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平成21年 7月 2日 知事臨時記者会見
日時:平成21年7月2日(木曜日) 15時30分から
場所:知事応接室
臨時記者会見
水俣病被害者救済法案与野党合意について
(司会)
それでは只今から、水俣病被害者救済法案与野党合意に関する記者会見を開催いたします。
会見時間は約20分程を予定しております。
よろしくお願いいたします。
冒頭、知事の方からコメントがございます。
蒲島知事
はい。本日の与野党協議において、最終合意に達したとの報告を受けました。
今回の合意は、1日も早い救済を待ちわびておられる多くの被害者の方々にとって、また政治救済を求めて3年余り活動を続けてまいりました県にとって待ち望んだものであります。
これまで強力なご支援やご努力をいただいた県議会、園田座長をはじめとする与党PTの方々、及び最後のご決断をいただいた与野党の方々に対し深くお礼を申し上げます。
今後、国会での議決をいただくには、衆参両院の議員のご理解とご賛同が必要です。
水俣病問題の現状をご理解いただき、すみやかに今国会で法律を成立させていただくよう切に希望します。
救済方針の確定と救済策の実施については、多くの課題があり、ある意味ではこれからが始まりであるという覚悟を新たにしております。
県としては国の機関と連携し、救済策の早期実施に取り組んでまいりたいと思います。
以上が私のコメントです。
(司会)
ご質問をお受け致します。
まずは幹事社の方からお願いいたします。
(幹事社)
幹事社のKABです。1点だけ。
知事はその法案の方、文書の方はご覧になられましたでしょうか。
蒲島知事
はい、持ってます。
(幹事社)
ご覧になられて感想といいますか、ひと言いただきたいんですが。
蒲島知事
感想は今のコメントと重なりますけれども、県にとっては3年以上にわたって政治救済策を求めてまいりました。
そして、最初はなかなか困難性を伴ったということですけれども、今年に入ってこのような形で急速に進み、そして与野党合意が本日得られたということはとても喜ばしく思っています。
(司会)
各社さん、どうぞ。
Q
NHKです。今回の合意形成にいたるまで、知事ご自身が果たした役割、ご自身でどう思われていますか。
蒲島知事
私自身が果たした役割というのは、それほど大きくないのではないかと思います。
これまで県が3年半にわたって政治解決を求めてきた努力、それからそれに応じられて与党PTの園田座長が非常に頑張ってこられて、そして与党案を出されたと。それに対して民主党の方から、野党案も出され、その後でこの協議が行われました。
私ができたとすれば、地元の声を聞いて、それをしっかりと永田町の与野党協議の場で届けることができたということが一つと、それから与野党協議というのは、政党の枠がありますので、なかなか与党と野党のとても、何というんですかね、交流が難しい部分があります。
そのくらい政党政治というのは政党の枠組みが強いわけですから、そこで知事として野党の幹部の方に働きかけることができたのも少しは助けになったのかなと思っています。
それから分社化の大きな問題は、チッソが水俣からいなくなるのではないかという、そういう問題がありました。そこでチッソの会長にお会いして、この法案ができた後も、分社化した後もチッソが水俣から出ていくことをしないで欲しいと、それに対して後藤会長から『そういうことはしない』という表明を受けたこと。
最後に、これは地域指定解除の問題ですけれども、水俣の方に入って、地元の方々の懸念というのは地域指定解除、この問題がとても大きかったと私は感じましたので、この地域指定解除を削除してほしいというお願いを座長宛にしました。
最終的にこのことを聞いてくださったことによって、与野党合意にちょっと進んだのかなと思います。
いずれにしても、私がやったことは大変限られております。
これまでずっと続けられてきた3年半にわたる努力の賜物だと考えております。
Q
逆に果たせなかった役割はございますでしょうか。
蒲島知事
果たせなかった役割といいますと、そういう意味では私の持っている力を、最後の方には最大限に出し切ったのかなと思っています。
考えられる、想定される努力というのは自分自身ではやったのかなと、それがどれくらい効果を持ったかに対しては私自身の判断は分かりませんけれども、努力はしたと思います。
Q
知事、RKKです。
この法律によって、加害企業チッソが将来消滅するという、そういう仕組みができ上がったわけですけれども、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
蒲島知事
私が、加害企業チッソという、もともとそういうふうな意識が私自身も東京にいた時に強かったような気がします。
地元に入った時に、実はそうではなくて、多くの方が、特に水俣の方、被害者の方も含めてチッソと共存したいという気持ちが強いことに驚きました。
むしろチッソが水俣に残ることをとても望まれているという意味で、だからチッソがこの救済策にシステムの中に入るということ。そのための分社化じゃなかったかなと私は思っていますし、それから分社化ということが起こっても、チッソは水俣に残り続けるという意味では3つの枠組みがあると思います。
一つは、チッソがこれまで投入した資金とか、人材、そういうものが他にも持っていっても同じものができるかどうかという状況的な問題。
二番目は、知事に対して、チッソの会長が分社化してもチッソは水俣を出ていかないという声明。
それから今回法律の中で相当なしばりがかかっています。
そういう3つのことから、私自身はチッソは水俣から出ていかないというふうに思っています。
Q
一部被害者、そして被害者団体の中には、加害企業が消滅することで免罪につながるとして、これは被害者ではなくて、加害企業の救済ではないかという批判がありますが、その点はいかがでしょうか。
蒲島知事
加害者の救済という、最初は与党PT案が出た時に同じような批判が民主党からも出ておりました。
その自分達の案は、被害者救済であると、しかしながら次第に与党PTの中で出された案が与野党協議の場に持ち込まれることによって、次第にその側面が希薄化していって、そして今日も民主党の方が記者会見で言ってらっしゃると思いますけれども、これは被害者救済法案というものを明解に前文で示し、被害者救済法案であると、そのための分社化、それを認めたということを言っておられますけれども、そういう側面がずっと強くなってきたような気がします。
私はそういう意味でこの与野党協議が行われて、この法案が正当性をもち得たのではないかなと思っています。
今、二つのそういう大きな議論があると思います。
被害者救済なのか、あるいは加害者救済なのか。当時はそういうところから始まっていって、与野党協議が進むことによって、私は被害者救済の側面が極めて強い法案だと、被害者救済のための法案だと思っています。
Q
加害企業救済という批判はあたらないというふうにお考えですね。
蒲島知事
考えることはそういう考えを持たれる方はおられるかも知れませんけれども、私自身は、これは園田座長を含めて被害者救済のための法案だと思っています。
Q
知事、被害者救済法案の明確化とか救済範囲の拡大というのは、民主党との協議の中で与党が折り合ったという面があるようですが、これはむしろ県の方がこういうふうにしてくださいといって変えていくべきことだったんじゃないかなと私は思うんですけれども、その辺についてはどう思われますか。
蒲島知事
当然与野党協議の中で、この様々な調整が行われていました。
じゃ県は何もしなかったのかという意味のご質問かも知れませんけれども、与党PT案が出た段階から、様々な面において県も要求をしてきましたし、それから県議会の方も超党派で様々な要求をしてきました。
最終的な要求としては私の方からさせていただいたのが地域指定解除の問題、それから分社化における厳格な要因を法律に書き込むこと。それから新保健手帳の問題ですね。
そういう意味では私どもも、多くのことを要求してまいりました。
当然その間に与野党調整が、あるいは協議が行われておりますけれども、与野党協議の中でもそういう要求が行われ、合意が形成されたと。最終的にはこれが被害者の方々に、より受け入れられやすい形になったのではないかと私は信じています。
Q
知事もう一点、今後、多くの課題がありというような文面がありますけれども、県として今後国と一緒にどういうことを今からしていこうと考えがありますか。
蒲島知事
この法案ができたから、すべてが解決するということではありません。
法案ができることによって多くの方々が救済される道ができてきたということだと私は思います。
それで県としてはまだ、例えば胎児性の患者さんなんか、私、水俣に行って、大変まだ苦しんでいらっしゃるし、それからご家族の方もとても苦しんでいらっしゃる。その方々にどう対応していくか、あるいは地域振興をどのように対応していくかと。
そういう一つ一つが水俣病問題の解決の道ではないかなと思っておりますので、国と連携しながら水俣病問題の解決をするとともに、この法案のすみやかな実施、それからこの法案が周知徹底できるような情報公開、そういうことをやっていきたいと思います。
Q
被害者団体との協議とかの場には県は加わらないんでしょうか。
蒲島知事
当然県の職員の方は、常時水俣の方に詰めておりますし、それからそういう体制になっております。
Q
すみません。知事、この合意に至っても一部患者団体は非常に反発しておられるというのは十分ご理解されていると思いますけれども、その中で県の今後の課題の中で知事自らがそういう反発されている団体との交渉にあたられるとか、そういう場面に出ていかれるというようなお考えはございますか。
蒲島知事
今この段階でどういうことができるか、ちょっと私もお答えすることができませんけれども、そういう場面がくれば、そういうこともあり得るというふうに考えております。
ここで私が県としてできることというのは、やはり新たな救済策が加わりました。これまでは認定申請、そして裁判という非常に困難な道しかなかったわけですけれども、新たな政治救済策が出たことによって、これを早くに実施していくということが大事だと思っています。
それからこの情報の提供、これもとても大事だと思っています。
それプラス認定申請や裁判の道を選ばれなかった方々に対しても県民のお一人お一人として、県は真摯に向かい合っていく所存であります。
それからもう一つは水俣病問題というのは、被害者救済問題に限定されるわけではありません。先程も述べましたように、法律成立後も様々な被害者の方々の生活支援、地域振興、そういった大事な課題についてもきちっと対応していきたいと思っています。
ここで是非皆さんに言っておきたいことは、熊本県は今後も水俣病問題から逃げることなく、向き合い続けていきますし、またこの問題を未来永劫忘れてはいけないと考えております。
このことは、きっと県会議員の方々、国、そして与野党の国会の方々も同じであると信じております。
Q
知事、将来の話なんですが、紛争の解決をもってチッソが解散した場合に、それ以降に公害問題だとか、新たな被害が出てくると、その責任の主体は県か国になると思うんですが、そのあたりはお考えになりますか。
蒲島知事
この問題は、最終的に分社化への決断というんですかね、それは環境大臣がするのではないかと思いますけれども、今おっしゃったのは、誰が責任を持つかということですけれども、それはチッソがずっと残ると、水俣に残るという、そのこと一点からしてもチッソ、それから最高裁の判決のように国、県、それがずっと責任を持ち続けるものだと思っています。
Q
チッソという会社がなくなった後も環境汚染など新たな問題が出てきた時には、チッソと別会社でも水俣の会社が県と国と共に責任を負うと。
蒲島知事
それは何らかの制度的な制約、それを法律あるいはその後の制定の中で条件付けられるものと思っています。
Q
一番最初にあったんですけれども、この法案の評価ですね、裁判と認定申請と違う第三の道というようなことなんですが、その道を進んでもらうための法律としての知事の評価、十分な内容なのか、それともまだ不十分な点があるとお思いなのか、その辺は改めて。
蒲島知事
現に救済を求められている方がいらっしゃると。そしてその方々が高齢化されているということ。そして実際にもうこの最高裁判決以来多くの方が亡くなっておられます。
そういう問題があり、我々県としては早期救済の他の道ですよね、認定申請とそれから裁判に訴えるだけではなくて、もう一つの道を作ったと。そしてそのもう一つの道を法律で明記したということ。それから、これが与野党協議によって自民党と民主党と公明党の3党の共同提案になるということ、そしてその協議の過程で多くの要望が取り入れられ、そういう意味では私はこの法案をとても評価しています。
Q
不知火海沿岸の住民の健康被害調査について、潮谷知事以来熊本県は国に求めましたけれども、今回の法案の中身がまだ明確に分からないんですが、引き続き全体的な健康被害調査を求めていかれるおつもりですか。
蒲島知事
今回の法案の中に調査ということが入っておりますので、それはまだどういう調査を求めているのか、ちょっと分かりませんから、現段階ではちょっとコメントを控えさせていただきたく思います。
Q
認定審査について、知事の判断を求めていらっしゃるかと思うんですけれども、これについては今後判断していくということになるんでしょうか。
蒲島知事
どういう意味ですか。
Q
答申を受けて知事の判断は留保か、保留になっていると思うんですけれども、それについての対応はどうなるんでしょうか。
蒲島知事
法案がまだ成立しておらず救済措置の方針が決まっておりませんので、そのことについては、現時点ではお答えできないですけれども、ただし棄却した方を救済対象とするということが確実になれば留保を解除して処分を行いたいと思っています。
現在それが法案で明らかになっておりません。
司会
そろそろ20分でございますので、これをもって終了させていただきます。
どうもありがとうございました。