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氷川ダム管理所
平家伝説で知られる秘境五家荘を抱える泉村。
樅木の吊り橋(あやとり橋、しゃくなげ橋)や栴檀轟の滝、矢山岳などと並んで、村の観光名所ともなっているのが、昭和42年に築造された氷川ダムである。
今回建て替えられたダム管理所には、ダムを監視、管理するという本来の目的に加え、桜の名所でもあるダム湖公園の展望所としての役割がある。
吊り橋を連想させる巨大な展望デッキからは、湖を抱く山々と空のパノラマ、その風景を映す湖面が望める。
展望所内はダム資料館になっており、村の新たな観光名所として注目を浴びている。
建築概要
氷川ダムの堰堤を嵩上げして、ダム貯水量を増やし、ダムの機能を高めるという構想に伴い、水没化する旧ダム管理所の建替えが必要になりました。ダム管理所はダムCPUにより水門のコントロールを間断なく行う施設で、監視・管理機能を健全に保持することが本来の機能ですが、ここではダム湖公園(桜の名所、エアレーション噴水のライトアップ等)の観光的魅力を補強する展望所としての機能を併せて要求されました。
第1の機能については、コンクリートの堅牢な箱で対応。第2の機能は、ダムのスケール・パワーに拮抗するダイナミックな階段塔と長さ40m超の吊り構造による展望デッキを用意しています。バルコニーにはダムについての学習・見学のための資料室が接し、いわゆるダム資料館としての機能も併せもっています。階段塔の最上部バルコニーで湖面+38m、展望デッキで湖面+26mという様々なレベルでのダム湖の俯瞰は予想以上に素晴らしく、心躍るものがあります。
建築データ
名称 |
氷川ダム管理所 |
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ふりがな |
ひかわだむかんりしょ |
所在地 | 八代市泉町下岳 |
主要用途 |
ダム管理所 |
事業主体 | 熊本県 |
設計者 |
野中暉夫 |
施工者 | |
建築 |
豊岡組 |
電気 | 白鷺電気工業 |
機械 | 東設備 |
EV | 東芝エレベーター九州支社 |
敷地面積 |
1,275平方メートル |
建築面積 | 351.56平方メートル |
延面積 | 713.81平方メートル |
階数 | 地上3階 |
構造 |
鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造 |
外部仕上 | |
屋根 | ゴムアスファルト防水、一部アルミメッキ鋼板t=0.6立馳葺 |
外壁 | コンクリート打放し、一部50角モザイク磁器質タイル貼 |
施工期間 | 2000年3月~2001年5月 |
総工事費 | 249百万円 |
建築家プロフィール
野中 暉夫(のなか てるお) | |
1942年 | 熊本県生まれ |
1965年 | 早稲田大学理工学部建築科卒業 |
1967年 | 早稲田大学大学院建設工学科修士課程修了 |
建築都市設計同人TEAM VOS参加 | |
1980年 | TEAM VOS野中設計事務所設立 |
1991年 | 野中建築事務所継承 |
主な作品 大矢野町総合体育館、熊本県総合射撃場、老人保健施設かがみ苑、熊本放送 |
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受賞歴 | |
1998年 | 第4回くまもとアートポリス推進賞選賞 |
PHOTO:宮井正樹