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天草工業高校実習棟・体育館
天草の上島と下島を結ぶ本渡市のループ橋「天草瀬戸大橋」のたもとに位置し市の入口のランドマークとなっている。
既存校舎沿いを歩き、実習棟をくぐり抜けると海へ。
海側の新築部分は旧校舎とも一体化し、大型客船を思わせる。
気候を考慮し、ガラス材を多用した実習棟や体育館は、恵まれた自然や景観との一体感が感じられ、風の通りにも配慮した室内環境となっている。
先端技術と地域の伝統的技術を学ぶ工業高校の理想にふさわしい校舎は、生徒たちはもちろん、地域の人々の誇りともなっているようだ。
建築概要
既存施設の実習棟部分をスクラップ化、新築の後、近い将来教室棟を解体して、建替えすることを前提とした計画を要請された。しかし、建物は25年経っているが、老朽化しているとは考え難く、風景の一部として町の歴史を形成した存在であった事実を大切にする見解が生まれたため、積極的に改修しつつも原形を残しながら風景を継承してゆくことを提案した。 従来は校地の裏として扱われ、環境と意識されずにあった東側の瀬戸、可動歩道橋の風景と、西側の街区(アプローチ側)とを、校舎の存在によってより一層結びつけると同時に、本渡市入口のランドマーク性を明らかにすることを考えた。
公立学校建築は、建築の標準化意識がいまだに強く影響している。そのような現状では、風景に対応する骨格としての場を作る、原型的なフリースペースが有効に働くものと考える。
建築データ
名称 | 天草工業高校実習棟・体育館 |
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ふりがな | あまくさこうぎょうこうこうじっしゅうとう・たいいくかん |
所在地 | 天草市亀場町亀川38-36 |
主要用途 | 学校 |
事業主体 | 熊本県 |
設計者 | 室伏次郎+SDA建築設計事務所 |
施工者 | |
建築 | 吉永産業、中村建設、大昌建設、有江建設、苓州建設工業 |
電気 | 鍬田電気、天草設備、熊電施設 |
機械 | 三和電工設備、天草設備、山下総合設備、第一設備工業 |
エレベータ | 三精輸送機 |
敷地面積 | 45,600m2 |
建築面積 | 6,090.53m2(実習棟、体育館部分) |
延面積 | 12,115.99m2(実習棟、体育館部分) |
階数 | 地上5階、2階(実習棟)、地上3階(体育館) |
構造 | 鉄筋コンクリート造+鉄骨造 |
外部仕上 | |
屋根 | 硬質木片セメント板の上ステンレスシーム溶接工法 |
外壁 | コンクリート打放しの上フッ素塗装 中空セメント板の上フッ素塗装 鉄骨部:溶融亜鉛メッキの上マリンペイント2度塗り |
施工期間 | 1995年3月~1998年3月(実習棟、体育館部分) |
総工事費 | 3,829百万円(実習棟、体育館部分) |
建築家プロフィール
室伏 次郎(むろふし じろう) | |
1940年 | 東京都生まれ |
1963年 | 早稲田大学理工学部建築学科卒業 株式会社坂倉準三建築研究所入所 |
1971年 | 株式会社建築研究所アーキヴィジョン設立 (戸尾任宏・阿部勤と共同主宰) |
1975年 | 株式会社アルテック建築研究所設立 (阿部勤と共同主宰) |
1984年 | 株式会社スタジオアルテック設立、 現在に至る |
1994年 | 神奈川大学工学部建築学科教授 |
主な作品 大和町の家、北烏山の家、大井町の家、 ダイキン オー・ド シェル蓼科 |
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受賞歴 | |
1993年 | 日本建築学会賞作品部門 |
1996年 | 日本建築学会作品選奨 |
PHOTO:清島靖彦