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今回の定例会に提案しております議案の説明に先立ち、最近の県政の動向について御説明申し上げます。
(1)米国の関税措置への対応について
まず、米国の関税措置、いわゆるトランプ関税への対応についてです。
4月の米国の関税措置の発動以降、日々刻々と状況は変化しています。株式市場や為替相場の大きな変動など、世界経済の先行きは大変見通しづらい状況が続き、我が国においても自動車産業をはじめとする産業・経済への影響が懸念されています。
本県におきましても、関税措置発動後直ちに金融・経営特別相談窓口を設置しており、県内産業・経済への影響についても、商工業や農林水産業関連の企業・団体へのヒアリング等を通じて、その把握に努めています。また、事業者の資金繰りを支援する新たな県融資制度の創設などの対応も進めてきたところです。
政府は、一連の関税措置の見直しに向けた米国との交渉に注力する一方で、4月25日には関税措置を受けた緊急対応パッケージを公表し、5月27日には電気・ガス料金の負担軽減などに係る予備費の支出を閣議決定しました。引き続き、国内産業・経済への影響を把握・分析し、必要な支援に万全を期すこととしています。
このような国の動きを見据えながら、企業や生産者の皆様が直面する課題に対して、国で検討されている経済対策等の動きに時機を逃すことなくきめ細かに対応し、県民の皆様が安心して生活できるよう、万全を期して参ります。
(2)球磨川流域の創造的復興と「緑の流域治水」の推進について
次に、球磨川流域の創造的復興と「緑の流域治水」の推進についてです。
令和2年7月豪雨の発生からまもなく5年が経過しようとする中で、甚大な被害を受け不通となっているJR肥薩線八代~人吉間の鉄道での復旧について、4月1日にJR九州と最終合意書を取り交わしました。
今後、JR九州と連携して同区間の一日も早い復旧に取り組むとともに、肥薩線の利用促進、沿線地域の振興に向けて、「JR肥薩線復興アクションプラン」に掲げた具体的施策を実行に移すための検討組織を設置し、県、市町村、JR九州、関係団体が一体となった取組みを進めて参ります。
また、国の権限代行により復旧が進められている、国道219号の八代市渡町~坂本町間、八代市の坂本橋、球磨村の松本橋、人吉市の天狗橋について、令和7年度中の開通見通しが発表されました。
引き続き、肥薩線の復旧と併せて、地域の復興に欠かせないインフラの復旧に全力で取り組んで参ります。
次に、「緑の流域治水」の取組みについては、昨日開催した球磨川流域治水協議会において、新たな流水型ダムを含む流域での治水対策の進捗等について、国・流域市町村と協議・確認を行ったところです。
県としても、出水期に備えて、河川の堆積土砂の撤去や、関係機関と連携した実践的な訓練などの住民の皆様の速やかな避難行動につながる取組みを進めて参ります。
また、長年ダム問題に翻弄されてきた五木村、ダムの建設地となる相良村の振興について、早期に振興策が目に見える形で実現できるよう支援するとともに、国道445号の整備など関連する県事業も着実に進めて参ります。
(3)水俣病問題について
次に、水俣病問題についてです。
5月1日に水俣病犠牲者慰霊式が執り行われ、併せて国と県との共催により、関係団体や地元経済界の皆様との懇談を2日間にわたって実施しました。皆様の切実な御意見・御要望を踏まえ、引き続き、国や地元自治体と連携しながら、必要な支援や取組みにつなげて参ります。
一方で、県内自治体や教育関係事業者において、水俣病に関する誤った情報が発信される事案が発生しました。県としても、水俣病に関する正しい理解の促進や、水俣病の教訓を次世代に伝えていくことの重要性を改めて認識するとともに、来年の水俣病公式確認70年に向けて、啓発事業の更なる強化等に取り組み、水俣病に関する正しい理解の促進に、より一層努めて参ります。
(4)半導体関連産業の更なる集積について
次に、半導体関連産業の更なる集積についてです。
まず、3月末に公表した「くまもとサイエンスパーク推進ビジョン」では、セミコンテクノパークを中核としながら必要な機能を複数の拠点で分担する「分散型サイエンスパーク」を目指すこととしました。
このビジョンでは、台湾のサイエンスパークを参考としながら、自然環境と調和した、熊本に合った形で施策を展開し、半導体の安定生産の確保による経済安全保障への貢献のみならず、地方創生の成功モデルを目指した取組みを進めて参ります。
また、セミコンテクノパーク周辺と熊本市中心部、熊本港等を結ぶ高規格道路ネットワークの最後のピースとなる中九州横断道路の「熊本環状連絡道路」が、今年度、国により新たに事業化されました。
県としても、国や地元市町と連携し、セミコンテクノパーク周辺の道路整備と併せて、半導体関連産業の進出効果を県内各地に波及させるための道路ネットワークの整備を着実に進めて参ります。
(5)阿蘇くまもと空港の国際線ネットワークの拡大・強化について
次に、阿蘇くまもと空港の国際線ネットワークの拡大・強化についてです。
まず、阿蘇くまもと空港では初めてとなる中国本土への路線として、7月11日から中国東方航空による熊本-上海線の定期便が就航する見込みとなりました。
私自身、3月に中国東方航空本社を訪問し、トップセールスを行うなど、上海線の誘致に力を入れてきた中で、待望の上海線の就航が実現することを、大変嬉しく感じています。
阿蘇くまもと空港の令和6年度の国際線利用者数は、過去最多であった令和5年度の23万人から、更に倍増となる約48万人にのぼっています。今回の上海線の就航により、阿蘇くまもと空港からアジア各地への接続が更に充実し、交流が活性化することが期待されます。
また、5月2日には、阿蘇くまもと空港に、国際貨物の輸出入に係る保税倉庫が新たに整備されました。半導体や県産農林水産物などの国際貨物の輸出入体制が強化され、阿蘇くまもと空港の拠点性が更に高まることが期待されます。
これらの機会を的確に捉え、アジアに近い地政学的優位性を最大限に発揮しながら、引き続き、熊本国際空港株式会社との連携のもと、更なる新規路線の誘致や国際貨物の輸出入の促進に取り組んで参ります。
続いて、今定例会に提案しております議案について、御説明いたします。
まず、一般会計補正予算は、昨年度の国の経済対策を活用した医療・介護体制の確保や農林水産業関連施設等の整備への支援のための事業などを計上しています。
この結果、82億円の増額補正となり、これを現計予算と合算しますと、8,530億円となります。
このほか今定例会には、条例案件や、工事関係、専決処分の報告・承認案件なども併せて提案しております。
なお、今会期中には、関税措置への緊急対応パッケージに関連して5月27日に閣議決定された予備費の支出に対応した追加の補正予算や、人事案件についても追加提案する予定です。
これらの議案について、よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。