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映画監督 行定勲氏 インタビュー

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0068333 更新日:2020年10月29日更新
行定監督インタビュー写真1
 
映画監督を目指されたきっかけは?
私が小学生の頃、黒澤明監督が熊本城で行った映画「影武者」の撮影現場を見たことが大きいですね。撮影の噂を聞きつけた父が連れて行ってくれたんですが、「子ども1人ぐらい紛れ込んでも気付かれないから世界の黒澤を見て来い!」とけしかけられまして(笑)。当時は黒澤明なんて映画監督がいることも知らない子どもですから、監督よりも現場で働くスタッフと甲冑をつけたエキストラの方々に目が釘付けになりまして。その場に漂う、尋常じゃないほど張り詰めた緊張感、空気感に圧倒されました。その後、完成した映画を見て「映画を作る人になりたい!」って思ったんです。
 
映画作りで大切にしていることは?
映画は、キャストをはじめ、いろんな人の才能が合わさって完成する“総合芸術”と表現するのがふさわしいと思っています。お互いがお互いの才能に触発されて、新たな力を発揮する。その中で、映画監督にできることって「想像する」ことぐらいで、実際に施すのは、カメラマンだったり美術だったり、キャストだったり。それぞれの思想や哲学、生き方がかけ合わさった一番いい着地点に導くのが私の役目です。例えば、自由な中に何か一つ制限をつけて、あえて抑圧することで個々が持つ力をグッと引き出す。その結果、私が想像していた着地点とは違ったものになるんですけど、それがおもしろい。「想像とは違うものと直面した時に、それをどう生かすか?」ということが、映画が生き物であるゆえんであると思うし、思った以上にいい映画になったと思えるのはむしろそういう時です。
 
行定監督インタビュー写真1
 
熊本地震の際、熊本に滞在されていたそうですね。
本震の際、熊本城を望むホテルの上層階に滞在していて、お風呂に入ろうと思ってお湯を溜めたところで寝てしまっていたんです。そしたらものすごい揺れにビックリして飛び起きて。お風呂を見に行ったら、揺れた拍子に水がすべて外に出て1滴も残っていませんでした。窓の外を見ると停電で真っ暗闇。そんな中、熊本城から真っ白い土煙が上がっていたのを目の当たりにしました。
 
その後、「くまもと復興映画祭」などのチャリティー活動について、どのような思いで取り組まれてきましたか?
熊本地震の前から菊池映画祭を開催していて、「映画の力で熊本を活性化していきたい」という思いは元々あったんです。熊本出身の俳優陣と一緒に熊本を舞台にした映画「うつくしいひと」も制作し、これから全国・全世界に公開していこうという矢先に地震がおきました。プロモーションどころじゃなくなって「どうしようか?」と考えていた時に、熊本の外にいる人たちから「映画を見せて募金活動につなげていこう」と声をかけてもらいまして。最終的に全国200カ所以上でチャリティ上映していただき、約3,000万円の義援金が集まりました。それがきっかけで、「くまもと復興映画祭を作ろう」という話になり、震源地の益城町を舞台にした映画「うつくしいひと サバ?」へとつながっていきました。当初、「この状況の中、映画なんて撮ってもいいんだろうか?」という思いもありました。でも、復興途上の人の気持ちを映画に残さないときっと風化する、これから再生する熊本の姿を未来に向けて伝えていくべきだと思ったんです。
前作に出演いただいた姜尚中さんが、こんなことをおっしゃっていたんです。「明治22年の熊本地震の7年後、夏目漱石が大学の先生として熊本に赴任している。当時はまだ地震の爪痕がそこかしこに残っていたはずだ。でも作品にそのことを組み込んでいない。名作の中にそのことが書かれていたら、文化が歴史の爪跡を後の世界につなげてくれていたはずなのに」と。
その言葉を私は、「人々が地震の記憶を心に留め続けるように、映画を撮りなさい」と背中を押してくれたんだと解釈しています。映画には“失われていく事象を留める力”があると思うんです。だから撮らないといけない。
 
行定監督インタビュー写真3
 
阿蘇にご実家がある行定さんが、一番好きな阿蘇を教えてください。
自宅が阿蘇の比較的高い位置にありますから、そこから見る南阿蘇の景色が一番好きですね。朝、五岳の山々に陽が当たり少しずつ色を変え、夕陽で赤く染まり、満点の星空が浮かんで1日が終わる。1日見ていても飽きない美しさです。しかも、11月になると雲海が一面に広がるんです。「一度映画に撮りたいな」って思っているんですけどね。
阿蘇はすごく居心地がいい場所です。自分の本質が阿蘇を求めるのは、ゆったりとした時間の流れ。ゆったりした時間を長いショットでつないでいくことで、そこには特別なものは何も描かれていないけど、自然の摂理や人生みたいなものを感じられる映画がイメージできます。
 
これからの熊本に期待することを教えてください。
今年、新型コロナウイルスが世界的に流行し、私たちの生活は一変しました。7月には豪雨災害に見舞われました。「熊本ばかりがなぜ?」という思いもありますが、熊本地震からの復興の途中に力強く立っている熊本県民なら、絶対大丈夫、力を合わせて乗り越えていけると信じています。
 

行定監督インタビュー写真4

 

最後に、県民の皆さんに一言、メッセージをお願いします。
「熊本」という土地を愛し、力強く生きている県民の皆さんをものすごくカッコイイなと思います。熊本らしい「熊本」を世に発信していくお手伝いをこれからもしていきたいですし、1人でも多く、県外の皆さんを迎えられたらいいなと思っています。
 

プロフィール

行定監督プロフィール写真
熊本県出身。2001年「GO」の第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞受賞をはじめ、2004年には「世界の中心で、愛をさけぶ」が大ヒットを記録。熊本を舞台にした「うつくしいひと」(2016)や、熊本地震後の熊本を描いた「うつくしいひと サバ?」(2017)は売上の一部を熊本復興のために寄与。最新作は、「劇場」「窮鼠はチーズの夢を見る」(2020)。