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漁業取締事務所
三角港の港湾関連用地として埋め立て整備された土地。
隣接地には、三角港フェリーターミナル(海のピラミッド)がそびえ立つ。
ここに、海の交番とも言うべき機能を備えた施設が建設された。
旧建物の老朽化にともない移転建て替えられたもので違反操業等の取締りのため近接する専用桟橋から昼夜問わず出航している。
一般には直接的な接点が少ない施設であるが、海の秩序を守る目的から、海と人、海とまちをつなげる役割を果たせる可能性を持っている。
その意味で、これから形成されるこの地の景観に対して、より良き指針となることと同時に、三角町全体のまちづくりに寄与することが期待されている。
建築概要
三角町は現在、住宅地と海(港)との間に、鉄道と国道が横切り、さらに当敷地を含む埋立地の開発によって、次第に生活の場から港と海は遠のいて行ってしまっている(物理的・心理的に)。
そこで、本計画では、遠のいてしまったマチヘ密接につながる機能を付加することで、海との距離を縮め、港と日常生活とを結び付け、それによって本来港が備えていた生活空間・空間価値としての役割を再び取り戻すことを試みている。
海側には、敷地一杯に広げられたゲート状の大屋根が配置され、海からやってくる神、幸、富を迎かえ入れる「神への門構え」となる。(かつて「御門」と表記してミスミと読んでいたことともイメージが重なる。)地面の隆起したデッキが、背後の山々の稜線と重なる屋根へと結ばれ、その先の山手に連なる住宅地へと意識を繋げている。門によって迎かえ入れられた風には、鉄道・道路を飛び超えてマチヘの方向性が与えられ、さらにはマチと港を見下ろす天翔台へと導かれる。
建築データ
名称 | 漁業取締事務所 |
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ふりがな | ぎょぎょうとりしまりじむしょ |
所在地 | 宇城市三角町東港1160−36 |
主要用途 | 事務所 |
事業主体 | 熊本県 |
設計者 | 小材健治 |
施工者 | |
建築 | 山口工務店 |
電気 | 金子電気 |
機械 | 熊本利水工業 |
敷地面積 | 900.02平方メートル |
建築面積 | 482.09平方メートル |
延面積 | 322.85平方メートル |
階数 | 地上1階 |
構造 | 木造+鉄筋コンクリート造 |
外部仕上 | |
屋根 | ステンレス鋼板 |
外壁 | 杉下見板、RC打放し、ステンレス鋼板スパンドレル張り |
施工期間 | 1997年9月~1998年2月 |
総工事費 | 142百万円 |
建築家プロフィール
小材 健治(こざい けんじ) | |
1959年 | 熊本生まれ |
1984年 | 熊本大学大学院修了 |
1984~87年 | 伊藤建築事務所勤務 |
1987~89年 | アルテック建築研究所勤務 |
1989年 | ばん設計小材事務所設立 |
主な作品 山江村温泉健康センター、高原邸、山江村ほたる館、人吉の舎I、人吉の舎II、水俣第二中学校体育館 |
PHOTO:宮井政次