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バイオ・人ねっと(研究者紹介)第2回目「シクロデキストリン(環状オリゴ糖)で広がる無限の可能性」(熊本大学大学院医学薬学研究部 有馬 英俊 教授)

更新日:2009年4月28日

氏名

有馬 英俊

所属

熊本大学大学院 医学薬学研究部 製剤設計学分野

主な研究テーマ

シクロデキストリンを基盤分子とする個の医療を指向した統合型ドラッグデリバリーシステム

アピールポイント

 当研究室では、上釜兼人前教授のもと、環状オリゴ糖であるシクロデキストリンの医薬への応用に関する研究を35年間に渡り行ってきました。最近では、シクロデキストリン、デンドリマー、PEG、リポソームなどの薬物担体と組み合わせることにより、抗がん剤、タンパク質、遺伝子、siRNAといった先端医薬品のドラッグデリバリーシステムやES細胞やiPS細胞を用いた細胞医療・再生医療に関する研究を行っています。さらに、熊本県における新たな産業振興を目的に、スイゼンジノリの医薬品添加物への応用に関する研究を行っています。

聞き手:(財)くまもとテクノ産業財団 科学技術コーディネータ 森下 氏

(Q)まず、先生の研究対象であるシクロデキストリン(環状オリゴ糖)について教えて下さい。

(A)シクロデキストリンは、ブドウ糖が連なってできたオリゴ糖の両端が繋がり輪の形になっており、構造的にはちょうどフタと底のないカップのようになっています。そして、このシクロデキストリンは、この空洞部分に様々な分子を取り込んだり(包接)、逆に取り込んだ分子を条件に応じて中からゆっくりと放出させたり(徐放)といった作用を示します。この性質を応用して様々な分野でいろいろな商品に利用されています。ちなみに、シクロデキストリンは馬鈴薯やトウモロコシ等のデンプンを原材料としています。

 【参照】シクロデキストリン図 [PDFファイル/35KB]

(Q)具体的に商品化されたものにどの様なものがありますか。

(A)例えば、臭い成分を取り込む作用を活かした消臭剤への活用やカテキンやイソフラボンなどの有効成分の苦み渋みを低減する目的で飲料への利用、また卵黄・バター等からコレステロールの除去効果を利用した食品分野への応用などの使用例もあります。さらに、機能性食品やサプリメントへの応用として、例えば、CoQ10など難水溶性のため吸収されにくい機能性成分を、シクロデキストリンにより水溶性化させ吸収を高めるといった利用もなされています。このようにシクロデキストリンの利用は様々な用途に広がっています。


(Q)先生の具体的な研究はどの様なものですか。

(A)私は上釜研究室の良き伝統を受け継ぎ、このシクロデキストリンの医薬への応用を継続して行っています。私が研究室に入室したころは、親水性(水に溶けやすい性質)や疎水性(水に溶けにくい性質)の誘導体を用いて、製剤への有効利用に関する研究を行っていました。最近、私たちは、DNAやsiRNA、を細胞内に導入させるために高分子とシクロデキストリンとの結合体をつくったり、タンパク質を徐放化するため、PEGとシクロデキストリンとの超分子形成を利用したり、抗がん剤をがん細胞だけに送達できるシクロデキストリン修飾体の調製を行ったり、タンパク質の凝集体形成にシクロデキストリンを利用したりなど、低分子から高分子の医薬品を対象に、シクロデキストリン類の製剤への有効利用について検討しています。さらに、そのようなツールとしての使い方以外にも、シクロデキストリンそのものにLPSをトラップして、敗血症治療薬としての有効性を見出しており、薬そのものとして利用できる可能性もあります。また、シクロデキストリン自体はダイエット商品としても売り出されています。さらに我々は、ES細胞やiPS細胞を用いた細胞医療や再生医療に関する研究など先端医療への応用研究も進めています。


(Q)基礎的な研究から最新の応用研究まで、この分野でかなり長く研究をされてこられたんですね。

(A)前教授である上釜先生から数えると35年間に渡り研究を続けてきました。全国的に見ても、これほど長きに渡りシクロデキストリンの医薬への応用に関する研究をしている研究室はなく、また上釜前教授・平山前助教授は、現在、崇城大学薬学部の教授として研究を続けられており、その点で、この分野における第一線の研究拠点は、熊本にあるといっても過言ではないかもしれません。。
熊本大学医学薬学研究部 有馬教授
『実はシクロデキストリンは歯磨き粉にも使われているんですよ』
といろいろな分野に活用されていることを教えて頂きました
(右側:聞き手の森下コーディネータ)

(Q)研究上の課題はありますか。

(A)シクロデキストリン誘導体に関して言えば、医薬品や化粧品等への利用を考えた場合、今後、安全性試験が必要になってきます。その試験をクリアするためにはかなりの費用が必要になってきますので、そのコスト面での課題があります。

(Q)県内企業との連携について、お考えをお聞かせください。

(A)熊本県は農業県であり、本県ではその豊富な農産物を活かした加工品などの“食”の分野に強みがあると思います。一方、シクロデキストリンは、苦みや渋みの抑制効果やコレステロールの除去効果、機能性成分の安定化など“食”への利用にも大きな効果を発揮します。その意味で、特に“食”産業において、シクロデキストリンの利活用でさらなる事業展開が期待出来るのではないかと考えています。

(Q)最後にPRをお願いします。

(A)シクロデキストリンは、その特性から既に様々な分野でいろいろな用途で利用されています。ただ、可能性はこれだけにとどまらず、思いも寄らない使い方などその特性を活かすアイデア勝負的な側面もあります。是非、事業者の方々からアイデアをお寄せ頂き、共同研究などに繋がっていけばと思っています。その先にはさらに大きな可能性が広がっていますので。
また、同じ糖類として、最近注目しているもので“サクラン”があります。これは、江津湖が発祥の地とされている「スイゼンジノリ」からのみ抽出され、今後、化粧品の原料や機能性食品添加物などへの活用が期待されています。当研究室でも、シクロデキストリンと併せて医薬品への応用を研究しています。是非、今後、注目して頂ければと思います

《インタビューを終えて》
シクロデキストリン・・・・意外にも、国内有数の研究の伝統が熊本県内で続いています。
身近なところでも意外に多く使われているものですが、まだまだ研究課題がたくさんあるとのこと。
食品から医学、果ては農業利用なども可能性が広がっていると、とても熱く語られる有馬先生でした。また、熊本特産のスイゼンジノリに含まれる「サクラン」という糖についても、熊本に生まれたベンチャー企業さんと共に研究を開始されるそうです。
小さな糖の大きなつながり、研究の輪が大きく広がっていく気がしました。 

【有馬先生へのご相談はこちらへ】

財団法人くまもとテクノ産業財団 産学連携推進センター
科学技術コーディネータ 森下惟一
〒861-2202 熊本県上益城郡益城町田原2081-10
TEL 096-286-2939 FAX 096-286-3929
E−mail morishita@kmt-ti.or.jp 

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