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令和6年6月熊本県議会定例会における議案説明要旨

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0207872 更新日:2024年6月14日更新

第1 県政運営の所信について

 今回の定例会に提出しております議案の説明に先立ち、県政運営に対する私の所信の一端を申し述べます。

 私は、本年4月16日、第21代熊本県知事に就任いたしました。私は今、この熊本がおかれた状況、これまでとこれからの歴史的視点に立って、県知事としてやるべきこと、やらなければならないことがあると確信してこの場に立っております。

 熊本は近年、地震、豪雨災害、新型コロナと度重なる未曾有の困難に対して、県民一丸となって創造的復興に向かって歩んできました。そうした県民の頑張りとともに、TSMCの進出を契機とした「よき流れ」が生まれ、日本の経済安全保障の中心を担う存在になりつつあります。
 このTSMCの進出は単なる幸運な出来事ではありません。半世紀以上前に半導体関連産業が生まれたこの熊本の地では、半導体を作り続けるための設計、製造、装置、材料などの様々な分野のサプライチェーン、いうなれば企業群が維持発展してきました。熊本の地場企業と誘致企業が連携して成長し、それを支え続けた熊本の人々のこれまでの偉大な歩みがTSMC進出につながったのです。

 私は、12年前からこの熊本で県政運営に携わり、様々な政策という種をまいてきました。これまで国の職員という立場でも、47都道府県全てを巡り、全国津々浦々の地方創生に関わってきました。内からも外からも、熊本に関与してきたからこそ、その良さが見えています。
 熊本は、日本一「伸びしろ」がある県と言って過言ではありません。日本の西の端、九州の中心にあるということは、日本の中で東アジアに最も近い地政学的優位性があります。熊本は世界に開かれることで、県民はもっと豊かになれます。これまでまいた種が花を開き、実を実らせ、そしてそれが県民を豊かにする、そういった熊本のポテンシャルを最大限に引き出していくことが私の使命です。私が公務員として一貫して追求してきた、魅力的なふるさとづくり、理想の地方創生をこの熊本で実現させるという強い信念をもって、県政に全力で取り組んで参ります。

 県政の推進に当たっては、県民の皆様の様々な声をしっかりと聴くことを何よりも大切にしたいと考えております。私が県内45市町村を訪ね、県民の皆様から御意見や御提案をお伺いして参ります。同時に、私の座右の銘である「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も」の精神で、あらゆる事にチャレンジしていきたいと思っています。自ら現場を訪問し、なるべく多くの県民の方々、特に、なかなか声があげられない方、弱き声、小さき声、そうした声にもしっかりと耳を傾け、県民の皆様とともに対話と挑戦を続けながら、「県民が主人公の県政」を推し進めて参ります。

 今後の県政において、まず最優先に取り組んでいく事項は、令和2年7月豪雨からの復旧・復興と「緑の流域治水」の推進です。
 被災者の最後のお一人まで、住まいやなりわいの再建をしっかりと支援するとともに、鉄道などインフラの復旧、復興まちづくり、産業・雇用の創出など、球磨川流域の再生・発展に向けた取組みを更に力強く推進して参ります。
 新たな流水型ダムを含む「緑の流域治水」については、国や流域市町村と連携し、住民の皆様方の御理解をいただきながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現していけるよう、着実に進めて参ります。
 新たな流水型ダムの整備については、「緑の流域治水」の考え方に基づき、流域の安全・安心を最大化するとともに、環境に極限まで配慮して清流を守るものとなるよう、県としてしっかり注視して参ります。
 ダムの建設により影響を受ける五木村・相良村の振興については、知事就任直後に両村を訪問し、両村長と直接お話をさせていただいております。引き続き両村と丁寧な協議を行いながら、振興策を更に進めて参ります。

 水俣病問題は、県としての責任を果たしていかなければならない重要な課題です。公健法に基づく認定審査については、申請者それぞれの事情に丁寧に対応しながら着実に進めていきます。
 また、被害者の方々への保健福祉サービスの充実に今後ともしっかり取り組むとともに、特に胎児性・小児性患者の方々には、御本人や御家族に寄り添い、御意見や御希望などを丁寧にお伺いしながら、日常生活を支援して参ります。

 半導体関連産業の集積により、本県の産業振興・経済成長が期待される一方で、渋滞対策や地下水の保全といった、県民にとっての不安要素の解消に向けた対策を講じていく必要があります。
 これらの課題には全庁を挙げた対応が必要と考え、就任日に、部局横断的な体制とするよう、渋滞解消推進本部と地下水保全推進本部の設置を指示しました。既に両本部ともに設置し、課題解決に向けた対策の検討を始めています。併せて、それぞれの希望に応じて安心して結婚・出産・子育てでき、こども・若者がキラキラ輝く熊本を実現すべく、「こどもまんなか熊本」推進本部も立ち上げております。
 今後も庁内横断体制による対応が必要な課題には、同様の推進本部を設置してしっかりと対応して参ります。

 このほかにも、県民の皆様とお約束した実施すべきことが数多くあります。県政運営のより所となる基本方針を今後策定するとともに、直ちに取り組む必要がある施策については、速やかに補正予算に計上するなど、スピード感を持って県政を推進して参ります。

 熊本の「よき流れ」を更に大きくし、県全体が発展していくためには、議会や市町村、関係団体の皆様としっかりと連携しながら、各地域の特性を生かした取組みを実行していく必要があります。
 「県民が主人公の県政」の実現に向けて、現場に出向き、県民の皆様の声に耳を傾けながら、スピード感を持って県政運営に努めて参りますので、県議会及び県民の皆様の御理解、御協力の程、よろしくお願い申し上げます。

第2 令和6年度6月補正予算について

 次に、今定例会に提案しております令和6年度6月補正予算について説明いたします。

1.予算の基本的な考え方
 今回の補正予算は、私の1期目のスタートに当たり、マニフェストの実現に向けて取り組む事業をはじめとして、新規、政策的判断を要する事業を中心に、いわゆる肉付け予算として編成しました。
 その結果、一般会計の補正額は、854億円となり、これを現計予算と合算しますと、8,561億円となります。

2.予算の主な内容
 次に、歳出予算の主な内容について、マニフェストの項目に沿って説明いたします。

(1)県民の命と暮らしを守る
 まず、県民の命と暮らしを守る取組みです。
 半導体関連企業の集積が進む中、企業による地下水利用の増加などによる影響を心配する声をいただいています。24時間地下水位をモニタリングするシステムの構築、地下水位を観測する井戸の増設など、熊本の宝である地下水を確実に守っていくための取組みを推進して参ります。
 また、南海トラフ地震など広域的な大規模災害発生に備えた広域応援訓練の実施や、視覚障がいのある方も活用できる「耳で聴くハザードマップアプリ」の導入など、防災力を強化して参ります。

(2)不退転の決意で渋滞解消を実行
 次に、渋滞対策の取組みです。
 セミコンテクノパーク周辺を含む菊池南部地域での、直ちに着手できる渋滞緩和策として、信号制御の見直しや交差点改良など、ソフト・ハード両面からの対策を実施します。
 また、交通事業者や民間企業による公共交通利用促進に向けた取組みを支援するとともに、県を挙げたキャンペーンを展開し、過度な自動車利用からの脱却と、地域公共交通の利用促進を目指します。
 このほか、阿蘇くまもと空港へのアクセス改善を図るため、引き続き、空港アクセス鉄道の事業化に向けた鉄道概略設計調査等を行います。

(3)安心して結婚・出産・子育てできる社会を実現
 次に、安心して結婚・出産・子育てできる社会の実現に向けた取組みです。
 こども・若者や子育て世代などの意見を施策に反映していくため、「こども未来創造会議」を開催し、当事者や関係者との直接対話を行います。
 また、地域の産科医院と中核病院が連携して分娩に対応する先進的な取組みを支援し、地域における周産期医療体制を強化します。

(4)日本一の健康長寿社会を実現
 次に、日本一の健康長寿社会の実現に向けた取組みです。
 がん患者の生活の質の向上に資するよう、医療用ウィッグ等の購入や在宅での療養における経済的負担を軽減します。
 また、新型コロナへの対応を踏まえ、今後、新たな感染症が発生した場合に備え、保健・医療などの関係者との連携強化や、専門人材の養成に取り組みます。

(5)世界に伍する質の高い教育を実現
 次に、世界に伍する質の高い教育の実現に向けた取組みです。
 東京大学先端科学技術研究センターと連携した人吉高校五木分校における探究学習の展開や、全国から生徒を募集する「地域みらい留学」への参加により、県立高校の更なる魅力化を推進します。

(6)「食のみやこ熊本県」の創造
 次に、「食のみやこ熊本県」の創造に向けた取組みです。
 50代の新規就農者に対する支援の拡充、林業従事者の就業環境改善に向けた林業事業体の取組みに対する支援など、担い手確保の取組みを強化します。
 また、農業者と企業のマッチングによるスマート農業技術の導入推進や、原木しいたけの生産管理の自動化に向けた実証、赤潮対策のための有害プランクトンの判別システム開発など、農林水産業のデジタル化を推進し生産現場の省力化・生産性向上を図ります。
 さらに、畜産農家の経営安定に資するよう、配合飼料価格安定制度における畜産農家の積立て負担を軽減します。

(7)県内すべてにTSMC効果を波及、地域の課題・経済にコミット
 次に、県内すべてにTSMC効果を波及させる取組みです。
 県内の各地域がそれぞれの個性を活かして活力に満ちた「くまもと新時代」を創るため、「地域未来創造会議」を設置し、県内市町村との連携を強化しながら、ともに地域の未来像を描きます。
 また、八代地域などの県南地域における企業誘致活動を強化するとともに、県南地域の高校生が地域の企業を知る機会を創出するなど、人材確保に向けた取組みを推進します。

(8)熊本経済のイノベーションを実現
 次に、熊本経済のイノベーションの実現に向けた取組みです。
 半導体関連産業の競争力を強化するため、学生や従業員の民間研修機関における技術習得への支援や、環境負荷の低い半導体製造技術の実現に向けた取組みを推進します。
 また、台湾関連事業に挑戦する中小企業者等を資金面や技術面で後押しし、TSMC進出を機に広がりを見せる台湾との経済交流を更に活発化させます。

(9)スポーツ、観光、文化芸術を戦略的に振興
 次に、スポーツ、観光、文化芸術振興に向けた取組みです。
 民間活力の導入や民間事業者が主体となった整備など、老朽化や交通アクセス等の課題を抱えるスポーツ施設の整備の方向性を検討します。

(10)SDGs先進県としての責任ある「くまもと新時代」行政
 次に、「くまもと新時代」行政の取組みです。
 県有財産の跡地活用が地域活性化等にもつながるよう、民間への定期借地や売却を視野に検討し、最適な財産経営を推進します。

第3 その他の議案について

 以上、予算案について御説明申し上げました。このほか、今定例会には、条例案件や工事関係、専決処分の報告・承認案件なども併せて提案しております。
 また、今会期中には、人事案件についても追加提案する予定です。

 これらの議案について、よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。