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第2回 「カメラ」─マニアが多い道具です─

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0056465 更新日:2020年8月1日更新

熊本県立美術館だより「View Vol.146」より

カメラ

 美術館での内部合意も得ずに始まってしまったこのコラム。今回は「カメラ」です。我々学芸員にとって、カメラは欠かすことのできない道具です。その作品がどんな図様で、どんな表現がなされていて、どんな形をしていて、どんな場所にあって、どんな傷があるのか。我々は「調査」という作業の中でそういったことを記録していきますが、文章で色々と書くよりは、写真で撮影したほうがわかりやすいですし、合理的です。時折、博物館実習の時間にスマホのカメラで作品をカジュアルに撮影しようとする学生さんがおられますが、これはアウト。この業界から静かに抹殺されてしまう恐れもありますので、学生さんに対してはなるだけ一眼レフなどのちゃんとしたカメラを使用するよう、映画「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹の如くフレンドリーに指導するようにしております。
 ただ困るのはカメラの重さ。遠方への出張などに大きく重い一眼レフを持っていくのはやはり骨が折れます。平日の昼間、スーツ姿に重たそうな出張カバンと大きなカメラバッグを持った方が美術館にいるとすれば、その方は学芸員である可能性が極めて高いです。もっとも、近年は小型でしかも接写ができる(美術品の調査ではこれが重要です)コンパクトデジカメも出ておりますので、割と楽になりつつあるのですが。全国の学芸員さんたちは、「K格.com」などを閲覧しながら、コンパクトで、接写ができて、写りがよく、買っても奥様に叱られない程度に安いカメラを調査しておらえることでしょう。
 以上のような理由のせいかどうかは知りませんが、この業界にはカメラ好きの方が多くいらっしゃるように思います。かく言う私も、実はカメラが好きでして、それで殴れば確実に流血沙汰となるであろう重く古いフィルムカメラで、「動くな!」と命じながら子供の写真を撮影するものですから、妻からは結婚前には見たこともないような嫌な顔をされています。子供が同じ顔をする日も、そう遠くは無いのかもしれません。
当館と関係の深いE青文庫の学芸員、Mさんもカメラ好きの一人。なんと十代の頃にお小遣いやお年玉を貯めて高級一眼レフを購入されたという筋金入りのマニアです。調査の後でお酒を飲みながらカメラの話になり、私が間違った知識を得意気に話しておりますと、「それは私の記憶とは異なるようです。当時はまだそのカメラは発表されてはおりませんでした。私の記憶が正しければ、おっしゃっているのは〇〇のことかと推察されます…。」と、丁寧な言葉でやんわりと否定してくださいます。有難いことです。
 そんなMさんも私も、調査の際に使用しているのはR社のコンパクトデジカメ。1cmまでの接写が出来て、しかもコンパクトなので非常に重宝しているのですが、Mさんのものは高級機、私のはその廉価版です。E青文庫での調査中、買ったばかりの廉価版の操作に戸惑っておりますと、そこは高級機をお持ちのMさん。「・・・少々貸していただいてもよろしいでしょうか。私の方で設定を変えさせて差し上げます。」と、これまた丁寧なお申し出を頂きました。私はそんなMさんが大好きです。
〔次回は「ハンカチ」です〕

(林田龍太)