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平成22年 4月 9日 知事定例記者会見

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0006480 更新日:2010年4月9日更新

日時:平成22年4月9日(金曜日) 午前10時00分から
場所:知事応接室

発表項目

新年度のスタートにあたって

質疑応答

発表項目

新年度のスタートにあたって

蒲島知事
 早いもので、平成20年4月16日の県知事就任から2年となり、私の任期も折り返しとなりました。本日は新年度のスタートにあたって、私の3年目の県政運営に対する思いと、具体的な取組みの一部についてお話したいと思います。

 2年前に私が知事になった時は、まず「夢」と経済的価値以外の価値を大事にする「総幸福量」という概念を掲げて熊本県政を始めて参りました。3つの困難を乗り越えて、4つの夢に向かって歩くというのがマニフェストの内容であります。

 具体的に解決すべき3つの困難は、「財政再建」「川辺川ダム問題」「水俣病問題」の3つです。これらの問題に関しては、時間的緊迫性をもって決断の政治を行い、一定の道筋をつけることができました。

 ただ、まだ乗り越えるべき課題は多く、今後とも問題の解決に向け、精一杯の努力を続けて参りたいと思います。

 私の残りもあと2年、1年が1期だという思いでやっております。そういう思いで、これからの3期目も、最初の6か月が大事だという思いで進めて参りたいと思っています。それは自分自身に、それから県庁全体に時間的緊迫性を持たせることです。時間的緊迫性を持たせることによって問題の解決を促進するという狙いもあります。

コメントする蒲島知事の写真

 これから打ち出す施策やその進捗状況に関しては、定例記者会見で積極的に公表して参りたいと思っております。

 施策の取組みの基盤となる組織体制についても、全国をリードする高齢者施策を推進する「長寿社会局」、リーディング産業を育成する「新産業振興局」、農産物のブランド化、農業への企業参入を促進する「農業振興局」、地場企業の振興や雇用対策を推進する「商工労働局」など、新たな局を設置し、強力な布陣を敷いております。

 知事の任期が折り返しを迎えるにあたり、熊本の可能性をさらに大きく飛躍させるため、本年度は5つの方向性に沿って事業を重点化しました。

 第一に、農林水産業の可能性の大きな飛躍です。本県では農林水産業の振興を県政の最重要課題の一つに位置づけ、積極的に取り組んでいます。

 これまで耕作放棄地や休耕田の有効利用に向け、全国に先駆けて補助制度をつくり、子どもたちの農業体験学習への取組みや、米粉パンの学校給食への導入にも力を入れてきました。今後は高濃度トマトやひのしずく、デコポンなど、熊本イチ押しブランドの生産量倍増に向け、全国に誇れるブランドを創りあげていきたいと考えています。また地元の水や米を生かした球磨焼酎づくりなど、農商工連携の拡大にも取り組んで参ります。

 農林水産物をはじめとする県産品の国内及び海外における認知度向上と販路拡大、また海外からの観光客の誘致拡大を図るため、シンガポールや東京などで私自らトップセールスを行っております。さらに本年度から新たに、農業版の松下政経塾とも言うべき「くまもと農業経営塾」を設置し、本県農業を将来的に担っていくトップリーダーを育てて参ります。

 2番目の重点項目は、リーディング産業による商工業の振興です。

 県では「太陽光発電普及率日本一」を目指しており、先日6日に三菱商事、三菱総合研究所と包括協定を締結しました。太陽光発電など、新エネルギーや環境関連の産業育成に向けた連携です。

また、5日には大手旅行会社JTBと立地協定の協印式を行い、コールセンターを熊本市に開設することも決まりました。

それから、今年度新たに実施する「リーディング企業育成支援事業」を本日から募集開始します。この事業は、本県産業をリードする地場産業、地場企業を育成するための政策です。この事業の特色は4つあります。

 1番目は、金融機関や産業支援機関によるサポートチームを編成すること。2番目は、認定した企業を3年ないし5年にわたり、継続的かつ集中的に支援すること。3番目は従来の2倍の1000万円を上限とする補助金を創設すること。そして4番目は、平成23年度中に付加価値の高い企業を10社つくり出すこと。以上を目標としています。詳細に関しては、産業支援課にお尋ねください。

 このように新しい年度がスタートするなかで、躍動する熊本を象徴するような半導体産業の急回復や景況感の上昇などがメディアに報じられています。

 3番目は「高齢者が主役の地域づくり」です。高齢者の方が生きがいを持って、安心して暮らせる地域社会を実現するため、高齢者が担い手となる地域活動や起業の取組みをモデル的に支援します。例えば、農林水産物の加工・販売、街並みの保存・再生、農家レストランや農家民泊の運営、買物支援や配食サービスなどの取組みを想定しています。経済的な豊かさや生活の質の豊かさも備えた持続可能な地域コミュニティづくりを推進していきます。

 また、昨年度は「熊本モデル」と呼ばれる認知症疾患医療センターの整備を行いましたが、認知症サポーターの人口割合日本一となる取組みをはじめ、今後とも熊本県ではどこよりも素晴らしい認知症対策に取り組みたいと思っています。また、特別養護老人ホームなどの基盤整備を進めていき、施設入所が必要な高齢者の方が、施設に入所できないという状況をゼロにしたいと考えています。

 4番目は、「新幹線全線開業と熊本の拠点性向上」です。新幹線全線開業、熊本の拠点性向上は県政の重要課題であります。いよいよ来年3月に九州新幹線が全線開業します。県民総参加でおもてなしの気運を醸成するとともに、新幹線沿線で菜種やレンゲなど景観作物を遊休農地等で栽培するイエロープロジェクト事業を展開して参りたいと思っています。

 新幹線全線開業と併せて熊本市の政令指定都市化という大きな動きがありますが、私が何よりも嬉しかったのは、熊本駅の東口駅前広場をデザインされた西沢立衛(ニシザワリュウエ)さんが、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞されることです。駅舎のデザインを担当された安藤忠雄氏も同賞を既に受賞されています。世界的な賞の受賞者お二人のコラボレーションで駅舎と駅前広場がデザインされることは、国際的にも誇れるものであり、駅そのものが観光の名所となることを期待しています。

 5番目に「進学・就業者等若者の「夢」の実現」についてです。

 私学の振興に向けた時習館構想を発表していますけれども、この時習館構想により、特色ある私学づくりに取り組んでまいります。

また、経済的理由で進学を断念する子どもをゼロにしたいというのが私の願いです。先日生活保護家庭の高校生が進学を諦めていたけれども、私の呼びかけに呼応していただいた取組みによって熊本県立大学に進学する夢が叶ったとの報道がありました。また、ご本人から私宛に直接お手紙をいただきました。その中に、将来は公務員となって、生活保護家庭のお世話をしたいという内容が書かれておりました。また、担任の先生に泣きながら就職という進路志望を述べたところ、担任の先生がこういう制度があるよと教えてくださったことによって進学できた、と。手紙にはその喜びが溢れるように書かれておりました。私の思いがこのような具体的な形になったことを実感することができ、まさに政治家冥利に尽きるものと思います。

 冒頭で述べましたように、蒲島県政の基本は、夢と県民の総幸福量の最大化です。州都もその夢の一つですが、夢に向かって一歩踏み出し、120%の努力をすることによって夢に到達することができるのでないかと思っています。

 主観的な評価ですが、2年前と比べると、今は3つの困難を乗り越え、県民の皆様と多くの夢を共有することができたのではないかと考えています。残すところあと2年、「歴史に刻まれる熊本県」となるかどうか、それは夢への挑戦の結果次第であります。県民の総幸福量の最大化を目指して熊本県政はこれからも挑戦してまいります。

 以上が私のコメントと感想です。

質疑応答

水俣病問題について

(幹事社)
 幹事社から2つお尋ねをします。

 一つ目が7日に環境大臣とお会いになられましたけれども、県庁の方で、5月1日の申請開始に向けてどのような準備状況か、現状をお尋ねしたいということと、2つ目が6日の三菱との包括協定なんですが、具体的なものはまだ決まっていない、その意思の確認というものですけれども、今後どういうふうに熊本県に対してメリットをもたらしてほしいかという知事の期待を教えてください。

蒲島知事
 4月7日に環境大臣を訪ねました。そこで第一に水俣病の解決に向けたご努力に感謝するということ。2番目に、これまでも県と国は強い連携のもと、一緒にこの問題の解決に力を注いで参りましたけれども、これからも一緒にやっていきたいということ。もう一つは、熊本県は5月1日から実際にその事務を始めなくてはいけません。そういう意味で、なるべく早く閣議決定ができないものかということもそこで触れました。そして最後に熊本県の財政状況は大変厳しいものがありますので、この負担割合に格別な配慮をお願いしたいということが主な内容であります。

 5月1日から具体的にどういうことをしなくてはいけないかというと、県の課題は主に3つあるのではないかと思っています。一つは、救済策の周知徹底、それから検診体制の整備、検診医の確保、それから判定検討会の設置などです。特に平成7年の政治解決時の反省を踏まえまして、救済措置の徹底、周知徹底に努めて参らなくてはいけないと思っています。ただ問題は、5月1日から始めるにしても具体的な閣議決定がまだ行われていません。いろいろなバリエーションでわが県庁では、シミュレーションをしています。しかし、そのシミュレーションはどの時点から始まるかで随分違ってきますので、なるべく早く閣議決定をしていただきたいと思っております。いずれにしても5月1日までに救済手続きが開始できるよう、時間的な厳しさはありますけれども、準備に最大限の努力を図っていきたいと思っています。これが被害者の方のためでもあるし、早期救済のためでもあります。

 それから、この決断の部分と行政を進める部分というのが2つありまして、この行政を滞りなく、5月1日から進めていかなくてはいけないと思っているのが今の状況であります。

質疑応答

県と三菱商事(株) (株)三菱総合研究所との連携協定締結について

蒲島知事
 三菱商事との提携でありますけれども、具体的な提携の内容については皆さんのお手元にコピーは来ていますか。それを見られると分かりますけれども、かなり包括的で、かなり具体性があります。特に新エネルギー、環境問題にこれから発展するであろう産業について、県と三菱商事と三菱総研の3者が協力していくというのは、多分、日本でも初めての試みではないかと思います。三菱商事の経験と資金力、それから三菱総研の知識というんですかね、エクスパーティ、それから熊本県の資産、これをいかに3者で活かしていくかということで、大変大きな可能性を秘めた提携ではないかと思っています。そういう意味で、この提携をどう活かすかをこの3者で、これから一生懸命考えていかなくてはいけませんけれども、将来に向けて大きな種をまくことができたのではないかと私は思っています。

記者からの質問に答える蒲島知事の写真

質疑応答

水俣病問題について


 水俣病の件に関してなんですけれども、地元水俣市では鳩山総理大臣の5月1日の訪問ということに大きな期待が今高まっている状況なんですけれども、環境大臣との先日の会談の中では、その件については具体的な要請というのは知事の方からされたんですか。

蒲島知事
 5月1日に是非鳩山首相に来ていただきたいということはお願いしましたし、それからその時の話では、本人もそういう希望を持っていらっしゃるということであります。ただ外交日程との調整がありますので、現時点では決められていないということでした。


 「本人も意向を持っている」というのは、鳩山さんが意向を持っているということが小沢さんから伝えられたということですよね。

 今、その5月1日の救済手続き開始前に、早く閣議決定をしてほしいという話がありましたけれども、5月1日に救済手続き開始のためには、いつまでに閣議決定をしてもらいたいと思っているんですか。

蒲島知事
 4月7日に私が環境大臣を訪ねた際に、来週中には、という考えを示されておりますけれども、なにしろこれは国のことでありますので、私もそれ以上のことは答えることができません。なるべく早くということになります。早く閣議決定して具体化すればスケジュールが確定します。今は県庁内で様々なバリエーションに沿ってシミュレーションを行っているところです。


 先程、平成7年の時の反省に立って広報など周知を考えなくてはいけないというふうに知事おっしゃられましたけれども、改めて平成7年の時に、知らなかったという人がいたりとか、いろんな問題があったと思うんですけれども、どういう問題があって、その反省を踏まえて、どういう点を今後その新救済策の時に気をつけていきたいというふうに思っていらっしゃいますか。

蒲島知事
 基本的には、この救済措置の周知徹底ということになります。だから平成7年の反省というのは、この期間と周知の方法、様々なことについての反省を持っております。具体的にはどういうことをやるかというと、ポスター・チラシを作成する。それから皆さんの力を借りて周知徹底、それから新聞折り込み等の広報、住民説明会、それらを行っていきたいと思っています。

 県内では対象地域、県外では東京、大阪、名古屋、広島、福岡、そういう所で具体的に住民説明会等を行わなくてはいけないのかなと思っています。


 手続き開始は5月1日というふうに、ほぼ皆周知の事実のようになっていますが、手続きの締切りはいつというふうにお考えでしょうか。

蒲島知事
 手続き締切りについては正確に答えなくてはいけませんので、環境生活部長の方からお答えします。

(水俣病保健課)
 水俣病保健課でございます。終期というのは受付期間のことでございますか?これにつきましてはまだ国の方で検討されているところでございまして、おそらく閣議決定の中で示されるものと思っております。

 先程お尋ねがありました平成7年の反省として、ご承知のとおり平成7年の時には、平成8年の1月末から7月1日まで、約半年間の受付であったかと思います。これもこの期間が半年間で短かったために、知らなかった、あるいは知った時にはもう救済受付の窓口が閉じていたということがございまして、これも踏まえて期間が閣議決定の中で示されるものというように聞いております。以上でございます。


 知事としてはどれぐらいの期間をとるべきとお考えですか。

蒲島知事
 まだ、閣議決定の内容が分かりませんけれども、この平成7年の反省から踏まえれば、なるべく広く救済するためには長く、ただし、期間がないと何も進みませんから、一番効率的でかつ幅広い期間をお願いしたいと思っています。具体的に何ヶ月にしてくださいということはありません。


 知事として国に閣議決定前にどれぐらいの期間は最低限とってくれという要請はされていないんですか。

蒲島知事
 それについては、行っていません。なるべく広く、それから等しく救済してほしいと要請しています。


 認定審査の方なんですけれども、今は環境省からの要請で棄却についての処分を保留しているような段階になっていますけれども、それは例えば5月1日に始まった段階で、また棄却処分が始まるみたいなことというのは考えられますか。どの辺で処分を、保留をやめるというふうな今お考えはありますか。

蒲島知事
 棄却処分についても、課長の方からお願いします。

(水俣病審査課)
 水俣病審査課でございます。処分につきましては、まだ具体的な解除については決めておりません。環境省とは協議はもちろん始めておりますけれども、環境省との協議を踏まえたうえで県として判断をするという形で考えておりますので、現時点ではまだお答えできる状況ではないということでございます。


 大体県の見積もりで何人ぐらいの方が対象になるとみておられますか。

蒲島知事
 その見積もりは、この段階でコメントできません。

 今の対象というのは、今回の救済措置の対象ですか。


 そうです。

蒲島知事
 それについては何かありますか。

(水俣病保健課)
 結論から申しますと、新規の方がいらっしゃいますので、どれぐらいになるかという見積もりはすることはできません。ご承知のとおり、認定申請をなさっている方、それから保健手帳をお持ちの方が熊本で2万5~6000人。この方々は申請をなさる可能性があるというようには受け止めております。あと新規の方がどれぐらいかというのは予測することはできません。以上でございます。

蒲島知事
 はい。


 コメントの中で、強く国と連携したいという言葉が出たんですけれども、和解協議の中で、救済対象者の要件として出生年、年代、地域の問題が最後までいろいろありました。県としては国と連携してということであれば、環境省というか国が提示したものに同意しているというか、あるいは妥当だと考えているというように受け取ってよろしいでしょうか。

蒲島知事
 今度の対象ですけれども、地域要件と症候要件、それから水銀の曝露を示すデータなど科学的なデータがある方については総合的に判断されるということになっています。私の方としては救済すべき被害者の方が可能な限り広く救済されるようということを願っておりましたので、それで国と一緒にやっていきたいと思っています。

記者からの質問に答える蒲島知事の写真


 その発想というのは、いわゆる被害者側に立証責任を負わせるという所にありますけれども、それでもよろしいというお考えですかね。

蒲島知事
 被害者側というよりも、科学的なデータと言えば水銀値のデータ、それから毛髪のデータもありますし、それから母親の毛髪の水銀値のデータなども含めて、それがあれば地域要件と症候要件と併せて総合的に判断するということが今の考え方として出されており、妥当だと思っています。


 現実的には、その40年50年前のへその緒であるとか、体毛であるとか、そういうものを持っているという方はほとんどいらっしゃらないのではないかと想像するんですけれども、そういう証明を被害者に持って来いというそういう態度になるんではないかと思うんですけれども、それでもやはりそれは妥当だというふうにお考えですね。

蒲島知事
 被害者側に持って来いということと、それが妥当じゃないということ、その説明がよく分かりませんけれども、そうではないという方法というのはどういう方法ですか。


 つまり地域要件であるとか年齢要件を緩和すれば、そのエリアに入った人はそういう科学的なデータを自分から持って来なくても救済対象にしましょうとなるわけで、でも一定の線引きは必要とは思いますけれども、そこに合理的な理由があるとはなかなか見れない。でも環境省としては、ここに線引きを今回してしまっているんです。それを県もやはり追認しておられるということであるから、それは妥当だというふうにお考えですね。

蒲島知事
 現在の合理的な判断としては、そこではないかと思っています。

質疑応答

外国人地方参政権について


 先日の全国知事会議で、外国人参政権のことが話題にあがって、石原都知事以下反対多数ということになったかと思いますけれども、そのうちの中で3名の知事の方が、付与してもいいんではないかというお考えを述べられたと聞いておりますけれども、そのことに関する知事の真意というのはいかがなものかということをお願いします。

蒲島知事
 あの時、皆さんが知事会に参加されておられたかどうか分かりませんけれども、今回の外国人の地方参政権の意見交換というのは、国でこの問題の議論が始まっている状況を踏まえて、知事会として国民的議論を深めるために、その一環として意見交換を行いました。様々な意見が出されました。そして私もその中の一人として意見を申しましたけれども、最終的には個人的な意見として出しました。知事会としてはこの国民的議論を更に深めていくべきだという結論であります。

 それが知事会としての結論でありますので、私もそれに沿って更に国民的議論が深まることを祈っております。


 今の段階では付与すべきではない、付与すべきであるという個人的なお考えというのはいかがですか。

蒲島知事
 個人的な意見として表明は致しましたけれども、最終的には知事会の判断として多様な意見があるので、国民的な議論を含めて慎重に対処すべきだという結論にいたりました。


 議会は反対するという意見書を提出しておりますけれども、そのことに関してはどのようにお考えですか。

蒲島知事
 それも多様な意見の表明、議論の深まりの一つの動きであると思っています。

質疑応答

新党結成の動きについて


 知事すみません、ちょっと話が変わるんですが、国政の方で与謝野馨さん、平沼赳夫さん、自民党を離党して明日にも新党を立ち上げるというような動きがあります。これについては、県の選出国会議員の中で園田博之さんもこの新党に加わるということで、今東京の方で協議をされていらっしゃるようなんですが、まず一点としては、政治学者という立場もおありかと思いますが、今回の新党を結成する動きというのを、どのように評価、ご覧になっているのかということ。それと園田代議士が自民党を離党して新党に加わるということで、例えば県政への影響でありますとか、懸念なり期待なり、その点をどのようにご覧になっているかということをお聞きいたします。

蒲島知事
 一般的に政治学的な意味を申しますと、二大政党制というのはもう少し強固なものであるかなとは思っておりました。しかし、この2つの政党に対する不満、それが今出ている状況であります。前の日本新党やさきがけが出た時も同じですけれども、政治に閉塞感が出た時に、この政治不満が噴出してきます。その政治不満の受け皿として新党が出てくるというのが一般的な現象であります。でももう一歩を踏み込んでいくと、この不満が収まった時に、新党はどうなっていくのかというところまで考えていくと、この二大政党制を基本とした小選挙区制の下では、なかなか新党が永続的に議席を保有して力を発揮していく状況は難しいかなと思っています。

 ただ短期的には、自民党と民主党の勢力が拮抗していれば、小さな政党であってもキャスティングボードを握ることができますので、短期的には影響を発揮することはできると思います。そういう意味で国民の不満、有権者の不満が今噴出している中で多くの新党が出ているというのは、政治不満の現れではないかと分析しております。

 それから園田代議士の件についてですけれども、園田代議士はさきがけの時も自民党の時も、霞が関、それから議会の方々にとても高い評価を受けられていた議員です。私どもも特に園田先生が幹事長代理の時に大変お世話になりました。

 それから水俣病問題でも与党PTの中で本当に主導的な役割を果たされ、この解決に大きな貢献をされています。そういう意味で、園田先生はどこの政党に入っても尊敬を受けられる先生であると思いますので、熊本県のために尽くしていただけるものと思っています。


 新党の構成メンバーとかを見て、例えば清新さといいますか、そういうものがないとか、インパクトに欠けるんじゃないかという、新党に対する非常に厳しい意見と言いますか、世論の見方というのもあろうかと思うんですけれども、新党を立ち上げ前で恐縮なんですが、ご覧になっている印象としてはいかがでしょうか。新党そのものの動きに対して。

蒲島知事
 1990年の始めに、やはり同じような新党ブームが起きました。そしてゼミ生と共に「新党全記録」という三巻本を書いておりますので、新党の研究については相当しました。

 先程も言いましたように新党というのは一時的な不満を吸収する、そういう役割がありますので、その後がどうなるかということはとても大事だと思います。やはり政界再編の目となるのか、あるいはどこかの政党に吸収されていくのか、あるいは消えていくのか、様々なパターンがあると思います。

今の新党現象と、それから90年の初頭の新党現象との違いは、やや高揚感が足りないような気がします。有権者とそれからメディアの皆さんも含めて、物事を変えようという高揚感、それは一つの要因としては、二大政党制がもう確立しているというところがあると思います。


 もう一点、関連なんですが、杉並区の山田区長とか、いわゆる首長による新党という動きも最近ちょっと出てきているようなんですが、知事ご自身、熊本県という行政機関のトップにおられる、まさに首長という立場なんですけれども、こういった首長方がそういう新党を作ってというような、これについてはどのようにご覧になっていますか。

蒲島知事
 それは一つの新党のあり方としても、可能性としてはあるのではないかなと思っています。山田さんも中田さんも私はよく知っておりますし、前からそういう希望がありました。


 知事が加わるとかというお考えはいかがですか。

蒲島知事
 一度だけですが、そういうお誘いもありましたけれども、私の目標は熊本県民の総幸福量の最大化ですから、今の知事のままでいきたいと思っています。

質疑応答

新熊本駅の名称について


 知事、JRの新幹線熊本駅の新幹線口の名称について、トップ会議で「白川口」と「新幹線口」というようにJRが決められて、そのように知事がご説明を受けられて、知事は納得されたというようになっておりますけれども、一般県民、市民から非常に不評な声もよく聞くんですよ。知事はどういう説明にどう納得されたのかというのを、県民も知りたいところだと思います。

蒲島知事
 私も、もっと歴史にちなんだ名前があってもいいんじゃないかという思いで、そこには臨みました。応募作品の中に、「白川口」の方はピッタリするものがありましたが、もう一つの西口の方に、これだというのが見当たらなかったような印象がありました。

 それでその後JRの唐池社長の方から「新幹線口」に至った理由について説明があり、熊本以外の方が分かりやすい名称がいいのではないかということで新幹線口としたということでありました。命名権は当然JR側にあると思いますので、そういう理由であればということで、その時に皆さんが納得したということです。

質疑応答

荒瀬ダムについて


 もう一点だけお願いします。荒瀬ダムなんですが、先日、総合交付金の計画を提出されました。それとともに、いわゆる撤去に向けた部分ということでの資金確保について、交付金の話と重なる部分もあろうかと思うんですが、国に対する新たな働きかけでありますとか、例えばまた前原大臣に直接お会いして国から県に対しての支援というものを求めていくのか、その撤去資金の確保の見通しなど、今後のお考えを。

蒲島知事
 もう既にご存知だと思いますけれども、ダム撤去に社会資本整備交付金を活用するための申込みは行っています。これは初めての交付金でありますし、多分こういうダム撤去という形での申込みというのは歴史上初めてではないかなと思っています。

 今、国交省と協議を行いながら、この計画の提出と、その事後の調整を行っているところです。そういう意味では、この申請書が公平に取り扱われて、この交付金を受ける可能性もあるのではないかと思っています。そうすれば、この撤去に係わる費用の確保の一端として私どもも大変撤去しやすい環境になるのかなと思っています。

 もう一つは撤去技術についてですけれども、委員会を立ち上げておりますので、この委員会の中で国交省の研究者の方、それから整備局の方も入っていただいて、また国交大臣も以前の記者会見で、技術的なものについては協力するということを明言されておりますので、協力していただけるのではないかと思っております。

記者からの質問に答える蒲島知事の写真


 交付金の整備計画の中で、ダム本体のいわゆる撤去というか解体工事費は、交付金の対象の中から外されましたよね。それはなぜなのか。7月に国交省がまとめると言っているところに、その費用が見込まれるという何か担保があるから、そこは外したのか、どういう理由でわざわざそこだけ外したのかというのがちょっと分からない。

蒲島知事
 ダム本体撤去と社会資本整備の兼ね合いといいますか、そこがダム撤去本体とは目的が合わないのではないかと判断したところです。


 それは県の判断ですか。

蒲島知事
 今年度の8月だと思いますけれども、夏までに国がとりまとめられる老朽化した工作物の取扱い方針の中に、役割を終えた工作物として荒瀬ダムを対象として加えることをお願いしたいということで、ダムの本体撤去についてはあえて入れませんでした。

 私もいくつか研究費の申請をしたり、補助金の申請をしたケースもありますけれども、やはり妥当な目的に沿った申請書じゃないとなかなか受け入れられないので、その部分については入れませんでした。しかし28億円という大変大きな金額でありますので、それをどう評価されるか大変期待を持ってみております。