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今回の定例会に提出しております議案の説明に先立ち、県政運営に対する私の所信の一端を申し述べます。
世界的に「保護主義」と「排外主義」の台頭が顕著となっており、経済と社会の両面に影響を及ぼしています。特に経済面においては、物価高騰という形で国民生活を直撃しています。
私は、このような状況においてこそ、国民が直面している課題の解消に向け必要な対策を速やかに講じることが、政治と行政に課せられた最も重要な使命であると考えています。
国政においては、今月8日に、政権政党の選択を国民に問うための衆議院議員総選挙が行われ、高市総理が改めて国民から日本の舵取りを委ねられることとなりました。
引き続き国と連携しながら、物価高騰対策をはじめとする喫緊の課題にしっかりと取り組んで参ります。
先々週木曜日には、TSMCが、建設を進めているJASM第2工場で生産する主要製品について、3ナノレベルの最先端半導体に変更する意向を示しました。
これまで半導体関連産業の集積が進んできた本県にとっても、大変大きなニュースであり、最先端半導体の製造拠点として、また、日本の経済安全保障の要として、その地位を確立することが期待されます。
この機を捉えて、くまもとサイエンスパークの実現に向けた取組みを加速するとともに、県内各地へその効果を波及させるための取組みを着実に進めて参ります。
併せて、台湾との更なる交流拡大に向けて、肥後銀行と県、熊本市が連携した新たな取組みとして、株式会社地方総研が新設される台北支店に、県から職員を派遣する予定としています。
これにより、熊本への企業誘致や県内企業の台湾進出、県産品の輸出拡大などが更に進むよう、しっかりと取り組んで参ります。
私の知事就任2年目となる令和7年は、今後の熊本の発展に重要な役割を果たす大規模プロジェクト等について、知事として大きな決断を行った年でした。
まず、昨年4月、令和2年7月豪雨からの復興のシンボルであるJR肥薩線の八代~人吉間の鉄道での復旧に関して、JR九州と最終合意書を取り交わしました。
また、9月には県有スポーツ施設や阿蘇くまもと空港アクセス鉄道の整備、県立大学への半導体学部の設置について、それぞれの取組みの方向性をお示しし前進させることができました。
そして、昨年の最も大きな出来事として、知事就任以来初めての大きな災害である「令和7年8月豪雨」に見舞われ、各地に甚大な被害をもたらしました。
被災したインフラの早期復旧はもとより、農林畜水産業の再生や商工業への支援など、被災者の皆様が一日も早く生活や事業を再建できるよう、昨年末に策定した「令和7年8月豪雨からの復旧・復興プラン」に基づき、現場の状況に即したきめ細かな対策を迅速かつ着実に進め、被災地の復旧・復興に全力で取り組んで参ります。
今年は、知事としての任期、そして県政運営の拠り所である「くまもと新時代共創基本方針」の折り返しの年となります。基本方針に掲げた「県民みんなが安心して笑顔になり、持続的で活力あふれる熊本の未来を共に創る」という目標の実現に向けて、これまで種をまき、育ててきた様々な政策が花開き、たくさんの実をつける豊作の一年となるよう、決意を新たにしたところです。
私の政治方針の根幹を成すのは、徹底した「現場主義」です。知事就任以来、私自らが市町村にお伺いし、県民の皆様の声を直接お聞きする「お出かけ知事室」は、今年度末で県内全ての市町村を一巡する予定です。
「現場にこそ真実があり、解決の糸口がある。」引き続きこの信念のもと、まずもって様々な機会を活用して現場の声をお聞きするとともに議員各位から地域の実情をお聞かせいただきながら、全ての県職員が困難に直面している県民の皆様に寄り添い、その思いに応えることができるよう全力で取り組んで参ります。
特に、少子化や人口減少が進む中で、若い世代を中心とした人材の育成が重要です。「教育」と「福祉」の充実を図るため、「こどもまんなか熊本・実現計画」に基づく子育て支援の取組み等を推進して参ります。
また、半導体関連産業の更なる集積などを通じて経済活性化の波を県内全域に波及させると同時に、渋滞や地下水といった県民の皆様の「見える不満」、「見えない不安」にしっかりと応えていく必要があります。引き続き全庁横断的な組織である各推進本部において関連する施策に取り組むとともに、その成果を県民の皆様にお示しして参ります。
さらに、私自身が障がい当事者であるからこそ、年齢や国籍、障がいの有無など様々な事情や背景をお持ちの方々お一人お一人の人格と個性が尊重され、共生していくことが可能な温かい社会を構築するため、多文化共生やインクルーシブ教育の充実に向けた取組みも推進して参ります。
また、今年は県政にとって極めて重要な節目が重なる年でもあります。
まず、「熊本地震から10年」という節目です。あの未曽有の大震災から今日まで、私たちは幾多の困難を乗り越え、全国、そして海外からも数多くの御支援をいただきながら一歩ずつ復興の歩みを進めて参りました。この10年という時機を捉え、これまでの歩みをしっかりと振り返り、防災・減災への備えなど得られた教訓を再認識するとともに次世代に継承し、世界に誇れる「防災先進県くまもと」の確立を進めて参ります。
そして、「水俣病公式確認から70年」という節目も迎えます。この節目を契機として、関係者の皆様と連携しながら、地域の更なる再生・融和、そして情報発信の強化に取り組むことで、水俣病に対する理解を促進し、その歴史と教訓を次世代に伝えていくという、本県が果たすべき使命を全うして参ります。
このような取組みの積み重ねが、最終的に私が目指す「県民みんなが安心して笑顔になり、持続的で活力あふれる熊本」へとつながるものと確信しております。共に創る「県民が主人公の県政」の実現に向けて、県議会及び県民の皆様の御理解、御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
続いて、今定例会に提案しております議案の概要について、御説明申し上げます。
まず、令和7年度2月補正予算についてです。
国の経済対策への対応として、災害時の歯科保健医療提供体制の整備、介護事業所等に対するサービスの継続や中山間地域での提供体制の確保、食料安全保障の確立のための農業共同利用施設の再編集約等への支援など124億円を計上しています。
また、経済対策に合わせた本県独自の地域活性化策として、物価高騰の影響を受けるトラック運送事業者等への支援、「食のみやこ熊本」の創造に向けた県内外への情報発信・販路拡大等の取組みなど62億円を計上しています。
併せて、今後の執行見込みの精査による減額補正も行っています。
これらにより、一般会計は98億円の増額補正となり、補正後の現計予算額は、1兆107億円となります。
次に、令和8年度当初予算について御説明いたします。
今回の予算は、人件費や物価の高騰、金利上昇による公債費の増等が見込まれる中で、厳しい収支見通しを踏まえた事業のスクラップアンドビルド、特にスクラップの徹底を図ることとし、これまで以上に事業の選択と集中を徹底して参りました。
その上で、このような中にあっても優先して取り組むべきものとして、災害からの復旧・復興と「くまもと新時代共創基本方針」に基づく、人材の育成・確保、次世代の育成、共生社会の実現の取組み等を中心に予算を編成しました。
この結果、一般会計当初予算の総額は、過去最大の9,353億円となります。
続いて、歳出予算の主な内容について説明いたします。
(1)災害からの復旧・復興
まず、“災害からの復旧・復興”についてです。
(熊本地震からの創造的復興)
熊本地震からの創造的復興として、阿蘇くまもと空港アクセス鉄道の事業許可に向けた調査・設計や、法人の設立に向けた手続きなどを着実に進め、整備に向けた取組みを本格化します。
(令和2年7月豪雨からの創造的復興)
令和2年7月豪雨からの創造的復興としては、令和8年度上半期に見込まれる、くま川鉄道全線運行再開を起爆剤とした地域の賑わいの創出、くま川鉄道を軸とした誘客の促進に取り組みます。また、人吉・球磨地域における若者などの人材確保・育成に向けた体制構築への支援により地域振興の更なる強化を図ります。
(令和7年8月豪雨からの復旧・復興)
令和7年8月豪雨からの復旧・復興として、引き続き農地・農業用施設や公共土木施設等の早期復旧に取り組むとともに、衛星ブロードバンドインターネットサービスの導入に係る検証など災害対応力の更なる強化を図ります。加えて、甚大な被害を受けたいぐさ産地の維持・復興に向け、畳表の生産技術の継承や、「いぐさラボ」の設置による新たな商品づくりの支援などに取り組みます。
(大規模災害等への備えの強化)
こうした災害からの復旧・復興の取組みに加えて、大規模災害等への備えの強化として、「防災」と「消防」業務の一体的な運用体制を構築するため、令和8年4月の組織改正により、総務部の消防保安課を知事公室へ移管し、知事公室に「危機管理防災局」を新設する予定としており、今定例会に関係条例を提案しています。
(2)くまもと新時代共創総合戦略の推進
次に、“くまもと新時代共創総合戦略の推進”についてです。
(人材の育成・確保)
第一に“人材の育成・確保”について、児童福祉分野における取組みとして、「こども家庭ソーシャルワーカー」の資格取得を促進し、子どもや家庭への支援体制を充実させるとともに、児童相談所における適切な業務の推進を図ります。
県内企業の更なる成長促進を図るため、企業等におけるDX人材の育成に向けた研修の開催や、半導体関連産業の集積を踏まえた地場企業の投資を促すための支援の拡充等に取り組みます。
農業における担い手の確保に向け、市町村と連携した地域営農組織の中核を担う人材の育成のための伴走支援等の取組みを強化します。
熊本で働く外国人材については、各種産業における人材確保に向けた取組みを支援するとともに、入国後の適切な受入れ体制を確保するため、国や監理団体との連携に向けた取組みを強化します。
県庁における人材確保・育成として、業務に必要な資格取得の支援等に取り組むほか、業務の縮減・効率化に向けた業務プロセスの見直し、いわゆるBPRについても併せて推進して参ります。
(次世代の育成)
第二に“次世代の育成”について、子どもたちの読み解く力を測るリーディングスキルテストを全県的に実施し、教員の指導力の質を高め、子どもたちの学力向上につなげます。
また、県内全校へ教員業務支援員を引き続き配置するとともに、新たに学校経営等アドバイザーを各教育事務所へ配置し、学校現場における働き方改革も含め、子どもたちの教育環境の充実・強化に取り組みます。
地域産業界の即戦力となる人材の育成に向け、新たにネクスト・マイスター・ハイスクールの取組みを進めるほか、高校生ボランティアチームによる放課後子供教室等での地域活動の促進に向けた支援等に取り組みます。
市町村が実施するフッ化物洗口の取組みへの支援メニューを拡充するなど、子どもの歯の健康づくりを推進するとともに学校現場の負担軽減を図ります。
社会・経済情勢が大きく変化し、価値観が多様化する中で、若者が早い時期から自分の人生と向き合い、自身の未来・ライフデザインを描く機会を提供する取組みを推進します。
(共生社会の実現)
第三に“共生社会の実現”について、多文化共生に向けた取組みとして、新たに「地域日本語」コーディネーター等を配置し、県内で暮らす外国人への日本語教育体制の充実・強化を図ります。
障がい者の社会参加の促進に向け、パラアスリート等を招へいした講演会等の実施による障がい者への理解促進や、障がいがある方だけでなくその家族も含めて一体的に支援を行うためのファミリープランの作成に向けたモデル事業に取り組みます。
困難な問題を抱える若年女性等の早期発見・相談支援体制の強化を図るため、民間団体と連携したアウトリーチ支援体制の構築に向けた実証事業に取り組みます。
誰もが安全・安心に暮らすことができる社会の実現に向け、災害ボランティアの事前登録制度の創設等により災害対応力の強化を図ります。また、「電話で『お金』詐欺」被害の増加を踏まえ、携帯電話を対象とした防犯アプリの導入や、ワルモン対策隊を活用した意識啓発に取り組みます。
(その他主要な取組み)
第四に“その他主要な取組み”について、半導体関連産業の更なる集積に向けた対応として、引き続き中九州横断道路やセミコンテクノパーク周辺の道路ネットワークの整備等に取り組むとともに、周辺地域における畜産農家の営農継続に向けた新たな支援に着手します。
熊本都市圏の渋滞解消については、官民連携による自家用車から公共交通への転換を図る取組みへの支援や、熊本市と連携した熊本都市圏3連絡道路の実現に向けて、複数のルート帯を令和8年度中にお示しできるよう調査等を加速して参ります。
本県への観光誘客や文化芸術と観光の一体的な振興を図るため、点在する文化芸術資源をストーリーで面的につなぎ誘客を促進する取組みを展開します。また、国が創設したナショナルサイクルルートの指定を目指し、天草地域におけるサイクリング環境の整備に取り組みます。
(3)緑の流域治水の推進と五木村・相良村振興
次に、“緑の流域治水の推進と五木村・相良村振興”についてです。
「緑の流域治水」の推進に向けては、昨年末に、「新たな流水型ダム」の事業の進捗や環境保全措置の具体的な取組み等について、流域住民の皆様と確認しました。本体工事の着工に向け、着実に取組みが進んでおり、引き続き国や関係機関と連携し、被災した道路や橋りょう、鉄道等のインフラの復旧と併せて「緑の流域治水」の推進に全力で取り組んで参ります。
また、五木村・相良村をはじめ流域市町村の振興に向けては、五木村振興基金及び球磨川流域復興基金への新たな積み立てにより、地域の賑わいの創出や安全・安心なまちづくりを中長期的に支援して参ります。
(4)水俣病問題への対応
次に“水俣病問題への対応”についてです。
令和8年度に水俣病公式確認70年の節目を迎えるに当たり、地域の再生・融和を促進するための取組みの支援や啓発イベントの開催など、公式確認70年情報発信事業を展開するとともに、従来の学校や教職員向けの研修に加え、新たに企業や市町村等に対する研修を実施し、水俣病への理解促進や記憶の風化を防ぐ取組みを強化します。
また、公健法に基づく認定審査については、申請者個別の事情に丁寧に対応しながら、着実に進めて参ります。
併せて、水俣・芦北地域の振興についても、新たに策定した「第八次水俣・芦北地域振興計画」に基づき、地元市町と一体となって着実に取組みを進めて参ります。
予算の概要については、以上です。
このほか、今定例会には、各種条例案件や、工事関係、専決処分の報告・承認案件なども併せて提案しております。
なお、今会期中には、人事案件についても追加提案する予定です。
これらの議案について、よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。