管内は、令和2年7月豪雨により、河川の氾濫や土砂崩れが各所で発生し、県南部を中心に、家屋の浸水や倒壊、公共土木施設、ライフラインに甚大な被害が生じました。
栄養・食生活に関する健康課題として、避難所では、日ごとに疲れがみられ、眠れない、食欲が低下した方が徐々に増えていき、慢性疾患の方の体調悪化が懸念されました。栄養・食生活面では、長びく避難生活によるエネルギーのとりすぎや栄養バランスの偏りが問題となりました。
被災した給食施設では、食事提供する職員の不足、ライフラインの寸断、浸水等による作業場所の汚染等を受けながら、患者や入所者等に対して食事提供や健康・栄養管理を継続する困難さを経験しました。
このような災害発生当時の経験を教訓として、管内では、今後の大規模な災害発生に備え、地域の関係機関・団体の協力を得ながら、災害時の栄養・食生活支援体制を整備するための取組みを行っています。
水俣・芦北地域の災害時における栄養・食生活支援活動
活動の目標
栄養専門職の災害発生時の対応(自助・公助)能力向上や関係機関・団体間の連携強化(共助)です。
関係機関・団体
管内の市町、給食施設、(公社)熊本県栄養士会水俣地域事業部
今までの取組み経過
災害発生当時(令和2年度)
保健所主導で、関係機関・団体の協力を得ながら、被災した地域や給食施設の栄養・食生活支援活動を実施しました。
●被災地域への支援:
避難所・被災者宅において、被災者の食事状況調査、食事管理、栄養教育を実施
●被災した給食施設への支援:
施設の被災状況調査、必要に応じた個別支援を実施
災害発生2年後(令和4年度)
地域全体で当時の活動の情報共有や評価が未実施であること、顔の見える関係づくり及び活動のツールづくりが課題でした。
そこで、栄養士会の協力を得ながら、当時の活動を振返り、今後の体制整備や取組みについて話し合う研修会を開催し、活動ツールを作成しました。
●研修会の開催:
事例報告で各市町、被災した給食施設、栄養士会が当時の活動を振返り、今後の体制整備や取組みについて意見交換を実施
●災害時の栄養・食生活支援アクションカード(確定版)の作成:
被災情報収集、受援体制整備、給食施設支援提供食支援、被災者支援、要配慮者支援、食環境整備、食中毒・感染症予防 の項目について管内版を作成
●災害時連絡網の作成:
近隣の給食施設(入所施設)をグループ化した連絡網を作成
災害発生3年後(令和5年度)
活動ツールの検証・見直しには実践訓練が重要であることから、訓練を実施しました。訓練の前には、事前演習を研修会で行いました。
●研修会の開催:
事例報告では、被災した給食施設が近隣施設での共助の必要性を伝え、連絡網を活用した被災状況の伝達訓練の演習を実施
●被災状況の伝達訓練を実施:
連絡網を用いて、電話による訓練を実施
●アクションカード・連絡網の更新:
担当者、連絡先等の最新情報を関係者間で共有
●水俣・芦北地域 災害時の栄養・食支援ネットワークの立ち上げ:
栄養専門職は、いずれの職域でも配置数が少ない職種であり、継続したスキルアップや連携体制づくりのしくみが欠かせません。
そこで、保健所では会議、研修会及び訓練の取組みをルール化した「水俣・芦北地域 災害時の栄養・食支援ネットワーク」を令和6年1月に立ち上げ、更なる災害時の栄養・食生活支援体制の強化を図ります。
当日は、他県保健所での先進事例を学びながら、今後の取組みについて意見交換を行う予定です。
取組みの成果
研修会や訓練に参加された施設の方々からは、好評価をいただいています。
・災害発生時の状況や取組みについて、情報共有や評価が実施できた
・栄養専門職同士で顔の見える関係づくりができた
・関係者間の連携強化が図れた
・近隣の施設の栄養士の方と訓練で連絡をとっていると、いざという時にも連絡がしやすくなりこころ強い
さまざまな種類の給食施設における栄養専門職が参画した実践訓練は、県内で初めて実施することができました。
また、市町では地域防災計画における栄養・食生活に関する記載内容を整理し、給食施設では食糧等の備蓄内容を見直すなど、災害発生時の対応(自助・公助)能力が向上しました。
その他、アクションカードや災害時連絡網を関係機関・団体全体で共有することにより、災害時における栄養・食生活支援活動への気運が高まりました。
今後も目標達成に向け、活動を継続していきます。