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平成20年 7月 2日 知事定例記者会見
日時:平成20年7月2日(水曜日)午前10時から
場所:知事応接室
発表項目
- 【熊本県−忠清南道姉妹提携25周年記念式典等について】
- 【川辺川ダム事業に関する「知事現地視察」について】
- 【「川辺川ダム事業に関する有識者会議」による現地調査の実施について】
- 【「川辺川ダム事業に関する県民意見をお聴きする会」の開催について】
- 【ふるさと寄附金について】
- 【荒瀬ダムについての説明】
質疑応答
熊本県−忠清南道姉妹提携25周年記念式典等について(PDFファイル:88KB)
(幹事社)
おはようございます。
7月と8月の幹事社を務めます朝日新聞と熊本朝日放送でございます。
では、まず県の方から5つ発表項目があがっていると思いますが、この発表項目についてよろしくお願いします。
蒲島知事
まず、第1は、熊本県と韓国の忠清南道姉妹提携25周年記念式典についてです。
熊本県と韓国の忠清南道との姉妹提携25周年を記念して、7月10日から12日まで、知事就任以来、初めての外遊として当地を訪問いたします。
記念行事として、11日に、*礼山(イエサン)、それから徳山(トクサン)で、「姉妹提携25周年記念式典」、それから「日韓地方行政フォーラム」に出席いたします。
「姉妹提携25周年記念式典」においては、長年の友好関係を踏まえ、経済、文化、教育、観光などの分野で、未来志向の交流事業の促進を確認する予定です。
また、「日韓地方行政フォーラム」では、姉妹提携25周年を記念して、テーマは「環境保全に向けた取組み」というフォーラムが開催されます。
このテーマは、昨年末に当地において発生した原油流出事故により、環境問題が大きな課題となっていることから選定されたものです。
本県は水俣病を教訓に、日本一の「環境立県くまもと」を目指しており、私の基調講演では、本県の取り組みを紹介し、環境保全の大切さをアピールする予定です。
なお、両県道知事の基調講演の後にはパネルディスカッションが開催され、本県からは、熊本大学大学院嶋田純教授が、パネリストとして本県の地下水保全の取り組みについて発表される予定です。
また、10日、木曜日には、アシアナ航空の姜柱安(カン・ジュアン)社長を訪ね、「熊本~ソウル線」の週5便化のお願いをするつもりです。
これが、第1の発表項目です。
*発言中「礼山(イエサン)、それから徳山(トクサン)」については、正確には「礼山(イエサン)郡徳山(トクサン)」という趣旨です。
川辺川ダム事業に関する「知事現地視察」について(PDFファイル:145KB)
第2の発表項目は、川辺川ダムに関する3つの事項です。
その3つの事項とは、第1に『知事現地視察』、第2に『有識者会議による現地調査』、第3に『周辺住民の意見、県民の意見を公開の場で多角的に集約することについて』、の3つです。
第1の知事現地視察ですけれども、7月6日、日曜日に、丸1日かけて川辺川ダムに関する現地調査を行います。
今回の視察は、マニフェストどおり、私が川辺川ダムの建設の是非の判断材料とするために従来から予定していたものです。
これまでも、何度も、空からの視察を含めて、主な場所は視察に行っておりますけれども、今回は改めて土木部の説明を受けながら、球磨川、川辺川の下流から上流へと見ていく予定です。
併せて、五木ダム建設予定地、五木村の災害現場、さらには市房ダムなど、球磨川、川辺川ダムについて時間の許す限り、つぶさに視察することとしています。
「川辺川ダム事業に関する有識者会議」による現地調査の実施について(PDFファイル:215KB)
2番目の『有識者会議による現地調査』です。
私の視察に続いて、7月の12日、13日には、第5回有識者会議として現地調査が行われます。
これは、先月27日に行われた第4回有識者会議において決まったもので、これにはアドバイザーのブラウン氏も同行されます。
12日の午後から、13日午前中にかけて、しっかりと現地を見ていただくとともに、地元市町村長や住民団体の代表から意見を聴き、その後それを踏まえて会議を行う予定です。スケジュールについてはお手元の資料のとおりです。
「川辺川ダム事業に関する県民意見をお聴きする会」の開催について(PDFファイル:233KB)
第3番目、これは『周辺住民の意見、県民の意見を公開の場で多角的に集約することについて』。
1つは、私が川辺川ダムの建設の是非の判断材料の1つに掲げている、地元住民の意見、県民の意見をお聴きするために、今月、『川辺川ダム事業に関する県民の意見をお聴きする会』と『文書等による県民の意見の募集』という、2つの方法により意見の集約をいたします。
場所・日程は、八代市で7月27日、午後1時半から。人吉で29日、午後6時半から行います。
ここでは、私が直接県民の皆様のご意見をお聴きします。
そのため、本日から11日まで、この会での意見を発表される方、及びこの会に参加を希望する方を募集します。
希望者が多い場合は、公平・公正に抽選することとしています。
また、この会以外に、さらに県民の皆様のご意見を幅広くお聴きするために、『文書等による県民の意見の募集』を行います。
ハガキ、Fax、メール、知事への直行便などの方法によります。
本日から7月31日まで募集いたしますので、県民の皆様の忌憚のないご意見をお寄せいただきたいと思います。募集要項(PDFファイル:55KB) この『文書等による県民の意見の募集』で寄せられたご意見についても、私が川辺川ダムについて判断するうえでの、判断材料の1つにさせていただきたいと思っています。
また、集約した内容については、県民の皆様にもきちんとお伝えしたいと思います。
詳細については、お手元の資料のとおりです。
ふるさと寄附金について(PDFファイル:87KB)
発表項目の3番目のものです。
それは『ふるさと寄附金』について。
ふるさと寄附金に関しては、市町村と協働した連携体制のもとで、県人会等の皆さんへの働きかけを本格的に開始しました。
お手元にお配りしているパンフレットを見ていただくと分かりますように、市町村と一体的にPRする共同パンフレットとしており、早速、くまもと誘友大使、くまもとサポーター、東京県人会の皆様へ発送したところです。
最大の特徴は、寄附される方が便利となるように、県と市町村どちらでも、同時にでも、このパンフレットのハガキで寄附を申し込むことができるということです。
なお、今月中旬には、市町村との推進連携会議を開催し、具体的な連携調整を図っていく予定です。
パンフレット(PDFファイル:2.5MB)
荒瀬ダムについての説明
これが、予定しておりました、皆様にお知らせしました発表項目ですけれども、ひとつ荒瀬ダムに関して、パネルを使いながら、皆様にご説明申し上げたいと思います。
というのは、この発表が前回の記者会見で発表された後、説明が足りないのではないかというご議論をいただきました。
それで、少し時間をいただいて、私自身がどういうことから、凍結にいたったのかということを少し丁寧にご説明申し上げたいと思っています。
まず環境の変化の1つとしては、熊本県の財政の厳しさがあります。
昨日、私が本部長となっている県財政再建推進本部を開きました。
公開の席となっておりますので、皆さん自身もその議論を聞かれたことと思います。
想像以上に県の財政は厳しいと。とりわけこれまでの県経費の4割をこの3年間で削るという、とても大きな財政再建計画です。
それがその背景にありまして、すべての予算に関して、継続されている、あるいは既に決まった予算である、すでに決まった計画であっても、もう一度ゼロベースで考えてみようという中で、この今回の判断があったわけです。
今、簡単にパネルを用意しましたので、今、県財政がどうなっているかということを述べたいと思います。
分かりやすくいうと、県の財政の自前の収入は3分の1しかありません。
そして、国からの仕送りも段々段々厳しくなるそうだと、これが収入の現状です。
それから支出の方は、家族の医療費や、子どもの教育費はどんどんどんどん増えていくと。ローンはこつこつ返していっておりますけれども、なかなか減らない、というのが今の現状です。
そして、そういう現状の中で私は就任したわけですけれども、来年は貯金もなくなるし、借金もこれ以上増やせないという状況です。
そして、古くなった車の買い換えや、食費も含めて生活費をギリギリまで絞らなくてはいけないと、昨日推進会議で述べたところによると、経費の40%程3年間で絞らなくてはいけないと、そういう状況になっています。
それで、私が就任した後で、ゼロベースで事業を見てみようということで、荒瀬ダムの問題が表面化しました。
私が就任しなくても、いずれこれは問題化するような議論だったと私は思います。
まず何が問題かと、当初の計画からこのように変わっているというのが大きな問題です。
1つは、平成14年当時の見込額が、管理環境対策費用で60億。管理環境対策13億とダム撤去費用が47億でちょうど60億であると。しかしこれが、現時点での試算額は管理環境対策費用が5億増えて18億円。それから、7億ダム撤去費用が増えて54億円という試算が出ています。
これがダム本体と管理環境対策費用です。
その他に、ダムを撤去した場合の地域対策費用をもしするとすれば、です。まだこれはする、しないとは限りません。
ただ、もしするとすれば、28億かかるだろうというのが、この段階での試算です。
だから、しない場合の72億と、する場合の100億までの間で現時点の試算額が出されています。
ただ、これも5年か6年かけて撤去するわけですから、その費用が膨らむのかどうかというのは、なかなか分かりません。
往々にして公共事業というのは、膨らむ傾向にあります。
私は膨らむ方に動くのではないかなというふうに考えています。
そういう場合で、まず72億だと、1番下の方で考えてみたいと思います。
72億で考えた場合、このようなことになります。
荒瀬ダムを撤去した場合、撤去費用が72億かかると仮定します。
1番下の数字です。
これによると、これまで企業局がコツコツと貯めてきた内部留保資金がありますけれども、これが少しずつ減っていきます。
つまり、それを使いながら撤去するわけですから、平成21年度には56億ありますけれども、これをどんどんどんどん使って撤去していきますので、平成22年には39億、平成23年には31億、平成24年には23億、平成25年には18億、そして平成26年には約14億になります。
そして、平成27年には1億8000万になります。
そうすると1億8000万になってしまうと、企業局が存在できません。つまり他のダムの補修とか、そういうことができなくなるわけですね。
平成27年で全体の蓄えを食いつぶすと、その段階で、もう撤去費用の為に一般会計からの資金が必要になってきます。
これが荒瀬ダムを撤去した場合です。
それは、今の一般会計からの資金投入というのが、さきほども述べましたように、もともと厳しい財政下にありますので、極めて難しい。
この状況が私の就任後に明らかになったわけです。
それで、私が立ち止まって考えてみようと。継続した場合にどうなのかと。立ち止まって考えて、継続したらどうなるのかというのが下の流れです。
荒瀬ダムの発電事業を継続した場合、これに水車、それから水門、水車発電機が2台で40億ほどかかります。
それからダムゲートが8門ありますけれども、これを補修、替えたりすると20億かかります。
現時点よりも、ちょっと前の見積もりだと思いますけれども、この60億が、まず設備費用としてかかります。
ただ、その60億は、総括原価ということで非常に分かりにくいんですけれども、この部分がとても皆さんに理解していただくのは難しいんですが、総括原価というのは、その更新の費用、これを入れてその上に利益をのせた額ですね。利益というのは、これまでの経験からいうと、*5,000億から1億円だと思いますけれども、それとその費用をのせた分を九電への売電価格として売ることができる。
その60億の部分は、その費用の中に含めることができる。
そして、ある一定の条件のもとでは、22年ほどで、この60億が回収できるという、減価償却ということとなっています。
これが60億をもう一度ダムの更新に充てた場合ですね。ただ、それだけでは済まないだろうと。それは、つまり愛されるダムにするということですから、環境対策、地域対策費が必要です。これはプラスアルファになります。
また、このプラスアルファがいくらになるかは、これからの地域の方々との様々な話し合いによって決まっていくでしょう。ただ、その一部分は費用に含まれると。費用に含まれない部分は、内部留保資金で対応しなければいけない。こういうことになります。
じゃどこにその内部留保資金があるのとかと。この設備更新費用の60億というのがありますけれども、この半分を借りて、半分は内部留保で充てるという、いろんな配分があると思いますけれども、その費用に含まれる分は内部留保資金で対応すると。そして、22年間ぐらいでこの60億が元に戻って、そして収入が毎年5000万から1億あるというのがこの考え方です。
この2つの間に、様々な議論が展開できるというふうに思います。
これが、荒瀬ダムをそのまま継続した場合、そして、もう1つは撤去した場合の違いです。
その間に、様々な案が、私は、これからの議論の中で出てくるに違いないと思います。
だから、今、私の真意は、あそこで1度凍結しないと、もう壊し始めた時には、この議論ができないということです。
だから、壊し始める前に立ち止まって考えたいと。そして立ち止まって考えて、この厳しい財政下にある中で、何がベストなんだろうかと。それを皆で考えたい。幸いにして、6月の4日の記者会見の、唐突とも言えるということで、相当批判を受けましたけれども、その事によって、議会でもこの問題が真剣に取り上げられ、それから、県民の方々にも真剣に、今、議論をされているというふうに私は思います。
だから、そういう意味では、あの時に、立ち止まって考える勇気を持とうと思って凍結を発表したのは、私自身は、自分自身では、今、良かったなと思っています。
それから、もう1つ、これまでは発電することによって、発電事業を続けることによって、どういうふうなことが、プラスの貢献があったのか、ということを出してもらいました。
さきほど言ったように、純利益が5000万から1億円、それプラス、今地球環境、とりわけ地球温暖化対策というのがサミットで議論されるぐらい重要な問題となっています。
これを火力発電で、あるいは化石燃料で賄おうとすると、熊本県の森林面積の4%相当がこれにあたります。
それから、これまで藤本発電所が営業することによって、発注であるとか、それから雇用であるとか、そういうものが、地域経済への影響というものを、大体5億円と見積もっています。
それから地元自治体への交付金、地域助成金が約年間2,300万円、それから県財政への負担金などを含めて、3,700万程県財政に入っているということです。
これは、これまでの状況から推定されたものですけれども、そのような中で、私が皆さんに議論してほしいと。1番ベストな答えを皆で出そうと、それが正に討議民主主義ではないかというふうに私は思っていますので、今回の記者発表ということになったわけです。
私の前回の記者発表以来、もう少し丁寧に説明してほしいということですので、今のことが本当に十分理解していただけたかどうかは分かりませんけれども、この場を借りてもう1度私の考えを述べさせていただきました。
それでは、これで私の報告を終わりますので、後は質問に入りたいというふうに思います。
*発言中「5,000億から1億円」については、正確には「5,000万から1億円」という趣旨です。
川辺川関連
(幹事社)
では、各社だいぶん聞きたいことがたくさんあるかと思うんですが、まず幹事社の方から何点か。
1つは川辺川ダムの視察についておうかがいしたいんですが、有識者会議による現地視察が12、13日。その前に知事が個人的に入りたいと何故思ったのかと、そして何を見たいというふうに感じてそのようにしたのかというのと、その機会にはまだ住民との意見集約の場というのは設ける予定があるのかないのかという部分に関して教えて下さい。
蒲島知事
はい、さきほども言いましたように、私自身は選挙前から、選挙後、就任した後でも、何回も川辺川ダム、あるいは川辺川周辺、球磨川周辺については調査に行っております。
そして、つい最近、今度はヘリで空からも全域を見て回りました。
今回は陸で、全ての流域を回りたいというのが今回の私の視察の目的でもあります。
これは、有識者会議と一緒に回ることになると思いますので、その前に、私自身が有識者会議の人と回る前に、もう1度回りたいと思ったのがきっかけです。
それから、これについてはマニフェストにも掲げておると思いますので、そういう意味では、予定されたものでもあります。
突然これを決めたわけではありません。
だから、より知りたいということです。
(幹事社)
この機会には、まだ、住民との意見集約の場所というのは設ける予定はないんですか?
蒲島知事
時間的に、大変動く場所が多いし、また個々の場所において住民の方との対話はできないと思いますけれども、ただ、もし、そこに集まっていらっしゃったら、お話できる機会があると思いますけれども、ただ多くの時間を取れないんじゃないかと思います。
荒瀬ダム関連
(幹事社)
荒瀬の件なんですけれども、さきほどから議論をしてもらいたいということをおっしゃっていますけれども、今後、議論の場というのはどういうふうに設定していくのか、川辺みたいに第三者的な委員会を設置する、設けるお考えはあるのかというのと、住民の方に凍結への理解をしてもらいたいというふうにおっしゃってこられましたけれども、その段取りというか、具体的にどういうふうに進めていくかというのをおうかがいしたいのですが。
蒲島知事
はい、私は、住民の方々の対話の場をぜひ作りたいと思っておりますし、それから、これまでも、この問題に関わって、とても興味を持っていらっしゃる人々とも面会をしましたけれども、これからはむしろ流域の皆様、とりわけ坂本村の皆様、それから八代市、そういう方々と対話ができたらいいなと思っています。
そして私自身の考えもそこで述べさせてもらいます。
(幹事社)
では、各社。
Q
知事は、約束を反故にされるというようなことに、結果的になるかもしれませんけれども、これを、例えば教育改革を掲げる知事が、約束は守りなさいよ、というふうに、言えるのかなというのがまず疑問としてあります。
蒲島知事
はい、その点ですけれども、これは行政としての約束という意味では継続性が必要だという議論があります。
しかし、時々行政でも正しい判断をしないことがあります。
そして、それが正に政権交代で、私の場合は、知事が新しくなったわけですから、ゼロベースで見てみると。だから約束を守らないというよりも、私自身の考え方は、おかしいと思ったら、これまで続けられた事業であろうと、それからこれまで正しいと信じられていたものであろうと、おかしいと思った時に立ち止まって手を挙げてもう一度考えるべきだと、その勇気が重要だと、私はそれがとてもこれまでの政治において足りていなかったのではないかと思っています。
だから、教育的に言っても、世の中がおかしいと思ったら手を挙げようと。そして、これまでやってきたことであっても、おかしいと思ったら手を挙げて、そして考える勇気を持とうと、私はこの方を今の子ども達に言いたいと思っています。
Q
流域の住民は、それがおかしいと思って続々と手を挙げて、徹底抗戦の構えを見せているわけですけれども、それについては、いかがお考えなのかということを。
蒲島知事
もし前提条件が全く変わっていないと、ならば別ですけれども、前提条件が変わってしまった今、もう一度その前提条件が変わったことを踏まえて、当然結論も変わってくるわけですから、それでいいのかと。それで前提条件が変わっても、昔の前提条件のままで進むべきだという、そういう議論も勿論あります。
しかし前提条件が変わったら一度止まって、考えてみる、その勇気がこれまで多くの行政や政治に足りなかったと私は思っています。
例えば、様々な公共事業が日本では行われています。
しかしもう、これは決まったものだから『仕方がないと』というふうに考えるのか、やっぱり前提条件が変わった、社会が変わった、一度考えてみようと、その勇気も私は大事だと思った次第です。
Q
知事、今パネルを使って荒瀬ダムの件、ご説明ありましたけれども、撤去の場合、更新の場合という費用のところお話しありました。発電事業継続の場合は、その発電による経済効果といいますか、いろんなところへの効果というもののご説明があったかと思います。
ただ、撤去した場合に、地域環境あるいは地域経済に対して、どういう効果があるというような検証が欠けていたようにも思えたんですけれども。その発電事業はあくまで継続するという前提にたったご説明ではなかったんでしょうか。
蒲島知事
今、ご質問があったように、環境への負荷、それから流域の方々への負荷、そして撤去を長く待っていらっしゃった願い。そういうことを裏切ることに対する断腸の思い、これは私も当然理解しております。
だから、これからできれば話し合って、それをもう少し負荷を軽減できないのかと。これまでは、私は、企業局の姿勢としては発電を第1に考えられたと思います。
しかし、発電を第2にしてでもいいから、環境をよくするということができないだろうかと。それを考えるためにも時間が必要だったんです。
それを考えるために、愛されるダムにならないのかと。あるいは、このような効果と、それからダムと地域住民の方々の願い、それが完全に両立することはできなくても、その負荷を、発電を少し抑えても、少なくして、それで調和はできないのかというのが今の私の考え方で、ただ、それは大変難しいことであります。
しかし、環境に対する負荷がある、あるいはその地域に対する負荷があると、八代海に対する負荷がある、ということは、私も十分理解しています。
ただ、この時期に、特に、今のこの時期にそれを大きなお金をつぎ込んで、撤去の方に向くことに、特に財政改革をやる方からすると、72億、それより上にいく可能性がありますけれども、それは全く100%県のお金なんですね。
Q
すいません、私のちょっと尋ね方がまずかったんだと思いますけれども、発電事業を継続した場合に、例えば、県への財政への影響とか、市町村に関しての交付金とか、いろんな効果があると。撤去した場合に、よく市民団体の方がおっしゃっているような漁獲高がこう回復するとかですね。撤去の場合にはこういう経済効果が出る、というような検証は県の立場としては、なさらないんでしょうか。
蒲島知事
私は、そのデータがあればとてもうれしく思いますけれども、県の方ではそういうデータは多分持っていないんじゃないでしょうか?どうですか?
(水産振興課)
水産振興課でございますが、撤去した場合の効果というのは、どれほどあるかというのは試算したものがございません。
蒲島知事
だから可能性として撤去した場合の経済的効果を、科学的に計ることができれば、それから、時間の限られた中でやることができれば、それはとても素晴らしい検証だと思います。
Q
ですからそれをやらないんですか、と聞いているんです。
やる気はないんですか、と聞いているんですよ。
蒲島知事
それは今後の検討です。
これからのディスカッションの中でそれをやるべきだという結論になるかもしれません。いずれにしても、今は凍結して、その辺も含めて考えようということです。
Q
凍結をずっとおっしゃっているんですけれども、スケジュール的な部分では、この間がギリギリのタイミングだったとおっしゃっているんですけど、じゃ地元の説明、今後のスケジュール等については、全く示されていないんですけど。水利権更新を控える中で、逆算すると時間はないというようなことを、常々おっしゃっているわけですから、具体的にどういうスケジュールでの説明会をしていく。もう一つは、撤去を仮にする場合のシミュレーションというのは全く出てきてないわけで、あくまで撤去をしないという前提の説明がほとんどのような気がするんですが。
蒲島知事
2つ、今、質問があると思いましたけれども、1つはタイミングの問題。これは、このまま解凍すれば平成22年度の4月に実際の撤去が始まるというのがこれまでのスケジュールです。
もし、それに戻せばそのためのスケジュールは既に事務局の方で検討が進んでいるはずです。
それで、その水利権の交渉がどのくらいかかるかということがさきほどの、タイミングの問題に関わってくると思いますけれども、それが短ければもう少し余裕があるでしょう。平成22年の4月まであると。ただ、これまでの経過から、その交渉がどのくらい長いかというのは分からないということも1つ、今、不確実要素としてあると思います。
Q
さきほど、撤去の費用は100%県のお金というお話がありましたけれども、今後、こういうケースが荒瀬ダムを含めて、別のダムもこういうケースが出てくると思うんですけれども、国に対してですね。財源措置とか支援措置、そういったものを求めるお考えというのは。
蒲島知事
これまでも求めてきたと思います。県としては。
それが、他の財政的な援助を得られないという結論だというふうに私は理解しています。
だから、これから撤去の費用を国に求めても、可能性はゼロではないかもしれませんけれども、それをあてに撤去を始めるというのは、やや困難かなと思っております。
Q
知事、すみません。そもそも論になるんですけれども。治水ダムじゃないですよね。
何故、公の県が公営企業としてダムの発電事業という収益をやらなきゃいけないのかというのも、もともとの、エネルギーがないという時代と全く環境が変わっているわけですよね。
そうすると、そもそもゼロベースで見直すということであれば、公営事業のあり方として、企業局自体の必要性とかを含めて、そこまで踏み込んで本来議論をするべき話で、本来県がここまでダムの必要性をどうのこうのという、こういうエネルギーをかけていること自体がどうなのかという議論も僕はあると思うんですが、これに関して知事はどのようにお考えですか。
蒲島知事
皆さんもご存知のように、私自身も就任間近ですので、企業局のあり方を含めて今後は考えていく課題だと思いますが、今直面する問題は、次から次に押しかけてきますので、この荒瀬に対する判断というのは、そういうふうに4月、5月の段階で決断したと。それで今後電力事業全体をどうするのか、県が持つべきなのか、ただ県が持たないからと言って、じゃここで止めます、というそういう性質のものではありませんし、これまで持ってきたということ自体が歴史ですから、それを踏まえて長期的に考えるという課題じゃないかなと思います。
Q
売却とか・・・・・、例えば、実際、他県ではそういう例も・・・・・。
蒲島知事
売却ということであれば、それは買う方がいらっしゃらなければいけませんから、それは県だけで決める問題でもないので、それを含めて長期的には企業局のあり方というのは考えていかざるを得ないと思います。
Q
さきほど、水産振興のデータがないと、科学的に検証できないというお話がありましたが、環境負荷について地元の方は、いわゆるもう汚染という言葉を使われて、この意味では、今回発電機を更新すれば、また数十年に亘って地元への環境負荷というのはかなりかけることになるんですが、その辺の対価と今回の財政負担とのバランスというのは、知事はどのお考えですか?
蒲島知事
私がさきほど言ったのは、新しく設備を変えることによって発電ということが継続された場合には、発電を第1目的にせず、地域と共存できるような、そういうダムにならないだろうかと。そのためには様々な環境対策、それからダムを美しくするような政策、そういうことが考えられないかと。
もう一切できないと、もうそれは必ずきれいにならないということが明らかであれば、そしてそういうことがこの議論の過程で明らかになったらまた別の考え方が出てくるかもしれませんけれども、その可能性にかけたいと思っています。
Q
発電を第2目的にしたら、第1目的にしてもっともっと稼ぐと、発電して今1%弱を、もっと2%、5%までにあげるというのなら、県財政への寄与というのも我々にも理解できますけれども、発電は第2にする、環境第1にするというと、全く矛盾した印象を受けるんですけれども。
蒲島知事
そうでしょうか?
Q
そうだと思いますけれども。
蒲島知事
撤去の巨大な額が出せないと、今出せないというのが大きな問題なんです。
それで発電とそれから環境と、うまく両立出来ないだろうかと、そういうところに、今、光を見い出したいな、と思っているのが私のポジションですけれども。1番いい例が発電第1と、それから、環境に配慮した発電というのはどういうことかというと、やっぱり水をもっと流すということだと思います。放水するということ。
でも、私が、今、言えることは、本当に今県民の皆様が、この問題について真剣に考えて下さっていると。私にもたくさんの投書が来ます。当然反対の投書も来ますし、賛成の投書も来ます。
そして私自身もそれからたくさんのことを学びます。
立ち止まって考えて、この問題について県民皆で考えてみようと、その舞台が私は今できているのかなと思います。
舞台は、こんな舞台はいらないということもあるかもしれませんけれども、この舞台はとてもベターな政策決定のためには必要な舞台だと私は思っています。
Q
ちょっと確認ですけれども、その舞台の中ですけれども、さきほど荒瀬ダムの更新の場合にはいろいろ経済的効果が書いてあるんですけれども、撤去の場合の経済的効果、議論の中で必要になれば、その時に考えるということですけれども、現段階では県としては積極的に経済的効果を試算したりするいう考えはないということですか?
蒲島知事
そういうデータを県が持っていれば私は全部出してもらうし、それも判断の材料にしたいと思っています。
Q
今後は集めるということはないですか?
蒲島知事 必要であれば集めたいと思います。
例えば開けた後でどうなるかとか、そういうこと…。
Q
反対派はそれを拠り所にしてといいますか、どれだけ正確なデータができるか分かりませんけれども、少なくとも県として計算する姿勢が要るんじゃないですか。
蒲島知事
その可能性も含めて、これから検討していきます。
Q
知事のお言葉を借りれば、話を蒸し返しますが、撤去せず更新するということは、また50年ぐらい使うということもあり得るわけですよね。そういうことを考えた時に、今回せっかく立ち止まったんですから、企業局のあり方をそこに含めて考えるということをされた方がいいような気がするんですけれども。
いきなりもう撤去せず、事業継続とした場合は、その企業局のあり方はもう、また50年ぐらい全然考えずにいくということになるのか。
せっかく立ち止まったならば、そういう考えもあってもいいかと思うんですが。
蒲島知事
昨日の財政再建の会議で、たくさんの議論が出ましたし、もっと時代に則して大きく全体を変えていくことを考えたらいいんじゃないかという、そういう議論もありました。
それを踏まえて長期的に企業局のあり方についてもその中で議論できたらうれしいなと思っています。
Q
すみません。川辺川だけ…。
蒲島知事
ちょっとすみません。もうだいぶん時間が過ぎたので、もう一個だけでいいですか?
Q
1件だけ。当初からあったんですが、財政を理由にするのであれば、今後費用負担が非常に大きい川辺川ダムは作るべきじゃないという反対派の声が当然出ていますし、識者からも。その辺のリンクというのは知事自身はどうお考えなんでしょうか?
蒲島知事
川辺川ダム問題については、多角的に9月に検討して判断を下します。
この問題とは関係なく、総合的にやります。
Q
川辺の件で1つだけ。
知事の視察、もろもろ入ってきましたけれども、マニフェストでは国交省の意見、それと県議会の意見、それに含めて市町村長も絡んでくると思いますけれども。残るこういった手順はどうお考えておいでか。国交省もいろいろあると思うんですね。レベルが。それこそ大臣から現地までいろいろある。その手順が今後7月、8月で、どう考えておいでか。特に、県議会は6月議会は終わってしまいましたので、9月議会しかないわけですけれども、県議会の意見を知事としてとらえるというのはどういう形をイメージなさっているのか教えていただきたいのですが?
蒲島知事
マニフェストで述べたように、それぞれの意見、例えば県議会とさきほど出てきた国土交通省、これは当然私も話をうかがいたいと思っています。県議会は、そこで、討論されるでしょう。だからそういう意味ではすべての意見をお聞きしたいと思っています。
Q
何んらかそういう場を設けられるということですか?
蒲島知事
場を設けなければ話し合いはできません。
熊本駅周辺地域整備関連
Q
もう1問だけだめですか。
(幹事社)
50分までに知事出なければならないそうなんで、最後の1問ということでよろしいでしょうか。
Q
短くて結構なので。全然関係ないんですが、JR熊本駅の話で。今度の議会で、トップ会議とか、事業費のこととか、今、いろいろ出てきましたでしょう。知事自身としてのお考えを、もしよければ、お聞かせ願えればありがたいんですけど。
蒲島知事
はい、この問題は、例えば今、30億ということと、5億円何千万という話になっていると思いますけれども、私はこの熊本駅というのは、これを立派なものにするというチャンスというのは、50年に1回か100年に1回だと思っています。
それで、この問題は丁寧に考えて、簡単に5億数千万と、それから30億の問題という形ではとらえきれないような、大きな政策問題だと思っています。
例えば、福岡とか、それから鹿児島に行くと分かりますけれども、福岡等は600億ぐらいかけるようなことを言っています。
熊本が、この新幹線を通して、大きく可能性を掴むためには、私は駅の問題はとても重要だと思っていますので、できる限り、県がリーダーシップをとって、そして今しばらくの間停滞しているこの議論を前に進めたいと思っています。
もう少し時間をとってこの問題については述べたいんですけれども、次の約束がどうしても動かせませんので。
諫早湾潮受堤防排水門の開門等を求める訴訟関連
Q
どうしても時期物がありまして。
蒲島知事
すみません、もし必要になった時には…。
Q
この間判決が出ましたでしょう。諫早湾干拓の開門をしろという。あれについて熊本県としてはどういうスタンスで臨まれるのか。
蒲島知事
熊本県としては、より多くの調査、影響的な調査を求めていますので、影響をさらに調査するというスタンスだというふうに思います。
Q
開けろという、開門して調査しろというスタンスを。
蒲島知事
それを含めて調査して、ベターの方に、やっぱり熊本県の利益はどっちの方になるかということですね。
それを考えて判断せざるを得ないと思います。
はい、すみません。もうちょっと時間があればよかったんですけども。