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八代地域は、西に内海の不知火海を擁し、中央部は古くからの干拓によって開けた水田平野を形成。東には九州山地が広がり、これら森林に源を発する日本三大急流の一つ球磨川をはじめ氷川などの清流が流れています。
豊かな大地、海、山、川の恵みが育てる産品のいぐさ、トマト、晩白柚は、どれも日本一です。そして先人の知恵を伝承した豆腐の味噌漬も八代の誇る特産品です。
果肉がたっぷりで爽やかな香りの晩白柚。とにかくでっかい。国内最大の柑橘類。
全国の生産量の約90%が八代で占められている。名実共に八代地方が唯一の産地である。大きいものは約三キログラム、子どもの頭ほどにもなる。台湾の在来種、白柚(ぺいゆ)より熟期が晩生のために、晩白柚と名づけられた。
大果で外観が美しく、他のカンキツにはない上品な芳香があることと、保存性が高く常温の室内でも一ヶ月以上は変質しないため、観賞・芳香剤を兼ねて床の間や玄関にしばらく飾るのもいいだろう。果皮は晩白柚漬けに利用され、ゼリーなどの菓子も有る。
安全で安心なトマトをつくろう。生産者のそんな誠実な思いの結晶が、やつしろトマト「はちべえ」。黄色灯などを使い、減農薬栽培に努めている。そのやさしさ、おいしさが愛されて生産量は日本一を誇る。そのネーミングは、八代平野の「八」と「平」を組み合わせたところからついている。名前にも、生産者の愛情と親しみが込められている。
海に近く干拓によって広がった八代平野の土壌は塩分濃度が高く、最小限の水と養分で育つ。小さめで、ビタミン、ミネラル、アミノ酸をギュッと凝縮した糖度八度以上の旨いトマトが塩トマトである。
コクがあり豊かな風味の銘茶「いずみ」。山間の深い霧、水と土が香り高い茶を育てる。新緑の季節が近づくと、山間の茶畑が美しい緑に輝く。夏も近づく八十八夜、そんなのどかな茶摘みの歌が聞こえてきそうだ。毎年四月下旬には一般参加による体験茶摘みも行われる。
馬刺しに冷奴、魚の煮つけ。しょうがは、いわば名脇役、欠かせない存在だ。八代市東陽町(旧東陽村)は、その品質の高さから「日本一のしょうがの里」と言われ、地域内の約九割の農家が栽培している。味噌漬、しそ漬、飴、せんべいなどの生姜加工品も多数。十月にはしょうがまつりが開催される。
香ばしい匂いにつられて日奈久の温泉街を歩くと、竹輪がグルグル廻って焼かれている。日奈久近海でとれた新鮮なハモやグチがタップリ使われる。焼きたてアツアツをほおばると、妙に満足。いつも食べているのとはわけが違うのだ。
夏から秋にかけて黄金の実をつける梨は、あの瑞々しさがたまらない。氷川町(旧竜北町)の吉野の丘陵では、幸水・豊水・ジャンボ梨の新高(にいたか)が陽射しをいっぱいに浴びて大きく実り、国内外に出荷されている。九月には梨畑のコースを走るマラソン大会も開催されている。
畳表の、あの芳しい匂いを思い出してみる。やはりいいものだ。いぐさといえば八代。なにせ熊本は全国の約九割の生産量を占め、そのうち95パーセントは八代に集中している。
暑い夏ともなれば人の背丈を超えるほどに伸び、畳表や様々ないぐさ製品に加工される。最近では優良品種ひのみどりを使ったブランド化に取り組んでいる。
平家の落人から伝えられ、約八百年と言われる豆腐の味噌漬。昔の保存食と思いきや、酒の肴として、ご飯にのっけてと、とにかく旨い。クリームチーズのようなまったりとした舌ざわり、味噌の風味がきいた独特の味わい。知恵と熟成がつくりだす逸品、知らなきゃ損だ。
水気をしっかりしぼった固めの豆腐。薄くスライスしてしょうが醤油で食べても、煮しめで食べてもダシがしみておいしい。かずらで結んで手に下げてもこわれないほど固い、そこからこの名で呼ばれるようになったと言われる。日持ちがよいのも特徴。味噌漬もやわらかくておいしい。
鮎の産地として有名な川はいくつかあるが、球磨川の鮎が特に有名なのは、川の水質が良好で、太陽の光が川底まで届くため、鮎の食餌となる珪藻の生産力が高いからだといわれる。瀬や淵が豊かで急流に鍛えられることも大きな要因のひとつだ。キュッとひきしまった身は上品な味と香りの高さで日本料理にも珍重される。
塩焼きも旨いが、甘露煮もまた格別。頭から尾っぽの先まで、味がぐっと染み込みふっくらと。口に広がる鮎の香りがたまらない。