本文
平成22年 7月21日 知事定例記者会見
日時:平成22年7月21日(水曜日) 午前10時00分から
場所:知事応接室
発表項目
質疑応答
- 「くまもと農業経営塾」について
- 水俣病認定申請棄却処分に係る大阪地裁判決について
- 赤潮被害について
- 今後の治水対策のあり方に関して
- 水俣病認定申請棄却処分に係る大阪地裁判決について
- 今後の治水対策のあり方に関して
- 水俣病認定申請棄却処分に係る大阪地裁判決について
発表項目
水俣病認定申請棄却処分に係る大阪地裁判決について
蒲島知事
本日の発表項目は4項目あります。
まず第1番目に、水俣病認定をめぐる裁判に関し、県としての考え方について申し述べます。
7月16日、大阪地方裁判所で出されました水俣病の認定申請棄却処分の判決に対する対応について、国との協議を含め慎重に検討して参りました。
その結果、昨日、大阪高等裁判所へ控訴することを決定しました。なお、控訴状の提出は、本日か明日になる見込みです。
控訴理由としては、今後国と協議して法律的、論理的な整理をしていく必要がありますが、主たる理由としては以下のとおりです。
公健法による補償を受ける基準、いわゆる認定基準について、平成16年の関西訴訟最高裁判決で見直しの判示がなく、また本件とは同様の棄却処分が争われた平成9年の福岡高裁判決では、認定基準が妥当と判断されています。
しかし、今回の判決内容はこれらの判例と異なっております。そこで、さらに上級審の判断を仰ぐ必要があると判断致しました。
原告の方はこれまで長い間、苦しく辛い時間を過ごされてきたものと推察致します。そのことを思うと、「控訴はせずに、この方を直ちに認定すべきだ」というご意見は一人の人間としては理解できないわけではありません。
しかし、今回の判決は原告一人の問題ではなく、水俣病認定制度の根幹に関わる問題であります。そのため県知事としては控訴という決断を致しました。
次に、今後の被害者救済についての方針について申し上げます。
平成16年の関西訴訟最高裁判決を真摯に受け止め、国と県は水俣病被害者の政治救済に鋭意努力して参りました。そして昨年は、国会において超党派で「水俣病被害者の救済等に関する特別措置法」、いわゆる特措法が成立致しました。
この特措法は、救済を必要とする方々を最高裁判決を踏まえた幅広い症状で水俣病被害者と位置づけ、さらに補償面でも最高裁判決の損害賠償額に見合う形で救済する仕組みであります。現在、この救済手続きに着手し、迅速な救済実施に向けて努力しています。
そして重要なことは、この救済を早期に望まれておられる方々が大変多数いらっしゃるということであります。
県としては、その期待にしっかりと応えていかなければならないと考えております。今後も、特措法や和解による救済を引き続きしっかりと推進して参ります。
発表項目
五木村の今後の生活再建を協議する場の開催について
2番目は「五木村の今後の生活再建を協議する場」の開催についてであります。
皆様には既にお知らせしておりますが、「五木村の今後の生活再建を協議する場」の第1回会議を、本日21日の午後1時から五木村役場で開催致します。
今後の具体的な進め方など、事務的な議題を議論する今回は、通常会議として事務方で開催致します。今後、節目となる会議においては拡大会議を開催し、私や国土交通副大臣も出席する予定です。
「協議する場」は、国、県、村の三者が一体となって、スピード感を持って取り組んでいく必要があると考えており、県としても村の再建に全力で取り組んで参ります。
発表項目
「くまもと農業経営塾」の開講について
3番目は、「くまもと農業経営塾」の開講についてであります。
来る8月19日に、「くまもと農業経営塾」を開講致します。当日は「塾長講義」として農業に対する思いなど、私自ら直接、生徒たちに話をしたいと思っております。
この塾は、農業版の松下政経塾として、新しい時代のくまもとの農業を背負って立つリーダーを育てたいと思っております。
意欲ある若手農業者に仲間とともに研鑽を重ねていただき、自らの農業経営の実績をベースに、更に飛躍してもらいたいと思っております。
人的なネットワークづくり、新たなビジネスチャンスの獲得など、卒塾後も理想の実現に向け、自らの道を切り開(拓)いていけるよう、講師陣ともども応援していきたいと思っています。
塾はゼミ形式の講座、それから公開講座の2本立てであります。
ゼミは、公募による20名程度の生徒に対して全国的にも著名な講師陣を招き、全7回、公開講座を含めますと11回にわたり濃密な講義を行います。
本日から8月4日までの2週間、ゼミ生を募集致しますので、奮ってご応募くださるようお願い致します。
発表項目
高校生による東京大学研修について
4番目は、高校生による東京大学視察研修についてであります。
講演のために熊本を訪問された東京大学の小宮山前総長との懇談をきっかけに、昨年3月に「熊本県と東京大学との連携協力に関する覚書」を締結致しました。
この覚書に基づき、昨年度に引き続き2回目となる「東京大学視察研修」の概要についてお知らせします。
お手元の資料にあるとおり、7月28日から7月29日にかけて、40人の高校生が東京大学を訪問致します。内容は、東京大学教授等による講話、最先端の研究施設等の視察等となっております。また、東大工学部9号館屋上にある、「熊本テラス」において、県内高校生と東大スタッフの交流会も開催されます。7月28日には私も同行する予定です。
この研修により本県の青少年が科学技術研究への関心を深めるよう期待しております。
以上が発表項目であります。
(幹事社)
水俣病以外の項目で質問があれば、よろしくお願いしたいと思います。
質疑応答
「くまもと農業経営塾」について
Q
農業経営塾についてなんですけれども、農業版松下政経塾ということで、知事の思い入れ等もあるかと思うんですけれども、改めてこの塾に期待すること、くまもとの農業にどういうふうに役立っていってほしいかというところを改めてお願いします。
蒲島知事
私も30年近く松下政経塾の教師、役員を務めておりました。
そこではたいへん効果的、或いは素晴らしい研修(を行っている)と思っていました。
知事になって、熊本の農業の発展のために、日常生活を共にする松下政経塾とは少し違いますけれども、素晴らしい講師陣の下で、20人という非常に厳選された若手のリーダー達が一緒に集まり、そして農業の展望を語り、講師とともに研修する、そういう塾が必要ではないか。あるいはそういう塾を熊本が持つことができたら素晴らしいのではないか、ということで松下政経塾に似た農業経営塾を考えました。
いよいよそれが実現することになりましたので、意欲のある農家の方々の応募を待っているところであります。
Q
県内の農業にどのように役立てていってほしいか。また塾生の方にはどういったことを期待したいと思い描いていらっしゃいますでしょうか。
蒲島知事
将来の農家のリーダーを養成するというよりも、既定の概念にとらわれず、農業そのものを切り開(拓)いていくような人材、そういう人達を20人募集します。その中から農業のリーダーが育ってくれればいいと思っています。
ここでのカリキュラムは、理論面と実践面のバランスを考慮しながら、しっかりと教えていただく講師陣が大事だと思っています。私も政経塾で長い間教えてきましたけれども、そこで塾生と一緒に泊り込んで教えた経験から、そのように一体となって取り組んでいただくような講師陣を探し当てたところです。きっとこれは成功するのではないかと思っています。
そういう意味で、具体的にどのような方がこれから育つかというのは、現在のところはっきり分かりませんが、(すばらしい農業のリーダーが育つ)可能性があると私は思っています。
そういう既定の様々な価値観なり価値判断を最初から与えるような塾ではあってはいけないような気がします。
Q
知事が考えられているのは、いわゆる農業をやる、新規参入するというよりも、農業をやっている人が、どのように売っていくか、マーケティングしていくか、そういう経営の面に力を入れる。こういう考え方ですか。
蒲島知事
マーケティング、経営、あるいは社会参加も含め、その仕事以外から得られる様々な刺激(を受けることで)、彼らが将来のくまもと農業のリーダーとなってほしい。いわゆるリーダーシップの面で、自分の家で農業をやるだけでは得られないような素晴らしい刺激を、この農業経営塾で学んでほしいというのが一つ。
もう一つはやはり仲間との連携です。一緒に入った塾生達は一人の力は弱いかもしれないけれども、連携して何かをやった時にはとても強い力が発揮できるのではないか、と私は思っています。だから仲間の間の市民力と言いますか、そういうものが望ましいと思っています。
ただ、塾ですから、あくまでこれは自ら学ぶものです。私が塾長になっていますけれども、私の考えを押しつけるということではありません。
私の希望としては、リーダーシップ、仲間意識、それから農業とは違ったいわゆる異業種との交流による農業の発展、可能性の爆発、そういうものを望んでいるところです。
質疑応答
水俣病認定申請棄却処分に係る大阪地裁判決について
(幹事社)
発表項目と水俣病に移りたいと思いますけれども、水俣病で幹事社から1点。
先程「控訴をせずに、直ちに認定するということは、一人の人間として理解できないわけではない。」というようなことをおっしゃられて、葛藤もあったのかと伺いましたけれども、それにしてはかなり異例の早い段階での控訴になると思うんですけれども、その辺についてですね。
蒲島知事
知事になって一番感じることは、様々な決断をしなくてはならないということです。また、その決断は大変悩ましいものが多いものです。今のご質問は、その割には決断が早かったのではないか、そういうご質問だと思います。
私は、決断する時には、早い遅いといったことは問題ではないような気がします。やはり適切な判断であるかどうかということが一番重要だと思っています。
この判断は、実は1人の原告の方々だけの問題ではなくて、認定制度そのものの根幹に関わるものであります。原告の方に対する個人的な思いとしては、「本当に控訴すべきか。」という迷いもありますけれども、認定制度全体の根幹に関わるものという観点から、やはり早い時期に控訴という決断をすべきではないかと思いました。
もう一つは、特措法による政治救済を待っておられる多くの人を動揺させないということも、私はとても大事ではないかと思いましたので早い決断を行いました。
それから、当初5月にはこの判決が出る予定でしたけれども7月まで延期されました。その間に様々なケースについて、いろいろな判断がありますので、その場合どうするかといったシミュレーションなどの事前の準備ができていたということも、とても大きいと思っています。
16日に大変驚きをもってこの判決を聞いたわけですけれども、その前の事前準備がありましたので16日から見ると早いようだけれども、5月からの準備ということであれば、適切な判断のための時間もあったのかと私は思っています。
(幹事社)
じゃ各社さんよろしくお願いします。
Q
上級審の判断を仰ぎたいということで控訴理由を述べられましたけれども、これから先は仮の話になるんですが、何年先になるか分からないんですけれども、高裁、最高裁でこの判決が覆らずに、最高裁でも原告を認定すべきというような判決が出た場合、その時に知事はどういう態度をとるべきか。それが1点と、最高裁で判決が覆らなかった時に、原告の女性に対してどういう責任を負うべきか。この2点についてお願いします。
蒲島知事
第1点目については、今、控訴中でありますので、高裁でどうなるか、あるいは最高裁でどうなるかということに関して、この段階でコメントというか、どのような方向を示すかということは言えません。その時々に、最適な判断をしていくということになっていくと思います。
2番目の質問は、もう1度お願いします。
Q
最高裁で、結局この判決が覆らなかったと。
蒲島知事
そのままということですね。
Q
(判決が)そのままだった時、原告の女性はさらに長い期間待たされることになるんですが、知事として何か負うべき責任があるんじゃないかと考えるんですが。
蒲島知事
最高裁でこのままの判断ということであれば、裁判でそのように決着するということですからそういうことです。
Q
司法判断が確定した時。
蒲島知事
判断が確定したのであれば、今のままというのは地裁と同じであるという。
Q
地裁と同じ判決が最高裁でも確定すると。
蒲島知事
その段階で県も国もそれに対応していかざるをえないと私は思っています。
ただ、それを前提条件に今どうしますかということについては答えられません。
Q
今の質問に関連しますけれども、別に高裁、最高裁にいかなくても、この女性の場合、関西訴訟の最高裁判決で、法律的にいろいろ言うと、いろいろな議論があると思いますが、まず損害賠償が認められている人、それもチッソが原因者として、そしてさらに今回の地裁判決で、もう明確に水俣病と認めろと。いわゆる司法上は2度にわたってそう言われている方なんですけれども、それを更にまた上級審に控訴すると。その人間としてという思いがありますけれども、もっと原告に対して、何かそういう思いというか。ございますでしょうか。
蒲島知事
私はその原告の置かれている状況に対して、人間として大変深い思いがあります。
そういう思いを持ったとしても、今回の問題は原告1人の問題ではなく、認定制度の根幹に関わる問題だと私は考えています。また同時に、過去の判断とは異なっておりますので、やはり高裁、最高裁の判断を仰ぐ必要があると思っています。判断としてはそういう判断で今回も行いました。
先程言いましたように、知事になっていろいろな判断を行いましたけれども、判断一つ一つがとても苦しいものです。しかし、全体的な認定制度、これからの特措法の対応、すべてを考えてみますと、やはり上級審の判断を仰ぎたいというのが私の決断であります。
Q
原告1人の問題ではなくて、全体に関わるのだというところを重視されているわけですけれども、その論理を押し進めるならですね、やはり今、認定患者3000人位、95年政治解決が1万1000人位、そして現在の救済策で2万7000人位が申請をしてこられていますけれども、その更に周辺といいますか、県全体として不知火海沿岸にどれだけの被害者がおられるのかということについては、まだ一度も全面的な調査というのはされていないですよね。
だから今のロジックが裁判でその原告一人の問題ではないので、もう少し全体を重視されるということであるなら、それはやはり全容の把握というところまでいくことが、論理の一貫性になるということになる。
蒲島知事
今おっしゃったのは、まず調査をして現状把握をして、それを元に基準をきちんとすべきではないかという質問だと思うんですけれども、今回の判断は特に苦しい判断だったものですから、マックス=ウェーバーの「職業としての政治」を読んで、政治家はどうあるべきかという原則論に立ち戻って決断をしました。
やはり政治に奉仕するという気持ち。それがないと駄目だというのが一つ。もう一つは、責任をもってやるべきだと。3番目に判断をきちんとやるべきだということ。
最もやってはいけないことは、自分がどのように社会に印象付けられるかによって判断をしてはいけない。これが最もマックス=ウェーバーが嫌うところでもあります。
理想というのはとても魅力的で、まさに今、言われたことだと思うんですけれども。
Q
理想ではなくて熊本県も、関西訴訟の最高裁判決の後、提案しているんですね。
蒲島知事
その当時、私は知事ではありませんでしたけれども、私としては先程の3つのことから、できないことは言わない、言ったことはきちんとやる、そのような判断でやっています。
この特措法での(救済が)進んでいる現状と、特措法の(救済を望まれる)方からの手紙を頂きましたけれども、「今回の大阪地裁の判決の報道を見て、会員に不安が広がっております。自分達の希望ははじめから平成7年と同じ政治解決であると。被害者には高齢者が多く、時間がなく、今回の判決で特措法の救済が中断することが一番心配であります。被害者の苦しい本心を知事が分かっておられるからこそ、被害者を1日も早く救済していただきたい。」という現実もあるのです。
確かに時間はかかっても、きちんと調査をして水俣病とは何かを検証し、そしてそのレベルに応じて被害額を計上すべきだと(いうことは)分かります。ただ、私が今置かれた状況の中でそれを判断できるかというと、私はその判断をとらなかったということです。
Q
鳩山首相が5月1日に来て、「水銀条約」を「水俣条約」と名付けるということに関して、知事も非常に賛同され、水俣に誘致できればという話がありましたけれども、いわゆる微量水銀汚染の問題から発生している(条約等の)話と、いわゆる地元では水俣病問題で、解決に向かっているという言い方もできるかもしれませんけれども、今回の知事の上級審判断を仰ぐという判断では、非常にそこにズレというか違和感を覚えるんですけれども、それはいかがでしょうか。
それは多分、諸外国から見てもそういうことだと思うんですけれど。
蒲島知事
私はこの水俣病の早期解決、皆が納得できる解決を進めることは知事としての私の責任だと思っています。その時々の決断もそれに沿ってやっています。
水俣病、特に水俣市の復興ということ、あるいは日本が水俣病の経験をどう世界に活かすかということを考え、水俣で水銀の国際会議を開くということに賛同致しましたし、それに向けて県の方も必死に取り組んでいるところです。
水俣病の早期解決と、それを踏まえた国際会議の開催、それは私にとっては一連の流れの中にあります。一つだけ違うとすれば、大阪地裁の判決の前に(誘致を)考え、水俣病の解決後に是非この水俣で国際会議を開きたい、そういう流れの中にありました。今回の大阪地裁の判決が下され、私の最初の記者会見の時に、大変な驚きだということを言いました。今はそれにどう対応するかというところで今回の判断を行ったというところです。
Q
先程、時間がかかっても被害を検証すべきということは分かるが、その判断はとらなかったという、不知火海の健康調査のことですが、今後も県としてやっていこうというお考えはないということですか。
蒲島知事
それについては、国と話し合いながらどうするかについて決定していくという方針が決まっていますので、健康調査については国との連携の中で考えていきたいと思っています。
Q
今回の大阪の弁護団、医師団が環境省に出された要請書、要求書の中に、まさに熊本県が平成16年に出した水俣病対策の中に盛り込んでいる不知火海沿岸地域の健康調査について、予算措置を講じてくださいという項目が入っているんです。
当時は、まさに県の方が国よりも先駆けて調査をやりたいという積極的な姿勢を出されたんですが、少なくとも今、蒲島知事は、そこは県が飛び出すというのではなくて、国と連携した中でやれるのか、やれないのかを検討するということなんですか。
蒲島知事
特措法の中にこの文言については、国と県が連携して考えると書かれていると思いますけれども、平成16年のケースと、私が置かれているケースは(経過した)時間の中で少しは変わっていると思います。いずれにしても先程から述べていますように、健康調査に関しては国と連携してやると。なぜならば、県だけでやれる規模と財政状況ではないということでもあります。
質疑応答
赤潮被害について
Q
赤潮が八代海で非常に広がって、もう去年を上回るような被害になりそうな状況になっているんですけれども、県として漁業者の方に対応とか支援とか、もしくは知事が現地に行かれて視察されるとか、県としての対応はどのように考えておられるのかというのをお伺いしたいんですけれども。
蒲島知事
去年も赤潮が発生して大変心配しました。今回の赤潮は、今までと少し違うというふうに言われています。少し早めに来て(広がって)いると。そういうことで粘土を播いて赤潮対策をやっていますけれども、なかなか効かない。それから大規模であるということを聞いております。
県としてできることを最大限やっていきたいと思っています。例えば金融面、それから被害情報に関しての情報提供、あるいは赤潮対策について国への要望、そういうものを含めながら、隣の県の鹿児島県、あるいは長崎県とも連携し、漁業関係者からどのようなことを要望されているかということを丁寧に聞いて対応していきたいと思っています。
ただ、去年も思いましたけれども、赤潮というのは人の能力を超えたところで起こっていますので、予防と発生した場合の対策が間に合ってないなと。(原因究明や予防対策は)これからの研究を待たなくてはいけませんけれども、できるとすれば、赤潮(被害)に遭われた方々がどのようにして経営を再建できるかということを含めながら検討していきたいと思っています。
県としては、こういう(被害が発生した)時に、きちんとした手を打てるかどうか(が重要)と思っていますので、できる限りのことをやろうと思っています。
Q
今後何らかの漁業者への支援などを考えていくということですか。金融、経営について。
蒲島知事
例えば、農業漁業共済に対して早く共済金を払えるよう要望したり、限られてはいますが、県としては出来ることを最大限にやりたいと思っています。
質疑応答
今後の治水対策のあり方に関して
Q
ダムで1点ですけれども。先週、国交省の有識者会議がダムによらない治水についての検証をしてダム計画との比較をしてくれと。国交省はそれを各事業主体に求めるということらしいです。熊本県内では立野ダムと七滝ダムが直轄で、補助ダムでは五木ダムが県の所管になると思いますが、この検証について、特に県の五木ダムについて、どういう態度で臨まれるつもりか。
蒲島知事
全体的な国交省の方針(である)、ダムによらない治水を進める方向で考えるべきだということに関して、熊本県はモデルケースとして川辺川ダムをその形(方向)で検討しています。これは、実際の議論よりも、むしろこれをきちんと実証することが大事だと思っています。そういう意味で、五木ダムを含めながら、ダムによらない治水という国土交通省の方針を尊重しながら考えていかなくてはならないと思っています。
質疑応答
水俣病認定申請棄却処分に係る大阪地裁判決について
Q
水俣で確認ですが、特措法で早期に救済するというのを県知事として進められるというのは確かに大事だと思うんですが、先程もおっしゃったように、今回の判決は認定制度、ひいては水俣病政策の根幹を否定するような大きな判決である以上、現場を知る県知事として、この判決をきっかけとして救済補償制度をトータルに作り替えていく、そのために国に対して善処するというお考えはありますか。
蒲島知事
現場を知るからこそ、今回の超党派による特措法の解決をこれまで進めてきました。
今のご質問をかみ砕いて言うと、なぜ国に県の方から認定基準の見直しなどを含めて働きかけをしないのかということだと思います。
県の方針としては、国と連携を強くとりながら、平成16年の最高裁の判決を踏まえて特措法はできていますので、現在の認定基準と平成16年の最高裁判決を踏まえた形で、特措法に基づく救済策が取られています。
先程(手紙)もご紹介しましたけれども、特措法での救済を待っていらっしゃる方は、特にご高齢の方が多いので、その期待に応えなくてはいけないということから、国と県が強い連携の下で同じ方向に進んでいるということが大事ではないかと思っています。
例えば、認定基準の見直しを国に求め、それがどのような結果になるかということに対して、知事として責任を負えるかということもあります。
そういう意味では今は国と連携してやっているという段階でありますので、新たなスキームをこうすべきだと県の方からプロポーズ(プロポーザル)(提案)するということは考えていません。
Q
認定基準に関しては、これだけ裁判(判決)や被害者の主張がある中で、被害者の認定基準に関して変えた方がいいのではないかとか、変えるべきだという判決が出ている。そもそも、こういうことが出てくる自体おかしいのではないか、認定制度根本の基準が揺らぐというのがおかしいんじゃないかと。認定基準は妥当だと思っていらっしゃるから控訴するわけでしょうけれども、本当に妥当なんですか。
蒲島知事
認定基準というのは、どの認定基準ですか。今、2つあります。この水俣病のコアの部分と、その周りの入らない人達。これは特措法では水俣病被害者と呼んでいますけれども、今はその2段階でやっていますが、それは政治救済という形で出ており、それが妥当かどうかというご質問だと思いますけれども、私は知事として、その方向が妥当だと思います。
質疑応答
今後の治水対策のあり方に関して
Q
先程のダムの話に戻るんですけれども、国の指針としてコストを最重視するという、ざっくりとした指針が出たかと思うんですけれども、知事から見て、その根本的な考え方について安全性とか、いろいろな評価方法を取られる中でコストを最重視するという考え方についてのご意見を。
蒲島知事
私も川辺川ダムの決断の時に、様々な要因を検討しました。そして、コストというのも勿論大事ですけれども、最終的にダムによらない治水を考える時に、川辺川ダムの決断においてコストというのはあまり大きな要因ではありませんでした。
つまりX(乗数エックス)の係数が少なかったと言ったらいいのでしょうけれども、むしろ自然、環境を守りたい、あるいは特殊なローカルな価値観を守りたい、そのことによる幸福量の増大の方が、コストの減少による幸福量の増大よりも大きいのではないかというふうに思いました。段々分かってきたんですけれども、ダムによらない治水というのも結構お金がかかります。だからコストだけがダムによらない治水の大きな要因であると私自身は思っていません。
ただ、今おっしゃったように、審議会(有識者会議)の方向としてはそういうことはあり得るかもしれません。それは一つの要因であると思うけれども、支配的な要因ではないと思っています。
質疑応答
水俣病認定申請棄却処分に係る大阪地裁判決について
Q
水俣病の控訴審ですけれども、原告は84歳です。せめて審議を迅速に進めようとか、そういう配慮をしようというお考えはございますか。
蒲島知事
審議を早く進めよう、控訴を早く出したのもその一つだと思いますけれども、先程言ったように原告の方が大変ご高齢だというのは私もよく知っておりますし、そのことについて心を痛めているのも確かです。
ただ同時に、熊本県知事としては水俣病全体、それから認定基準、水俣病認定、特措法による解決、特措法を待っていらっしゃる方々、先程手紙のご紹介もしましたけれど、いろいろなことが判断の基準になってきます。
審理を早めていただければ、それはそれで私は嬉しいと思いますけれども、その一環として控訴も早くしたということです。
Q
先程の知事のお応えで、ちょっと一つ尻切れとんぼだった点で、例の国際会議は、今こういう判決が出たけれども、国際会議を熊本、もしくは水俣で開きたいという気持ち、思い、方針は変わりない。
蒲島知事
一切変わりありません。
Q
それと、52年判断条件について、海外からの批判に耐えうると、今の段階でもお思いかどうかというのを最後聞かせてください。
蒲島知事
海外からの批判に耐えうるかどうかというよりも、私が今置かれている状況の中で判断するとこれしかないということです。
先程言いましたように、与えられた条件の中で、判断、責任、それから政治全体の奉仕という気持ちの中でやらなくてはならない。言いましたように、自分がどう思われるかどうかということで判断するのが最悪だというのがマックス=ウェーバーの政治家像でもありますし、私もそういうことを教えて参りましたから。
Q
つまり国と対立しないで、特措法の救済を進めていく方が優先だというような考え方ということですかね。
52年基準が妥当かどうかということを考えるよりも、現時点では国と対立せずに、今始まっている救済の方を進めていく。
蒲島知事
私がここで控訴の判断を下したのは、今度の地裁の判断で52年判断が否定されたということであれば、より上級審の判断を待ちたいということです。