ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 県南広域本部サイト > 観光・歴史・文化 > 歴史・文化 > あとがきにかえて「地域を作った女性たち」

本文

あとがきにかえて「地域を作った女性たち」

印刷 文字を大きくして印刷 ページ番号:0008396 更新日:2020年8月1日更新

熊本大学教授 岩岡 中正

 いま分権化社会の到来の中で、改めて「地域」が注目されるようになりました。これまで全てが「国(中央)から」と考えていたものが、今日、「地域から」発想する時代へと転換しつつあります。私達が実際そこに生き、そこから一切の価値が生まれる「地域」こそが、全ての原点なのです。私たちはいま、あらためて自分たちの地域の成り立ちと意味について考える時期に来ています。

 この小さな本は、八代という地域に生き、地域をつくった4人の女性たちのたくましい生きざまの物語です。地域には、地域が解決を求めている困難な課題があり、この課題解決のための思想や運動を担う人たちが生まれます。本書でとりあげた4人の女性は、もちろん全国的に有名ではありませんが、しかし、この地域でさまざまな困難と闘いつつ課題解決に努めて地域と新しい時代を切り拓いた人たちです。
 さらに彼女たちは、それぞれの地域課題解決を通して、女性の自我確立と地位向上、農民の地位向上、教育や福祉、つまり人権という普遍的な課題に目ざめていきました。

 八代は、歴史的に文化と産業の潜在力の高い魅力的な地域です。かつては大航海時代にふさわしい世界へ開かれた麦島城があり、江戸期には松井家の文化や干拓事業などが花開いたところです。明治以降も製紙やイ草などを中心に近代産業の歴史ももっています。
 本書の4人の女性たちは、この八代地域の文化的歴史的遺伝子とエネルギーを受け継ぎつつ地域をつくった「地の塩」のような人たちです。片岡マサは、ミッションスクールによる地域の女子教育に生涯を捧げ、杉谷つもは、郡築争議のリーダーの一人として社会問題と人権に目ざめ、運動を通して女性の力を歴史に刻みました。保田蕾は、県下初の女性県議会議員として、戦後民主主義の中での女性の政治意識の向上と女性の地位向上を訴えました。坂口れい子は、教師から作家への転身の中で、文学表現を通して女性の自我を確立していきました。
 私たちはこれらの女性たちから、女性の地位向上への努力と地域リーダーとしての地域形成への努力について学ぶとともに、一箇の人間としてもその前向きでひたむきな生き方から大きな励ましを受けることでしょう。
 最後に、地域史という点で私は、杉谷つもと関連する郡築神社を初めて訪れて、先人の思想と運動が、神社や碑という目に見える形で地域アイデンティティの中核として今なお生きているのを見て、心から感動しました。「地域を創る力」をここに見た思いがしたのです。

 末尾になりましたが、この時代にかなったユニークな企画を立て万端の世話をされた熊本県八代地域振興局、実際に取材し独特のみごとな語り口で執筆を担当された「くまもとの旅」編集長の末吉駿一さん、取材や資料提供に快く応じていただいた御遺族や関係者の皆さん、それに、杉谷つもについて懇切な御指導と示唆をいただいたJa熊本中央会の内田敬介さんに心より感謝します。

2005(平成17)年3月


イベント・募集
観光・歴史・文化