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加久藤トンネル換気所

熊本県と宮崎県の県境、国道221号のループ橋を越えると加久藤トンネルがある。
この建物は、トンネル内の換気のためのポンプ、空気取り入れ口を収めた施設である。
単に機能的な道路維持管理のための施設も環境を形成する重要な要素となることから、施設が持つ機能を凝縮して、建物全体が装置として機能するとともに、周囲との調和を図るよう設計されている。
建築概要
この換気所の最大の特徴は、空気の流れのシステムにある。トンネルの換気のために必要な設備は、トンネルの側から順に、ダクト、モーター、ファン及びフィルターである。
通常はこれらが直線的に接続され、ぶ厚いコンクリートの箱に収められている。この建築の場合、フィルターを省略し、そのかわりエキスパンドメタルの外壁全体がフィルターとなっている。
これにより、換気設備のダイナミックな構造が外から見えるようになったばかりではなく、フィルター面積が数十倍に上がったため、単位面積当りの流量が激減し、フィルターの清掃・交換に関する維持管理は不要となった。
また外壁のコンクリートが軽量・安価なエキスパンドメタルに置き換えられているため、建設コストはきわめて低いものとなっている。


Photo:八木光保
建築データ
| 名称 | 加久藤トンネル換気所 |
|---|---|
| ふりがな | かくとうとんねるかんきじょ |
| 所在地 | 人吉市大畑町、宮崎県えびの市東川北 |
| 主要用途 | 機械室 |
| 事業主体 | 熊本県 |
| 設計者 | 小山明+パシフィックコンサルタント |
| 施工者 | |
| 建築 | 丸昭建設 |
| 電気 | 富士電機、人吉電気工事 |
| 機械 | 三井三池製作所 |
| 延面積 | 人吉側365平方メートル、えびの側353平方メートル |
| 階数 | 地上2階 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造、鉄骨造 |
| 外部仕上 | |
| 屋根 | 折板葺 |
| 外壁 | エキスパンドメタル |
| 施工期間 | 1988年12月~1989年10月 |
| 総工事費 | 704百万円 |
建築家プロフィール

| 小山 明(こやま あきら) | |
| 1951年 | 大阪生まれ |
| 1977年 | 日本大学理工学部修士課程修了 |
| 1978~80年 | ドルトムント大学、ベルリン工科大学留学、日本大学工学博士 |
| 1984年 | DER PLAN設立 |
| 1988年 | IBA展オーガナイザー |
| 1997年 | 神戸芸術工科大学教授 |
| 主な作品 | |
| 著書 | 「未完の帝国-ナチス・ドイツの建築と都市-」(共著) |
| 「都市居住宣言」(監修) | |
| 個展 | 1993年 「人間に考えさせる機械」 |
| 作品 | 1996年 岡本の家 |

