の方に御心労をかけてはいけないという時間的な問題、その中で今日ということを決断の日にさせていただいた訳であります。
Q
特に昨日、慰霊式典があって、それを待った上で今日決めたということですか。
蒲島知事
それもひとつの考慮の中になかったとは言い切れませんけれども、とにかくこれ以上長引かせてはいけないということと、それから、しかしながら適切な判断をしなければいけない。そのための時間、それも必要でありましたので、それが今日であったということであります。
Q
もうひとつ、昨日の慰霊式典の御挨拶の中で、一つ一つの課題に逡巡をして悩みながら向かっていくと、問題に対して向き合ってというふうな発言をされていたと思いますが、今回この問題に対して、課題に対して取下げを決断するとした大きな理由という点を改めて教えてください。
蒲島知事
コメントにもありますように、この決断というのは今回の判決というのが、最高裁で争った結果、溝口訴訟と同じ理由で破棄差し戻しになったこと、これを厳粛に受け止めたいということです。それから34年に及ぶ長きにわたって、認定を求めてこられた原告の方、御遺族の方に、これ以上御心労をかけ続けることは忍びがたいと、この2つが今日の多分お答えになるんじゃないかと思っています。
Q
知事すいません、熟慮された決断だとは思うんですが、その一方で最高裁で差し戻されたという現実を考えると、このまま争う、裁判を継続するというのはもともと極めて難しい状況だったと考えられるのですが、継続されるという選択肢も御検討はされたんでしょうか。
蒲島知事
政治家の決断には、全ての選択肢を射程においてその中で正しい判断をするのが政治家の行動であると思っています。その全ての判断の中で、それを最終的には選択の中でこの判断しかないということを一生懸命に熟慮に熟慮を重ねて、得た結論が今日の結論であります。それ以上のことは言えませんけども、全てが選択肢にあったということは正しいと思います。
Q
知事、コメントに厳粛に受け止めという言葉で表現されていますが、ということは溝口訴訟に対しては最高裁が認定を命じた、それに抗うことはできない、当然。しかしこの訴訟に関しては、差し戻して、最高裁判決は、感覚障害のみの水俣病を認めた、それを厳粛に受け止めて、今回、これを取り下げるということは、県としては、いわゆる最高裁判決後、初の県独自の認否の判断をされたというふうにもとれると思うんですが、そういうふうに判決の内容を受け止めて判断したと。
蒲島知事
判決の内容は、既に何度も私は言っておりますように、3点に絞られるというふうに思っています。1点は、迅速な認定のために、組み合わせは合理性があると。2つ目は、2つの組み合わせがない場合においても、都道府県知事は、総合的多角的に判断しなさいと、それの判断は裁判所が適否を判断することができると。その3点が私が読む最高裁の判断でありました。そういう意味では、この判決というものを厳粛に受け止めながら、総合的に高度な政治判断を行ったというのが今日この場で言えるところであります。今回の訴訟は、最高裁判決では差し戻しになったとはいえ、その理由は、認定を義務付けた溝口訴訟判決と同じ理由であったわけであります。その判決を厳粛に受け止めて今日の決断を行ったということであります。
Q
ということは、この判決で受け止められた3つのうちの2番目ですね、いわゆる複数症状の組み合わせがない場合は、都道府県知事は多角的総合的に判断すべしと、それを受け止めて今回、
蒲島知事
大阪地裁の判決を記者さんはしっかりと読まれていると思いますけども、大阪地裁の判決について、バックグラウンドを部長のほうから正確に報告させますので、それをベースにもう一度お答えしたいと思います。
環境生活部長
知事に代わりまして申し上げますけど、大阪地裁判決においては、四肢の感覚障害が認められ、口周囲もあるというふうな話もされてますし、それと処分時に明らかに認められるのは感覚障害のみであるけれども、構音障害、これは耳の方で、それから、運動失調も生じており、小脳性障害も存在したとうかがわれると。このあたりは我々の公的検診の結果、要するに症候の組み合わせというのではなくて、民間診断書等を採用した形での地裁の判断が出ております。
それで、今回は最高裁の方で総合的検討ということを判示されておりますけども、その総合的検討という同様の考え方で地裁レベルで総合考慮ということになっております。地裁がそういうレベルでございますので、感覚障害のみということでの判断ということでは地裁レベルでの判断はなかったということでございます。
蒲島知事
だから、今、部長が述べましたように、地裁の方でも、レベルは違うんですけども、総合的判断というか、それを症状の組み合わせという形で今、出されたというふうに受け止めましたけれども、だから総合的判断を求められていて、そのような求められ方が溝口訴訟判決では行われていると、その判決を厳粛に受け止めた結果、こういう判断をしたということであります。
Q
原告の御遺族の方には、知事は直接認定をする旨をお伝えになったのですか。
蒲島知事
認定書を持って行くというわけですか。
Q
いえ、まず、取り下げるということを御遺族の方にお伝えになったということですが、直接お電話等をされてお伝えになったということなんですか。
蒲島知事
いや、これは部長の方から。弁護団の方にですね。
環境生活部長
弁護団の方にまず、お伝えしております。
蒲島知事
私が聞いているのでは、御本人の連絡先を。
環境生活部長
明示されておりませんので、一応、窓口は弁護団の方になっておられますので、まず弁護団の方にお伝えは致しました。
Q
先程のお話ですと、地裁で述べられている感覚障害以外にですね、判決では、摂取状況、水銀摂取状況とか、症状の内容とか出現の経緯とか、総合的に判断されたのが、あくまで、今回訴訟で訴えられたことの、地裁での判決があったうえでの御判断ということだと思うんですけど、それ以外のですね、認定申請が今既にあってますけども、今後もあり得るでしょうが、そういう方々に関しては一件一件総合的判断をなさるということの宣言ということなんでしょうか。
蒲島知事
今、総合的判断のあり方、それから多角的な判断のあり方、これについては、環境省と、我々も積極的に参加して、それを作成、具体化の途中にあります。そういう段階で、今の質問についてはちょっとまだ早すぎじゃないかなと思っています。これが出来るまで、ちょっと今の質問についてはお答えできません。
Q
それは判断があったうえで決められると。
蒲島知事
そういう総合的な判断のあり方って非常に難しいです。地裁で求められたのが必ずしも一般化できるかというとそうでもありませんし。今後それは参考になるかもしれませんけど、それが認められたからこうだと、熊本県はこうだと、そういうことにはならないんじゃないかと私は思います。
Q
判決後ですね、県としては、これまでも総合的判断をしてきたと。裁判の中では少なくとも4例、そういう例がある。そういう御主張をなさってきましたが、今日、こういう結論というか、判断をされるということは、これまでの認定審査の中の総合的判断というのに誤りがあったと、それを認められたということでよろしいですか。
蒲島知事
その総合的判断の4例について、私自身は深く承知しておりません。それで、それも含めた形での総合判断のガイドラインといいますか、運用のあり方の具体化が進められているのではないかと思っています。だから、誤りであったとか、それが全く違ったとか、そういうことではないのではないか。そういうことを含めた形での総合的な運用のあり方を今後検討していくということになるのではないかと私は思っています。
Q
いや、今後はそれでいいと思うんですが、結局、この訴訟では、高裁・最高裁まで、ある意味県は争った訳ですね。自分たちの認定審査は間違いではなかったという主張をずっとこれまでは続けてこられた。しかし、今回、その地裁の判示したところ、プラス最高裁が判示した総合的検討を加味すれば、やはり認定だと。結論を変えられた訳じゃないですか。
蒲島知事
これはですね。
Q
それは、これまでの審査の仕方がやはり間違っていたと。
蒲島知事
その記者さんのおっしゃっているのは、個々の厳密な適用についてのお話でありますけれども、私が最初申し上げましたように、これは高度な政治的判断で知事の権限で行ったことであります。だから、その中に先程言いましたように、最高裁の判決の重要性、あるいはこれ以上原告の御家族に御心労をかけていいのかどうか、そういう総合的な判断を言ってますので、今、記者さんの質問のレベルとはちょっと違うレベルで判断しています。それは御理解ください。
Q
知事すいません。確認させて頂きたいのは、今後の、先程質問が出ましたけども、今後の見直しと言いますか、環境省とのやりとり、それから、そこの部分への県の姿勢を示したという理解は間違いと。
蒲島知事
それとは別に高度な政治的判断を行ったということでありますので、その運用の具体化についてはこれから進めていくことであります。ただそれは、全てが関連している訳ですから。
Q
私がお伺いしたいのは、知事が認定基準に、若干でも見直す必要性があるとお感じになられて打って出られたという理解でよろしいのか、それともですね。
蒲島知事
私が言ってるのは、最高裁の判決は、最初言いました3点であると。その中で一番都道府県知事に求められているのは、多角的総合的判断にしなさいと。そのためのガイドラインと言いますか、その具体化というふうに環境大臣はおっしゃっていますけども、それが進められなきゃいけないと。そういう部分をこれから進めていくということであって、今、言ったように基準を変えろとか、そういうふうな飛躍はまだしてほしくないです。
環境生活部長
すいませんが、あと1、2点で納めます。よろしくお願いします。
Q
つまり、この判決のいわゆる個々個別具体的なものに対して知事は政治的判断をされ、その判断というのが、まあ一般化はしないんだという理解でよろしいでしょうか。
蒲島知事
先程言いましたように、最高裁判決溝口訴訟を厳粛に受け止めた結果、それも一因ですよね。それと、これ以上御遺族を苦しめていいのか、というのも2つ。そういういろんな人間としての判断、あるいは知事としての判断、行政の長としての知事の判断です。あるいは政治家としての判断。それを全て高度な、ものすごく大きな感じでの方程式なんですけど、それを知事の決断で今日は皆さんにお知らせしていると。それは様々なつながりが色んな面であると思いますけども、今日皆さんにお伝えしたかったのは、このF氏の問題については、今日の今日まで熟慮に熟慮を重ねて、高度な政治的判断をもって、今日の決断に至ったということであります。
環境生活部長
よろしいですか。では、もう一人だけお願いします。
Q
訴訟に関しては高度な政治的判断で御決断されたという趣旨はわかったんですが、ガイドラインが具体的に示されていない、あるいは再審査についての見通しが立っていない以上、今、未認定とされている方は、訴訟をしない限り、お金かけて訴訟をして時間をかけない限り認定されないというのが実情だと思いますが、それに対して知事として、あるいは人間として、高度な政治判断をされるおつもりというか、そういう心づもりはないんですか。
蒲島知事
結局、今日のこのF氏に関するもう一つの大きな判断の理由は、最高裁の判断以外に、やっぱり時間をかけちゃいけないというのが、判断の理由の一つでもあります。だから、今後に関して、どのようなことが起こってくるのか、あるいはガイドラインがどのようなものになるのか、そこまで関連づけては、今日は考えて決断した訳ではありません。それを考えて決断するのが必要であると、それが合理的であるという考え方もあります。そうしたらもう延々と決断の時間がかかっていくという声もありました。もっともっといろんなこと考えて全て考えて、そして決断を下すべきだということもありますけども、一方では人間としての蒲島郁夫、政治家としての蒲島郁夫は、早くこれについては決断を下すべきだというふうに考えて、5月2日、今日、皆さんに決断の方向性と理由について臨時記者会見を行った次第であります。
環境生活部長
これで終わります。
Q
Fさんの御家族に直接謝罪される。
蒲島知事
それは、Fさんの御家族の御意向が一番大きいかと思っています。私がここでコメントするというよりも、御意向をお伺いした上でそれに従うのが一番正しい道じゃないかなと思っています。
環境生活部長
よろしいですか。これで終わりにします。